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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【56】無事羽田に向かえたらしい


那覇空港へ向かう車の中で、俺はユーリに昨夜の事を話した。



川口と福田に、お金を増やせることやユーリが異世界から来たことが、俺の録画ミスのせいでバレてしまった事──


─まさかこんなにすぐ、打ち明ける日がくるとは……



「異世界のこと、二人も知ったのね!」


ユーリが、パッと明るい顔になって聞いてくる。


─な、なんで嬉しそうなんだよ、ユーリは。



「いくら友達とはいえ、他人に秘密を漏らすなんて…ごめんよユーリ。」


彼女は、戸惑う俺を気にかけず、フフッと笑った。


「私は川口くんと福田くんは、おいそれと友達を裏切る性格には思えないわ。」


フワッとした笑みを浮かべて二人を見るユーリ。

それはまさに、「聖女の微笑み」という感じだった。


「嬉しい事言ってくれるじゃん、ユーリちゃんはさぁ。」

「そうだな、さては渚よりおれたちを信用してくれてるんじゃないか?」


そう言って、川口と福田は朗らかに笑った。



─うん、そうだよな。他人、と言って切り捨てるみたいに話すのは失礼だよな。


長い付き合いなのに、騙そう騙そうとしてるのは俺の方だ。

こんなんじゃ友達失格だな。


俺はひとしきり反省した。




レンタカーを返却し、俺達は空港のチェックインカウンターへ。


一昨日、ユーリの分の席もリザーブしておいたから、一緒の飛行機で東京に向かえる。

(ハイシーズンだから無理かと思ったが、エコノミーにいくつか空席があったので、無事取れた)



那覇空港のA&Wでハンバーガーを食べて、待ち時間をつぶす。


A&Wは沖縄に展開されているアメリカのファーストフード店で、マックやケンタよりも日本での歴史は古い。

それだけに、メニューもかなりアメリカンテイストで、ルートビアのような日本の他のファーストフード店にはない飲み物も存在する。


俺とユーリはハンバーガーとルートビア、カーリーフライを注文。

ルートビアは少し薬っぽい味でクセが強く、カーリーフライはその名の通りくるくるとカールしたフライドポテトだ。


川口と福田も基本的に同じメニューだが、カーリーフライにチリ&チーズがかかった物を頼んだ。


ユーリはルートビアを飲んで、バザルモアにも似たような香りの飲み物やゼリーがあると言っていた。

ルートビアは何かの根っこと香辛料を合わせた成分だと聞いたことがあるが、あれだけ植物の種類が似ている国なら、同じ味の植物があってもおかしくないだろうな。




フライトの時間になり、飛行機に搭乗する時が来た。


「ユーリちゃん、初めての飛行機だよねえ。怖くないの?」

「そうだよね。俺たち、プレミアムクラスの席だから、別々になっちゃうけど─大丈夫?」


ユーリは俺の革の鞄だけ肩に下げている。

昨日とは別の服を着ているから、またなにかホテルの服屋で新しいのを買って、異世界の服やこっちで買った服、水着は鞄にしまっているのだろう。


飛行機に乗ったら、鞄は座る席の上の棚に入れることは、あらかじめ伝えておいた。


「大丈夫…深く考えないようにしてると、クワノユーコの日本人としての記憶が優先されるみたいだから、頭をボーッとさせるくらいにしてなすがままにしてるわ。」



彼女なりに、「日本で生きた記憶」との付き合い方を見つけ始めているようだ。




そうして俺達を乗せた飛行機は、何事もなく羽田空港に向かって飛び立ったのだった。



─いや、旅自体は何事もなくどころか、むしろ色んな事あり過ぎだったけどね…。


人生の中で、これほど突飛な出来事が濃縮された経験は、今の所ほかにない。

すごく長い旅をした気分だ。


異世界のホテルにも宿泊してるから、尚更長く滞在したような気持ちになっている。



─でも待てよ…東京に帰ってからだって、ユーリと協力しあえばいつでも異世界転移して、バザルモアのホテル・タラートに滞在することはできるんだよな…。



異世界に飛んでの勇者探しや、ユーリのこれからの事について考えるのは大変そうだけど、いつでも南国リゾートに行ける最高の権利を持ったとも考えられる。


それどころか、週に一度の翻訳の仕事や家事代行サービスをしばらく休止すれば、一ヶ月やそこらホテル・タラートでゆったりすることだってできるんだよな。


身の回りの世話もアペルに任せっきりで、東南アジア風のご馳走を用意してもらって…


ホテルのプールもまだ使ったことなかったから、泳いでみたりなんかしちゃって…


風呂だけは、アペルの手から湯が出る謎風呂だけど…



─2泊3日の慌ただしい旅とは違う。まさに、バカンスができるじゃないか…!



俺は飛行機の中で、こみ上げてくる笑みをこらえるのに必死だった。

いや、だいぶグフフと漏れていてしまったかもしれない。


隣の席の川口はゲームに集中してて、福田は半眠りで音楽を聞いている。


良かった、見られてなさそうだ。


─ユーリは今、離れた席で一人、何をしてるだろうな…。



恵比寿についたら、取りあえずは俺のマンションに滞在してもらう事にするけど…


入居者以外の住人ができたら、賃貸だとやっぱ問題あるのかな…。

それとも彼女かなんかだってことで、大目に見てもらえるのだろうか?


─考えなきゃならないことはいっぱいなんだよな。ああ、異世界専門のYahoo!知恵袋でもあったらいいのに…



俺は座席についてるイヤホンを耳に突っ込み、軽快な外国の曲をかける。

ものを考える時は、言葉がわからないくらいが丁度いい…。


と思ったんだけど、翻訳の指輪の影響で全部日本語になってしまったから、慌てて歌詞なしの曲のチャンネルに変える。


─そういえば、ユーリは指輪無しで川口や福田ともすんなり会話できたな…。

あれは、母さんの─前の『聖女』の記憶データによるものなのだろうか?



窓の外の青い空と雲海を見ながら、この二日間のことやこれからの先の事をあれやこれやと考え、思いにふけるのだった。

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