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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【62】買い物ツアーをするらしい

翌日。



異世界の言語を話せる隣人のことは、ひとまず頭の引き出しに仕舞っておいて─



まずは、ユーリが日本で暮らすために必要なものを揃えるのが先決だ。


なにせ彼女は、異世界からなにひとつ物を持ってきていない。

着の身着のまま奴隷屋から逃げてきて、そのまま俺と一緒に沖縄に転移したから、俺の渡したお金を使って観光ホテルで買った衣類ふた揃えと水着しか持っていないのだ。


彼女の生活必需品を買う為に、二人で出掛ける事にした。




ユーリはさっき恵比寿駅前の携帯ショップで契約してきたスマホを、ニヤニヤしながらいじっている。

楽しくてたまらないようだ。


「これね、触ってると頭の中のクワノユーコの記憶の扉がパカパカ開いて、色んなものを思い出すから楽しいの。」

「母さんの記憶の扉かあ…どんなこと思い出すの?」

「どれも単語なんだけど、店の名前とか、駅の名前とか…検索してみると、それがなにかわかるのよ。」


言語に関しては早々に思い出せたようなので、スマホの文字の打ち方を『記憶』から引っ張り出してくれば、インターネットも思いのままだ。



─インターネットの概念も思い出せているのかな。

それとも字を打てば説明がたくさん出てくる不思議な魔道具くらいに考えているのだろうか?



「例えば、買物に行くと聞いてどんな単語を思い出した?」


ユーリは顎に手をおいて少し考え、


「バーバリー。」


と言った。


「へ?海外ブランドの?」

「他にも色々出てきたけど、その言葉が印象的だったわ。」




そんなわけで、俺たちはいま車で表参道に向かっている。


バーバリーの大きな店舗があるから、見たらユーリがなにか思い出すかな?と思ったからだ。


「朝は残りのピザを温めてちょっと食べただけだったから、服を見る前にどこかで昼ご飯食べようか。」



表参道ヒルズの駐車場に車をいれ、神宮前交差点の方に向かって表参道のなだらかな坂を降りていく。


ユーリにとっては初めての場所だから、なにもかもが物珍しいだろう。

観光客よろしく、キョロキョロと周囲を見回している。


─たぶん傍から見たら、日本に旅行に来た外国人の女の子を案内してあげてる図に見えるんだろうな。俺たち。



周囲を見ると、同じような外国人の観光客が物凄く沢山見受けられる。


再来週から東京オリンピックが開催されるから、早めに来て長期滞在してる人もいるのかもしれない。


去年は感染症の流行のため延期になってしまったオリンピックだが、母さんの聖女の力で春先に病原菌が消滅してしまったため、無事観光客も受け入れた上で開催できるようになったのだ。


おかげで、世界中景気が上がり始めてきている。


ワクチンの製造元はあおりをくらったという噂だが、元通りの生活になる経済効果のほうが圧倒的に大きいらしい。


─感染症が消滅してなかったら、世界中の人がワクチンの順番待ちになってたりしたんだろうなあ。

規模が大きすぎて今ひとつ想像ができない…。



「人通りが多いから、万が一はぐれたらスマホの履歴から俺を選択して電話をかけるんだよ。」


スマホを入手してすぐ、ユーリと電話の掛け合いをして練習させ、履歴を残しておいたのだ。


「大丈夫。私もうこの魔道具、ちゃんと使いこなせるわよ。」


彼女は、ふふん!という感じで胸を張ってそう言った。


─あ、一種の魔道具だと思ってたか。


ユーリの世界では電化製品=魔道具だから、呼び方の違いだけかもしれないが…まあいいや。




俺たちは、神宮前交差点にある東急プラザの上にあるカフェレストランで昼ごはんを食べることにした。


リコッタチーズのパンケーキで有名な、広くてお洒落な店だ。

『世界一の朝食』と言われている名店らしいが、朝食以外のメニューもどれも美味いらしいので、立ち寄ってみた。


混んでいたが、運良くテラス近くの席がひと席空いたので、そこに座る。


─春よりあきらかに街を出歩く人が増えてる。これからは、いい店は予約しないと食べられない事態になりそうだな。出かける時は気をつけなきゃ…。



本店がシドニーにあるらしく、メニューを見るとどこか外国風な料理が多い。

俺は海老とルッコラのリングイネ、ユーリはサーモンとビーツのオープンサンドを注文した。

デザートは名物のリコッタチーズのパンケーキだ。




「バーバリーって、服の店なの?」


ユーリがオープンサンドを食べながら、聞いてきた。


「うん、服とか小物とか…。でも、そんな高価な服着てなかった気がするんだけどなあ?うちの親…。」

「聖女…じゃなかった、お母様が一番立ち寄っていた〈服〉で思い出される店は─」


聞くと、日本が誇る国民的ファストファッションの店の名前だった。


「あれ?普通だな。じゃあなんでバーバリーが思いだされたんだろう…」



食事を食べ終わると、デザートのリコッタチーズとバターたっぷりのパンケーキが運ばれてきた。

3枚重ねな上にバナナまでついてきて、すごいボリューム…シドニーだとこれが平均的な分量なのかなあ?


俺は少し残してしまったが、ユーリはなんでもない顔をしてペロリと食べきっている。


─旅行中や打ち上げのときも少し感じてたけど、もしかしてユーリ…川口と並ぶくらいの大食いなのかもしれない。

たくましい消化能力に完敗だ。



「食べ終わったらこの辺の店で洋服を買いながら、バーバリーにも行ってみよう。」

「新しい洋服、買ってくれるの?」

「もちろん。ユーリの鞄や靴も買おう。」

「やった〜!」


お金はしっかり持ってきてある。

ざっと200万円。

全部使ったとしても、まだまだ9千万円を切らない。



─これ、一生使い切れないんじゃないかな、もしかして…。


家とか買えることができたら、ごそっとなくなるんだけどね。



せっかく持ってるなら、1度くらいはバーンと大胆に使ってみたいけど…


果たしてそんな日は来るんだろうか?


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