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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【68】億万長者になったらしい


目の前には、袋の力で100倍にすると今すぐ20億円になるお札の山。

そして、押し黙ってそれを見つめる俺達─



「うぬぅ…額が膨大すぎてイメージが沸かん…」


川口がでかい手で自分の髪をグシャグシャとかきむしり、エビスビールをごーっと飲みきった。

そして額の汗を袖で拭い、ふうと息をつく。


「…だが、これだけは解る。おれたちは億万長者になったのだな。」



─億万長者。


よくお金もちの例えとして使われる言葉だが、よもや自分がそれになるとは。



それに、川口と福田のやった方法で賭けて、儲け額を100倍にしていけば、億どころか一兆円だって夢じゃない。


競馬だけじゃなく、競輪、競艇だっていいんだ。

カジノのルーレットで、赤か黒どちらかに賭けるだけだっていい。


袋で増やしたお金に「賭け」という仕事を挟みさえすれば、多少負けてもまた袋で100倍にできる。


永遠にお金を増やせられるのだ─


「…なんか、頭がクラクラしてきた。俺もビール飲もう。」

「私も!私も!」


俺は冷蔵庫からエビスビールを3本と、カルピスソーダのペットボトルを一本持ってきた。


ユーリはカルピスソーダを受け取り、ビールじゃないの?!などとゴネてたが、飲み始めたら気に入ったようで大人しくなった。


川口と福田に新しい缶を渡し、自分のビールの蓋をあける。


「んじゃま〜、乾杯しますかぁ!」


福田が缶ビールを掲げて明るい声を出す。

声を出すことで弱気を吹き飛ばしてるのが伝わってくるので、俺も負けじと声を出すことにした。


「なにについて乾杯する?!」

「そーだねえ、んじゃ…恵比寿に!」

「ウム。」


川口も缶ビールを掲げた。


「「「恵比寿に乾杯!」」」


なんだそりゃ、と思いつつも、3人揃ってグイーっとビールを喉に流す。

エビスビールはコクがあって、鼻を通って出る香りが美味い。


プハーッ!


ビールというものは不思議なもんで、クヨクヨする事があっても辛味と炭酸がそれを胃袋に流し込んで、消してくれる感じがある。


ここ2日間ほど、梨亜にLINEでメッセージを送っても既読スルーされていて、ちょっと寂しい気持ちになっていた。


だけど仲間とこうやってビールを飲んでると、細かいことはどうでもいい気になってくるから謎だ。



ローテーブルの上には、まだ袋で増やしていない1980万円と、袋で増やした2000万円。


─これだけの大金を前に酒をあおるってのも、なかなかないな。

それにしても、増やす前の金額よりたった20万円を袋で増やした札束のほうが多いってのも、なんだか変な話だな。


─一束ふた束革袋につっこんで出てきたぶんだけで、バスタブを水の代わりに1万円札で埋めることができるんじゃないか?


札風呂だ。バブリー!って感じ。



「この金はすぐに増やしたりしないで、生の札として金庫に入れておいたらどうだろう。」


俺は二人に提案した。


「20億円なんて、置く場所に困るし…。」

「そうだよねぇ。流石の渚の家でも、すぐには使わない札の山を置いておいても邪魔になるもんね〜…」


うん、例えじゃなくてリアルに「山」になるだろうからね。

どれ位のかさになるのか、ピンとはきてないけど…。


「でもさあ、渚とユーリちゃんだけだと心配じゃないかなぁ?金庫守るの」

「まあね、マンションのセキュリティは万全だけど、万が一ってあるからね…」

「ボディガードってさぁ、欲しくないぃ?」


へ?綜合警備保障とかの?


「オレとォ…」

「おれだ。」


おまえら?


「早い話がさあ、そのう…ここで寝泊まりさせてほしいなってこと!」

「え?お前らこのマンションに越してくるんじゃなかったんだっけ?」

「それはまだこれからの話だからさ〜」

「それまで、一人で金を管理する自信がないのだ…!」




聞いてみると、競馬場で大金を受け取った瞬間から、誰かに顔を覚えられて、アパートを見つけられて泥棒にあうんじゃないかという不安感に襲われてしまい、どうにもやるせないそうだ。


このマンションの下の階の空き部屋は、沖縄から帰った翌日内見に来て契約したそうだが、引越しは来週…


だから、この一週間が心配でアパートの外に出られなくなりそうだとのこと。


「俺のマンションだって、防犯はすごいとはいえ万能じゃないよ?」

「いーのいーの。渚の一億円金庫があるから、なんだか妙な安心感があるし…」

「ウム、それに何かに守られてる気がするぞ。ここは。」


チラッとユーリの方を見た。

フムフム…というわかってるのかわかってないのか不明な顔をして、ポテトチップスをパリパリ食べている。


─聖女の守り、か。そういうのもあるのかもしれないな。

もうこの際、どんな不思議な力が関与してこようが全て有り得る気がしてきたぞ。



ふと、俺の頭にあのメモ書きがよぎった─


『空いてる時間にでも連絡してほしい。

080-○5△6-3□○7

エイヴェリー・ノートン』


隣人の英国紳士。

なぜか異世界の言葉で、ユーリに交信してきた─



─明日にでも電話してみようかな…。


なにか助けになってくれるかもしれない。

悪い事は想像しないようにした。


─それにファンタジー的な揉め事が起きても、今はこいつらがいるから…


俺は川口と福田の顔を見た。


「居候セット、今から用意するから…なんかあったらちゃーんとボディガードしてくれよ!」



彼らはホッとした顔で、


「オウ、任せとけ。」

「オレだってこう見えても、渚よりは腕っぷし、あるつもりだよぉ〜!」


と言って、力こぶを作るような仕草をして笑った。


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