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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
41/162

【41】異世界で両替はできるのか


バザルモア王国─


両親が若い頃、勇者と聖女として魔物と戦い、愛を育んだ世界。



俺は両親がそれぞれ書いた長い長い私小説を読んで、そこで起きた出来事や、異世界での暮らしぶりを知った。


そこに脚色を加え、『小説家になろう』で小説として連載する作業は現在も実行中だ。

(なろうに載せてね、というのは誰であろう母の遺言(?)である)


だから毎日のように異世界とは触れ合っていたので、まるで自分が体験したことかのように身近に感じるようにはなっていた。



しかし。



「お金、二人とも無一文で飛ばされたみたいだから、どうやって両替すればいいのかわからない…。」


俺はなんの力もないから、親と同じように王宮で騎士をやったり、王族の病気を治したりの華やかな異世界スタートダッシュはできない…


せめて父と同じく、鑑定スキルかアイテムボックスの能力でもあれば─


「!母さん、日本に戻ったら魔力が使えなくなってたみたいだから、逆に俺がこっちに来ることによって魔力に目覚めるとか、あるかも?」




俺は、先ほどの木立を抜けて、浜辺に戻った。

声を出すから、市場から距離を置いてみたのだ。



「いくぞ……鑑定っ!!」


─シーン─


浜に落ちてた貝に向かって叫んでみたが、何も起こらない。


「うーん、じゃあ…アイテムボックス!」


─シーン─



その後は、両親の手記に書いてあったありとあらゆる魔法を唱えてみたが、すべて無反応。


俺には魔力も特殊スキルもないのか?


それとも練習すれば、出来るようになるものなのだろうか?


「困ったな…修行するにも、レベルが上がって使えるようになるのかどうかちょっとくらいはわからないと不安だし…」


10年間野宿して修行生活、なんてのもなるべく避けたい。

魔法の才能が0だったら、無駄になるし…


「せめて自分の簡単なステータスだけでも、見れたらなあ─」



その時。


頭の中に文字が現れた。

思ってる、というより見えてる感じだ。

目の前に現れてるんじゃないのに、見えてるって感覚がある。



そこに現れた文字は─



【クワノ ナギサ 24歳】

【職業】勇者及び聖女の息子

【レベル】1

【特殊スキル】異世界保有資産両替



「え、なに?異世界保有資産両替?」


なんだそれ。

魔法とかじゃないんだ…

魔力なしで使えるスキルなのかな?


「どうすればいいんだこれ?…両替してくれっ!!なんてな、ハハ…」


バッ!

と、頭の中に計算機の文字盤みたいなのが表示された。

単位は¥。数字は100000000。


─1億円。俺のマンションの金庫の中に入ってる金額だ。


「両替してくれって望んだら、出るのか。じゃあこの、バザルモアの通貨に両替できるのか?」



表示が変わった。


¥100000000

金貨1000枚


「金貨だって…さっきのおじさんが見せてくれたあれかな?10万円で金貨1枚なのか。」


全財産いきなり両替するのは怖いし、硬貨だから重たそうなので、100万円分だけ両替することにした。金貨十枚。これなら苦じゃない。


「さし当たっての買い物用に100万円だけ、両替して!」


と願ったら、ちゃんと100万円分だけ─ちゃんと細かいのも混ぜて─両替してくれたようだ。


ポケットが急にズシッと重みを増し、手を入れると中には硬貨が入っている。

取り出してみると、金貨8枚と銀貨20枚。


「屋台のおじさんが見せてくれたのと同じやつだ。…もしかして、これはすごく便利なスキルだぞ。」


金庫にお金を入れておいてよかった。



再び「両替して」と言うと、頭の中に計算機の文字盤が浮かび上がる。

表示されてる金額は、¥99000000に変化していた。


「資産っていうからには、紙幣の形をしてない物も含まるのかな…?」


俺は試しに、マンションの駐車場に停めてある車のことを頭に浮かべて


「これも資産として再計算。」


と言うと、車の売値らしき金額が上乗せされた、資産合計金額に変化した。


「そういう保有資産の算出もできるのか…こりゃいざって時に助かるな。」


ちなみに今持ち歩いてる日本円200万円は、両替できないようだった。

あくまでも異世界に保有してる自分の財産、じゃないとだめらしい


─『異世界保有資産』って、バザルモア側から見ての異世界(=日本)ってことなんだな。



次なる問題は─

物価だ。


いくら現地のお金に両替できたとしても、物価が日本の100倍とかなら、あの革袋で増やした1億円もあっという間になくなってしまう。


「泊まる宿も見つけないといけないし。大金を持って野宿するなんて、怖いからな。」


こんなトートバッグだと危ないし、しっかりした鞄を買おう。

硬貨入れも買えたらいいな。ポケットだとこれ以上は入らないし…。


服も、どうやらアロハだと目立つみたいだから、なにか地元民っぽいものを屋台で買って着替えたい。



「帰り道は…そのうち見つかるだろう。」


俺がこっちに飛ばされたのには、なにか理由があるはずだ。

それさえわかれば──



俺は再び木立へ入り、木々の間の灯りを目印に、市場通りへと足を進めた。

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