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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
54/162

【54】怪しまれてしまったらしい


ビーチサイドのカフェ。



海を見ながら遅めの昼食を食べ、遊び疲れを癒やしている俺たち4人。


タコライスを食べる手を止めて、ユーリが幸せそうにホゥ…と吐息を漏らした。


「友達とこういうの、一度してみたかった」

「こういうのって?」

「南国でバカンスってやつよ。」


─バザルモア王国もかなり東南アジアみたいな感じで、じゅうぶん南国だと思うんだけど…。


働いてばかりで、海で遊んだりはできなかったのだろうか?


それとも、半分の記憶─桑野由子…母さんとしての、思いだろうか。


「バカンスというには、2泊3日は短すぎるだろう。」


川口が、肉がめったやたらと挟まってるデカいバーガーを食べながらツッコミを入れてきた。


たしかに、バカンスとかバケーションって、長めの休暇のことだな。


「……今が人生のバカンスの時期、なのかもしれない─」



ユーリは、遠い海岸線を見つめながら、呟いた




ブランチを食べた後、ビーチだけでは飽き足らないとばかりに、俺達はホテルのプールで遊んだ。



日焼け止めを塗ってはいても、沖縄の夏の日差しは容赦ない。


夕方には、皮膚はすっかり紫外線でヒリヒリだ。



「うわ、熱々だよ、肩とか背中とか。」

「ウーム…今でこうなら、明日は痛くて荷物も背負えないかもしれん。」

「うぇぇ〜、やっちまったーい」


プールサイドのベンチ。


男3人が皮膚のヒリ感におそれを感じている中、ユーリだけはケロッとしていた。


「みんな、皮膚が痛いの?」


彼女の肌は赤くなっておらず、真っ白のままだ。


「えーっ、なんでだよ、ユーリだけ。」

「治し方があるなら教えて〜!ユーリちゃん。」


彼女は顎に指をおいて少し考えたあと、俺の後ろに回って背中に手を置いた。



─シュウゥゥ…


体から、火照りが消えていくのがわかる。


二の腕を見ると、さっきまで真っ赤だった皮膚が普通の状態に戻っていた。


「─ユーリ、これって…」


─聖女の治癒魔法?!

でもこっちの世界だと魔法は使えないんじゃ─



見ると、川口と福田の背中にも手を当てて治していた。


「あれ〜?痛くなくなった…ナニコレぇ!」

「どうなってるんだ?魔法みたいだな。」


二人共、自分や互いの肌を見て、驚愕している。


「これは魔法じゃなくて、固有スキル…。」


ユーリが呟いた。


「「?」」


川口も福田も、なんのことだと目を丸くしている。

ま、まずい…!


「じゃ、じゃあ日も暮れ始めてきたことだしさ!夕飯食べに行こう、夕飯!」


俺は焦って立ち上がると、ユーリはハッとして、


「あ…じゃあ私、そろそろ自分のホテル帰るね!ディナー、あっちで用意されてるから…」


タオルを持って、ロッカールームへと歩き始めた。


「歩いて帰るから車は大丈夫よ。みんな、今日はありがとうー!」


大きく手をふると、彼女はロッカーへと走り去った。



「ウーム…彼女は気功かなんかが使えるのか?」

「さっきの、なにあれ〜?!技、すごくね?」

「ハハ…どうだろ…。」


残された俺は、冷や汗をかくばかりだった。


─くっそ、後始末丸投げしたな、ユーリめ…!

負傷してる人を見ると、つい直してしまう習性でもあるのか?


じゃあ浜辺で倒れ込んでた時、自分に使えばよかったじゃん… 

火傷は直せても、熱中症は直せないってのか?!



「そ、そうだ二人共、パラセーリングのムービー、撮っといたよ!」


なんか別の話題にズラして、誤魔化そう。


「おお〜っ、見せて見せて〜!」

「ウム、俺も見たいぞ。」


よかった、二人共食いついてくれた。


「ホテルの部屋で、二人にそれぞれ送っておくよ。さ、シャワー浴びて戻ろう!」


俺達はロッカールームへと歩いていった。


日はだいぶ落ちて、夕焼け空になってきている。


あとは焼肉でも食べて酒を飲んで、ガーッと眠ってしまおう…!




だが─



部屋に帰ってからというものの、川口と福田の様子がおかしい。


俺に対してなにか言いたげで、戸惑っている感じがする。

夕飯の間も、しじゅうその調子だった。



─一体、どうしちゃったんだ─?




部屋に戻る途中、自販機で買ってきたオリオンビールを一人3本ずつ配る。


いざ寝酒タイム、という状況になっても、川口と福田は困った顔をして、目配せし合っていた。


「なんだよ二人共、なんか変だぞ?!」


俺が聞くと、川口が言いにくそうにモゴモゴ話してきた。


「渚、あのな…さっきの…。ウーム…」


彼が言葉を選んで止まってしまったので、仕方ないといった感じで福田が口を開いた。



「あのさぁ…異世界って…ほんと?」


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