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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【77】異世界でネコ型ロボットになる


「バスターソード、いばらのムチ、銀のレイピア、力の指輪、鋼の鎧…」



宝物庫にあった父の隠し宝は、思った以上にファンタジーとしてスタンダードな感じだった。


ゲーム好きの川口は始終ワクワクしている。

もうね、例えるならば鎧を舐め回しそうな勢い。


「おうおう…凄いな、どれもカッコイイぞ。ああ、この剣の鞘のデザインも素晴らしいな…ウム、フルフェイスの鋼の兜か、随分重厚だが頭頂部の羽飾りで華麗さを出しているな…そして両手剣!カーッ、長い!重い!しかし(おとこ)のロマンがここにある…」


日頃、こんなに喋ることがない奴なだけに、早口でまくし立てる様子は一種異様な光景である。

軽くキモいが、至極楽しそうなんで、そっとしておくことにした。


俺が探しているのは、鎧や両手剣じゃない。

(それらは重くて、どうせ俺には使えない。)


「イブさん、これらはどんな効能なんですか?」


俺は、アクセサリーや指輪がある棚の宝物について、イブに聞いてみることにした。


「これは魔力を増やす指輪、となりの赤いのは攻撃力を増す指輪、となりのは素早さを上げる指輪…」


うーん、戦いを少し有利にする系のかあ。

悪くないけど、俺、するかなあ?!戦闘。

魔力は元々ゼロだし…。


「もっとこう、日本での日常生活に一味違いが出る便利アイテム、ないでしょうか?」

「そうねえ…必ず魚が釣れる釣り竿とか、あるわよ。」

「うーん、楽しそうではあるけど、釣り行くかなあ…」

「じゃあ…この筋肉増強のブレスレットは?」

「えっ、つけてる間だけマッチョになるとか?」

「そうよ。力も多少増えるわ。取ると戻るけど」


父さんは使わなかったのかな。

いや、きっとこれよりもっと効果の高い腕輪をつけてたんだろうな、歩くとHPや経験値が増える腕輪とか、そういう秘宝を。


「それさあ、オレつけてみていい〜?」


福田がいつの間にか近くによってきて、ジーッと見ている。

俺は彼に腕輪を渡してみた。

つけるとユルユルなようだが、すぐに変化が始まった。


福田の肉体がムクッ、ムクムクっとパンプアップを始める。


「おおっ?!ひえ〜!ナニコレぇ」


FENDIのTシャツがはち切れそうになり、胸のプリントも横に伸び「ふぇーんーでーぃー」という感じの字体になっている。

パンツはゆるいイージーパンツだったから、ボタンが千切れるなどなく普通にパン!と張ったが腰回りは引き締まってるので、そんなに苦しそうではない。

ブレスレットはピチッと丁度いいサイズになった。


「上半身が特に凄いな。ドラゴンボールみたい。」

「嘘ぉ…わっ、腕とかぶっといな〜、オレ。顔は?顔は変わってる?」

「顔は変わらな…あ、でもユルかった表情が引き締まって精悍にはなってるかな。スポーツ選手みたい」


福田はスマホを取り出して、自撮りし始めた。


「わっすげ〜!オレ!肉体改造系のYouTuberみたいじゃん。沼とか食って体こしらえてそ〜!」



そんな福田の様子を、じーっと羨ましそうに見てる川口がいた。


「おれもそれ、欲しいぞ…」

「もう一つあるわよ。アンクレットだけど。」


イブから受け取るなり、足首にパチっとつけた川口も、同じようにムクムクとパンプアップした。


「おおう…力が漲ってくるようだぞ。」


ジョルジオ・アルマーニの黒Tシャツが、西川貴教もビックリなくらい筋肉でパッツンになっている。

やはり顔も精悍になった。


大きな両手剣をガラスケースからそーっと取り出して、掲げてみる川口。


「おおっ、持てる!持てるぞ!そんなに重く感じない!」


元々がっしりした奴が更に逞しくなったので、その姿はギリシャ時代のムキムキな彫刻みたいな感じだ。


なんだか多少羨ましくなってきたが、俺はマッチョへの願望はあまりないので、もしもう一つあると聞いてもやめておくことにした。



イブが、なにか布切れみたいなものを手に近寄ってきた。


「渚、いいものを発見した。君にはこれを付けてほしい。」


そう言うなり、彼女は俺のズボンを手際よく下げ、恥ずかしい毛がギリ出ちゃうくらいまでパンツも一緒に下げた。


「わっ、ちょっ、なにすん─?!」


俺はパニックになった。

きれいなお姉さんが足元でかがみへそ下ゾーンを見ている構図に、慣れない緊張を感じて全身硬直。


その間に、すかさず彼女は手に持っていた布のようなものを俺のへそ下に貼り付けた。


──ポケット?


「異次元ポケットだ。アイテムボックスの代わりになるぞ。」

「アイテムボックスの…!!」


それは凄い!

凄い!けどなんか…これって…これって──



「プッ、渚ぁ、某伝統的アニメの青いネコ型ロボットみたいだよぉ?」


福田が、俺の姿を見て笑ってきた。


川口が全身鎧を着込んで、ガシャンガシャン音をたてながら近づいてくるなり、やはり声を出して笑った。


「ワハハ、渚よ、なんか出してみてくれ。『どこにでも行けるドア』あたりがいいぞ」


俺は、腹のポケットに手を入れると、


「どこにでも行けるドア〜〜!」


と、わさびチックな声真似をして叫んでみた。



すると、手になにか額縁みたいなものを掴んだ感覚がして、そのままポケットから引き出すと、どういう理屈かわからないが、ニュルルルーっとデカいものが取り出せたので、そのまま床に置いた。


ドアだ。薄べったいドア。


思い切って開けると、そこには地上のルームメイド用の小部屋の風景が。


アペルがちょうど着替えていた所だったようで、キャー!ナギサ様のエッチ!と言って胸を隠した。


俺は静かに扉を閉めて、振り返ると、呆気にとられている全員の顔があった。

川口はフルフェイスの兜なんで、表情はわからないが。



「これって、もしかして──」


俺は苦笑いしながら、そっと恥ずかしい毛の上に貼られてるポケットに、触れた。

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