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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【76】異世界に眠る親の遺産


俺たちはホテルの好意で、王宮料理さながらのご馳走や酒を堪能させて貰った。



もともと、川口や福田、そしてユーリに、ホテル・タラートの美食を体験させてあげたい、と思って連れてきたので、有り難いサービスだ。




食事のあと、踊り子や楽団たちもはけて、俺たちは静かに冷たいジャスミン茶を飲んでいた。


そこへ、白髪の支配人がニコニコしながら訪ねてきた。


「お味のほどはいかがでしたでしょうか。」


イブは、君が答えてやるといい、と言った視線を俺に送ってきた。


「最高でした。こんな豪華な酒宴は、生まれて初めて経験しました。」


俺は、素直な感想を述べると、支配人は少し驚いた顔をしたようだ。


「おや…御両親でいらっしゃる勇者様と聖女様は、ご自分の国にお戻りになってからは、宴などは開かれなかったのですか?」

「ハハ…まあ、質素な庶民生活でしたので…」

「なんと、お二人のお国では戦いがないというのは、本当だったんですね。」


─戦いがある=強き者は贅沢に暮らす、という価値観なんだな、この世界では…



しかし、まるでない、と言ったら嘘になるよな。


元世界人は…少なくとも日本人は、社会的地位を得るという戦いを学生の頃から準備し、努力と運、どちらも持ち合わせた者は富裕層として暮らす事ができる。

もちろん、元々上流階級の家で生まれるというのも、一種の強運だ。


そういう意味では、異世界も元世界も変わりないのかもしれない。



「──勇者は自分の世界では、この世界で得た富を使わないでいたようだ。」


イブがお茶のグラスを置いて、支配人に話しかけた。


「だが、つい最近、息子をその宝の共同管理者と認めたようでな。」

「さようでございましたか」


支配人のおじいちゃんが、俺の方を見た。


「支配人よ、勇者たちは自国と旅立つ前、そして子ができてからも再びこのホテルへと宿泊しに来ている。なにか、預かっている宝などはありはしないだろうか…?」


イブが、食堂内にはもう我々しかいない事を目で確認した上で、彼に聞いた。

支配人は、暫し何事かを考えたあと、口を開いた。


「率直に申しますと、お預かりしてる宝物は御座います。」


─なんだって!


この、ホテル・タラートの内部に保管されていたのか…?

そんな、国家予算に匹敵するほどの、莫大な財産が─?



「私共で厳重に保管させていただいております。しかしながら、勇者様はこれはほんの一部だ、と仰っていたので、他にも保管されている場所はあるのでしょう。」


─リスクヘッジか。


親は、どこか一箇所にまとめて隠しておくと、そこを襲われた時にすべてを失うことを考慮して、いくつかの施設─宝物庫があるレベルの─に、分散して保管してもらうことにしたんだろう。


俺ならそうするだろうから。


─国家予算分にもなる宝の山を、全部預かってと言われた側の施設の管理者の負担も大きいだろうから、気を使ったんじゃないかな…。



「ここに保管してあるものを、僕が取り出す事はできるんでしょうか?」


俺は、支配人に聞いた。


「勿論でございます。ただし─」

「ただし?」

「ナギサ様は、アイテムボックスのスキルはお持ちでしょうか?」


─そうだ。


異世界にある遺産は、全て父さんの「アイテムボックス」の中に収納されていた物だから、そのスキルのない俺が受け取ってもしまう場所がないのだ。


背中に背負って持ち歩くなんて、剣と盾だけでも重くてできやしないだろう。


「ない…です。」


それを聞いた支配人は、ほんの少しガッカリしたようだった。


─すまん、両親みたいに有能じゃなくて。

ただの両替屋なんだよ…俺のスキル。



俺は再度、支配人に聞いてみることにした。


「なにか手に持てる大きさのアイテムがないかどうか、調べる事はできますか?」

「それでしたら、まずはご覧くださるのが一番でございましょう。」


彼は、嬉しそうな笑顔を俺たちに見せた。


「武器や魔道具の使い方は、そちらのイブ様が恐らく全てご存知かと思います。」


イブを見ると、軽くコクッと頷いた。


「それでは、どうぞ特別室へ。」




全員で、俺の泊まっている特別室へと移動し、普段ルームメイドが常駐してる待機室のような小部屋へと入っていった。

ルームメイドのアペルは、いないようだ。



支配人は手を床に置き、何事かブツブツと呪文を唱えた。

すると、床に四角い輪郭の光が走り、次の瞬間には下へと続く階段が現れていた。


「「「おおーっ!」」」


俺たちは、手品でも見たような驚きの声を出した。

これも、魔法か固有スキルなのだろうか?


「この地下にございます。私の特殊スキル『宝物庫の番人』による施錠がされておりますので、ご安心を…足元にご注意ください。いま灯りをつけます。」


支配人が手を上げると、階段の壁に等間隔で灯りが点った。

火ではなく、LEDみたいな小さい玉状の光だ。

そういう魔道具に、魔力を注いだのだろう。


─もしかしたら、宝物を保管する役職の人は皆この「宝物庫の番人」のスキル持ちなのかもしれない。


お湯を出せるスキル持ちのアペルがルームメイドとして雇われているように、宝物庫の管理ができる人が高級ホテルや銀行の支配人の職についてるんだったりして…




螺旋階段を3階分は降りた頃、金の縁がついた立派な扉が現れた。

ノブはなく、真ん中に水晶みたいな玉が埋まっている。


支配人がそこに手を置き、一言


「ひらけ」


と呟くと、鍵が外れたような音がして、扉は少し押しただけでキイっと開くようになった。



中は展示室のようになっていて、剣や宝飾品などが全て蓋付きのガラスケースに閉まってある。


全部で3〜40はあるだろうか?

鎧や盾、両手剣のような場所を取るものもあれば、宝石のついた指輪のように小さいものまで、さまざまだ。


─これを父さんが所有してたのか……


実家の雑貨屋で、ホウキやらタワシやら石鹸ケースやらの在庫に囲まれていた人の持ち物とは思えない、ファンタジー丸出しのアイテム達。



なんだか現実とは思えず、外国の博物館に来たような気分になっていた俺に、支配人が告げた。


「各ケースの鍵も扉と同時に外れております。ナギサ様、どうぞ気になるものをお手にとって、ご覧くださいませ。」


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