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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
32/162

【32】福田は贅沢がしたいらしい


俺と福田は、紗絵さんの作ってくれたポトフと炊き込みご飯をウマイウマイと言って食いまくり、腹一杯になってひっくり返った。


「う〜っ、食いすぎたあ〜」

「汁モノと米モノは腹の中で膨れる…」



腹ごなしに、PS4からSWITCHに切り替えて、二人でしばしスマブラ対戦。


一時間ほどやった後、PS4に再び切り替えて、アマプラでアニメを見ようということになった。


俺たちが家飲みする時は、だいたいこの順番だ。

今日は福田がバイト前だから、アルコールはないけどね。

(ちなみに川口がいる時は、アニメじゃなくてひたすらゲームが続くこともある。)



今日は福田が古いアニメを見たいというので、ロボットものかなんかを検索することにした。

アマプラのdアニメストアは親の世代のアニメすら見れるので、面白い。


検索画面を選ぶと、あらゆる時代、あらゆるジャンルのアニメがスクロールで飛び込んでくる。

実際アニメは見なくても、沢山流れるサムネを眺めているだけでも楽しい…。


福田が最近やたらと勧めてくる、昔の西部劇みたいなロボットアニメを観てみようかな。


「な〜沖縄着いたらさあ、どこ行く〜?」


俺がアニメのサムネをスクロールして見てる横で、福田が沖縄のガイドブックをパラパラ見ながら聞いてきた。


「俺らが泊まるホテル、そこだけでも結構色々なホテル内施設があるみたいだよ。」

「ホテルでのんびりもいいけどさ〜、車でも出かけたいじゃん。」


車であちこち行くのが好きな福田は、レンタカーで沖縄観光をする事を提案してきた。

レンタカーはもともと借りる予定だったから、確かに見て回らないと損だな。


「美ら海水族館、せっかくだから行ってみようか。那覇からだと若干遠いけど、俺らが泊まるのは恩納村周辺からだとそんなに遠くないし。」

「お〜、いいね〜!じゃあ沖縄本島の北側に向かって巡るルートにすっか。」


ガイドブックを覗き込むと、様々な観光スポットが目に飛び込んでくる。

真っ青な海が一緒に写ってる写真が多く、否が応でも南国に行く気分が高まってしまう─。


「南側のウミカジテラスって所にも行ってみたいんだけど…なんか美味しい店が多そうだよ。ハンモックで寝れるカフェとかもあるそうだし。」

「え?それ水族館と逆方面じゃね?3泊4日だとちょっと慌ただしくなるよな〜。行けないこともないけど。」


うーん、慌ただしいのは嫌だな。

観光ったって、どうせ3泊4日じゃ全部の所を巡れるもんじゃないから、ノンビリを優先にしたいな。

行きそこねた観光スポットは、また来年ということで…。


なにせこれからは新型感染症に悩まされることはないんだ。旅行もバンバン行ってやる。


「ビーチでボケーっともしたり、ホテルのアクティビティも楽しむ日も作りたいから…やっぱり行くとしたら美ら海水族館かな。」


宿泊予約を入れてあるシェラトン沖縄は、様々なアクティビティを用意してくれているらしいので、せっかくだからそれを利用したいと思ってる。


ホテルのプールはもちろん、ジップラインで海の上をすごいスピードでガーッと滑り降りるやつ(TVのタレントやYoutuberが挑戦してみてるような、アレだ)なんてのもある。


申し込めば、海の洞窟探検ができるシュノーケルツアーや、細長い棒状のボートにまたがりスピードを出したモーターボートに牽引されるバナナボート、夕焼けの海を船でまわるサンセットクルーズなんてのもある。


どれもみんな、やってみたい。


「なあ、アクティビティ代は俺が持つからさ、いろんなの申込んで挑戦してみない?」

「渚、太っ腹だな〜!マジで持ってくれるの?」

「マジでマジで。」

「うぉっ、やったぁ〜!俺一回ジップラインでガーッて滑走するの、乗ってみたかったんだわ。」



基本的な予定としては、


①那覇空港到着。空港周辺でレンタカーを借りて、那覇市内へ。観光。

②夕飯までに恩納村へ。ホテルにチェックインしてディナーを楽しむ。

③2日目、車で美ら海水族館へ。

④その後沖縄本島北部をドライブ。最北端まで行ってみる。

⑤途中、気になる食事処があったら立ち寄る。

⑥3日目はホテルのアクティビティを各種楽しみつつ、時間の隙間はプライベートビーチかプールでゆったり。

⑦夕飯は車で行ける範囲のレストランかバーで酒とローカルな食べ物を楽しむ。

⑧4日目、那覇に戻り、お土産を買ったあと車を返却し、空港へ。


─こんなところだ。



「食う所さあ、ガイドブックに沢山載ってるけど、狙い定めて行ったりはしねーの?」


福田が沖縄の旅行ガイドをパラパラしながら、聞いてきた。


「そうだなあ、気になる店の名前は覚えてむかおうとは思うけど…基本的には気の向くまま、でいいんじゃないか?」


俺はソファにボフッと体を沈めて、そう答えた。


「行きそびれたら、来年また行こうよ。」

「うっは…すげー事言うね、富豪はよぉ〜」

「お金は貯めておくより程々使って経済回したい派の人間なのですよ、俺は」


エヘン!といった感じで、ソファに寄っかかったまま胸を張ってみる。


「経済回せる程あるのかぁ?遺産。」


福田がアハハ、と笑う。

どうやら冗談だと思ったらしいが、本気出したら日本の経済状況が変わるほどの使い方、できると思うんだよね。あの革袋で。


世間に怪しまれて、変な所に目をつけられたりしたら嫌だから、派手すぎる事は謹んでいるけど─


「まあ、そこまではないけど、折角の機会だし、人生で贅沢ってものをしてみたいんだよね。」

「ついて行きやすぜ、ご主人様ぁ〜!」


福田がおどけて土下座のフリをしてきた。


「贅沢をする際は、この福田めをお供に〜!」

「よし、貴様の同行を許可しよう。」


俺もふざけて、貴族のような事を言ってみた。


「ボディガードでも鞄持ちでも運転手でも、贅沢の為ならなんでもするぜぇ〜!オレは!」

「おい、プライド消滅してるぞ。」

「そんなもなぁ〜、元々ない!」

「せめて『贅沢のため』じゃなく『渚様のため』にしろよ、そこは。」

「…ん〜、それはちょっとなぁ〜…」


腕を組んで悩んだ顔をする、芝居的な福田の反応に、思わず笑ってしまった。



─ボディガードかあ。


金庫の中入っているのは、現金1億。

それと、お金を100倍にする袋と、すべての言語を翻訳する魔法の指輪─


これだけでも、ボディガードを雇うのに十分なんだよね、本当なら。


まだ他人に知られてないから悠長にしてるけど、ひとたびバレたらのんびり暮らしてなんていられないよな。



─沖縄に行ってる間、放っておいて大丈夫かな。でもあんな魔法のアイテムを持ち歩く方が怖いか…



セキュリティがしっかりしてる高級マンションだとはいえ、やはり留守は心配だな。


「うーん…」


と呟く俺に対して、


「心配すんなよ、旅行中の運転はオレに任せろ!」


と息巻いて、福田が背中をバンバン叩いてくる。



俺は麦茶をグビリと一口飲み、また「うーん」と唸るのだった。


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