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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【59】恵比寿へのいざないをするらしい


「二人とも、ここで暮せば安心じゃない?」


ユーリは事も無げにそう言った。


「い、いやユーリ、この家は確かに広いけど、大の男が3人暮らすには─」

「ここじゃないわよ、下の階。」



─下の階の空き部屋探しか、なるほど…。


このマンションは下の階に行くにしたがって小さめの部屋になる構成だ。

中層階は2DK、2LDK、下層階は独身や単身赴任者が一人暮らしをするぶんには問題ない1DKや1LDKの部屋という作りになっている。


セキュリティの点では最上階も下層階も変わらないので、普通のアパートで暮らすのに比べたら防犯的には悪くない話だ。



「ウーム確かに、今日、増やしてもらったぶんだけで引っ越し資金は余裕だな…。」

「オレも恵比寿生活したいしたい〜!下の階って家賃いくら?」


俺は、このマンションを契約しに行った時、不動産屋で見せてもらった資料を必死で思い出した。


「たしか中層階が30万円台、下層階が20万円台くらいだったかと…」

「うわぁ〜、どっちもいけるじゃん。さっき増やしてもらったお金があればさあ。」



川口は腕を組んで、少し考え込んでいる。


「その金額では、一番安い部屋を借りたとしてもその内足りなくなるだろうな…俺たちの稼ぎでは。」

「そーだよねぇ、毎月バイトでの稼ぎを渚の革袋で増やしてもらえば、怖いものなしだけど…」

「それは問題ないよ。」

「ウム…いや、問題はある。」


缶ビールをグッと飲み干し、川口は話した。


「おれと福田は、おそらく近い内にバイトをしたくなくなるだろうという事だ。」


福田も新しいビールの蓋を開けながら、いつになく神妙な顔をしている。


「…わかるな〜、それ。お金があるって思っちゃうとさぁ、正直必死こいてバイトに行く気はなくなっちゃうよね〜…。」

「10万20万の額ではないからな…。」



─安易にお金を増やさせてしまって、まずいことしたかな。俺…



二人の人生を一瞬にして狂わせてしまったのか?



でも、バイトに追われる先が見えない生活から、二人を解放してあげたいのは事実だ。


俺と同じく、これといったスキルも学歴もなく、芸術的才能も将来の夢もあるわけじゃない。

あるのは、若さだけ。


そんな俺たちだからこそ、お金が必要なんだ。


たくさんのお金があれば、やりたい事を思いつく事だってできるかもしれない。


お金がないから、大きな将来の夢を願わないようにしてるところはあると思う。


考えないようにしているんだ。

どうせ叶わないって思いたくないから。


お金は、自由に夢を願える力をくれるんだ。



「そこでだ、渚。」


川口が俺を見て、言った。


「おれはお前を真似てしばらく暮らしてみようと思っている。」

「俺を、真似て…?」

「ああ。」


彼は、手に持ったビールの残りを一気に飲み干した。


「暮らしぶりがガラッと変わっただろうに、お前は性格が変わったりする事なく、ペースを保って生活できているように見える。おれはそれが羨ましい。」

「川口…。」

「タンス貯金でもいい。将来が見えなくてもいい。どうせそんなもん、はなから見えんのだ。」

「賛成ー!オレも渚の真似してみま〜す!」


福田も笑顔で、右手を上げた。


「やってみないとわからないもんね、お金のある生活なんてさぁ。オレはここの下の階に引っ越してみるよ。」

「いいのか、福田…。」

「いーのいーの。賃貸なんだし、なんか問題あって家賃払えなさそーなら、今のアパートみたいな安い所にまた引っ越せばいいんだからさあ。」

「ウム、そうだな。おれも引っ越すぞ。」


二人はさっきまでと違い、決意に燃えた明るい表情になっている。



─俺を真似た暮らし、か。

それでいいのかもしれない。


もし二人がそれぞれやりたい事を見つけたら、それに合わせたライフスタイルに変えていけばいいんだから。



「歓迎するよ、二人とも。」


俺は缶ビールの缶を差し出した。

カツン、と缶をあわせて、二人と乾杯をする。



「やった!決まりね。」


一部始終を見ていたユーリが、嬉しそうに手を叩いた。


「勇者を探すのも協力者が必要だものね!」




──はい?


今なんと…?

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