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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
42/162

【42】異世界の物価に驚愕する


「喉乾いた〜…」


俺は市場通りに戻ると、まず飲み物屋を探した。


「さっき来た時に、それっぽいのを見かけたんだよな。果物とか積んである店…」



トートバッグに入ってた飲みかけのミネラルウォーターは、浜辺で魔法の詠唱をしてみている時に全部飲みきってしまっていた。


思えば元世界から持ってきた大事な水分なんだから、もっとチビチビ飲めばよかったんだが、なにせ暑いので考えなしに飲んでしまったのだ。



この世界─バザルモア王国の温度と湿度は、殆ど沖縄と同じだ。

植物の感じもかなり似ている。


だから最初、浜辺で目が覚めた時も、異世界転移したことになかなか気付けなかった。


だから夜といえどもそこそこ暑く、汗が出る。



「おっ、あったあった!」


パイナップルやマンゴー、オレンジ、スイカなどが台の上に積んである店がある。

植物が同じ感じなら果物も同じなんだな。


店員のお姉さんの横には、木製の大きな圧搾機がある。あれがジューサーかな。


「あの、これのジュースをください。」


俺はスイカを指した。

スイカなら水のかわりになってくれるだろう。


「スイカね。小銅貨1枚よ。」


翻訳の指輪のおかげか、呼び名も「スイカ」って事になってる。わかりやすくて助かる。


銅貨1枚が日本円で千円。

で、銅貨より小さくて薄べったいのが小銅貨で、十枚で銅貨1枚だから…小銅貨は100円。


「よくみんな壺で買いに来るけど…なにか器はある?」

「壺じゃなくて、こういうのでもいいですか?」  


俺は600mlの空のペットボトルを渡した。


「なにこれ?ガラス…じゃないわよね。虫の羽で作ったなにかだとか?ずいぶん軽いわ。」

「自分の国の水筒なんです。」


代金を払う際、銀貨を1枚渡したら、もっと細かいお金はないの?と少し困った顔をされてしまったが、ないと答えたら、仕方ないという感じでお釣りを返してくれた。

おつりは銅貨9枚と小銅貨9枚。


船から来た人だもんねえ、と言いながら、お姉さんはスイカを適当に切って絞り台に置いた。


バーを下に押すとスクリューが回転して、果物を押しつぶし、果汁はツルツルした石の受け皿にたまる。

その受け皿を傾けて、口になってる部分から流れ落ちた果汁をペットボトルに注ぎ込んだ。


「入りきらなかったぶん、あげるわ。」


お姉さんは、なみなみと赤い汁が入ったペットボトルとともに、残りのスイカを手渡してくれた。残りといっても1玉の3分の1くらいはある。



─小銅貨1枚ってスイカ1玉ぶんだったのか。1玉100円なんて、元世界だとないよな。


俺はそこかしこに置いてある木のベンチに座って、スイカを食べた。

残り分を食べただけで喉の乾きがすっかりいえたので、ペットボトルに入れてもらったぶんはとっておこう。



スイカの皮を捨ててもらおうとジュース屋台に戻ったら、オレンジジュースを買いに来ているおばさんがいた。


見ていると、お姉さんは傍らの壺から柄杓で水を汲み、圧搾機のスクリューと受け皿にかけて軽く洗った。

木製スクリューは樹脂みたいなもので加工されているのか、水に濡れてピカピカしている。


オレンジを何個も絞り、溜まった汁を壺に注いでおばさんに渡していた。


「あら、お兄さん何かまだ欲しいの?」

「いえ、すみませんが皮を捨ててほしく…」


お姉さんはスイカの皮を受け取りながら、屋台のはずれのほうに焼却炉があるので、そこにも捨てられるわよ、と教えてくれた。


「あと、聞きたいことがあるんですが─その壺の水ってどこから汲んできてますか?」


聞くと、屋台街のど真ん中あたりに井戸があるらしいので、屋台をやる人はそこから汲んできているそうだ。


(いい事を聞いたぞ。飲み水がある事さえ分かれば生きていける。水あたりしないかどうかちょっと心配だけど…)


「お兄さん、手ぇ出して。」


ハッと顔を上げると、ジュース屋のお姉さんが柄杓を持って台から身を乗り出してる。

俺は言われるままに両手を差し出すと、彼女はパシャパシャと水をかけてくれた。


「手、ベタベタしてんでしょ?」


確かに、スイカの汁でベタベタになってた。

こんな手で他の店の商品を触ったりしたら、怒られてしまう。


俺は彼女の気遣いに感謝の言葉を述べて、店を後にした。




さて、スイカで喉の乾きも癒えたところで、市場散策だ。

さっき貨幣のことを教えてくれた革細工屋へと足を運んだ。



「鞄を売って貰いたいんですが…」

「おっ、異国の兄ちゃん、両替できたのか!」

「はい、なんとか。」


(この国の両替所ではなく、特殊スキルを発動させて両替しちゃったけどね。)


「鞄なら背負うのと斜めがけにするのがあるよ!ちょっとしたのを入れる小さいのや、銭袋もある。」


おじさんは商品台に乗ってる革袋を、それぞれ指を指して教えてくれた。


ちょっとしたのを入れる小さいのというやつは、マンションの金庫に置いてきたお金を100倍にする奴と同じタイプだ。

銭袋はそれの小さいバージョン。


肩から斜めがけにするタイプは、薄くて軽いのと厚手の物の2種類あった。


(背負うタイプは多少背中を守ってくれるけど、使いやすいのは斜めがけかな…。)


俺が薄い方を手にとってみると、おじさんが


「薄くて軽いけど、そっちの方が上質の革で出来てるから丈夫だよ。ただちょっと高いけどな」


と言ってきた。


「い、いくらですか。」

「銅貨5枚だ。」


や──

やっっっす!!!!

何万円するのかと思ったら、5千円!


「分厚い方は銅貨2枚だが…」


いやいやいや!

本革で軽くて丈夫なハンドクラフトの斜めがけ鞄が、日本円で5千円!

十分っすよーーー!!!


「薄い方を買います。」


俺は即決した。


「いいのか?じゃあ高いものを買ってくれたお礼に、この銭袋をオマケにやるよ。使ってやってくれ。」


あ、これは嬉しいかも。

どのみち買おうと思ってたんだ。

紙幣が通用しない世界なら、硬貨袋、必要だもんね。



その後も隣のシャツ屋で買物をしたが、やはり安さに驚かされた。

ちなみに買ったものは、インドや中東のクルタのような形をした新品の白シャツと、ふんどしみたいな下着だ。


白シャツ1枚、小銅貨5枚─500円。

ふんどし1枚、小銅貨1枚─100円。



─もしかしてこっちの世界、物価メチャクチャ安くない…?!


万が一、貯金だけで何年か過ごさなくちゃならなくなったとしても、これなら生きていけそうな気がする…!!



俺は心の不安が少し取れて、自然と笑みがこぼれた。

ふんどしを握りしめて笑みを浮かべてる男なんて怪しさ抜群だが、仕方ない。



嬉しいものは、嬉しいのだ…!

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