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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
24/162

【24】嘘をつくのが下手らしい


「すまんって。むくれるなよ渚」


アトレ恵比寿にむかう道のり、川口はたびたび謝ってきた。

顔はさほどすまなそうな顔をしていない、表情の薄いいつものモッサリ顔だが。


「むくれてないよ。困ってるだけ」



原因は、先程の出来事だ─



家事代行人の紗絵さんに、俺のベッドで(勝手に)下着で眠っていた川口を見られて、なにやら誤解されてしまったようなのだ。


紗絵さんは、てきぱきと楽しそうに書斎と寝室の掃除を済ませ、ベッドメイキングもすませた後、帰り支度を始めた。


「桑野様。メールでもお話しましけど、初回は3時間で料理はなしということですが…」

「あ、はい。」


そこで紗絵さんは少し頬をポッとさせ、


「お料理、お時間追加で買い物代行サービスもしておりますので、お二人分の量でも大丈夫ですよ…!」


と言った。


「ああ、いや!二人分はいりませんので!あいつはその、たまに泊まりにくるだけの関係というか…」


我ながらフォローになってない。


「あのあの別に他にも泊まりに来る奴とかいますので…!」


駄目だ、わからんけどドツボにハマった気がする。


紗絵さんは、


「家事代行サービスは秘密厳守が鉄則。ご安心くださいませね…!」


といって、頬を紅潮させながら素晴らしい笑顔を見せると、ペコリとお辞儀をして帰っていった。





「誤解させとけばいんじゃね」


川口は、カレーをなすりつけたナンを口に放り込みながら、なんでもない顔でそう言った。



俺達はいま、アトレ恵比寿の上にあるインドカレー専門店に来ている。


起きてから何も食べてなかったので、がっつりしたものを食おうという事になり、俺のリクエストでインドカレー屋が選ばれたのだ。


夕方5時までランチをやっていてくれるので、昼飯というには遅い時間になってしまった時に助かる。


疲れたときには辛い物が一番だ。

いつか本物のタイカレーやインドカレーを食べに、旅してみたい。



「家事代行サービスの人がどう思ってても、別にどうということはないんじゃないか」

「まあ、そうかもしれないけど…」

「たとえ誤解でも、相手がおれなら不足はないだろう。」


川口がおどけて、ナンを掲げながら胸を張ってみせた。


「不足も不足だっての!…もう、ここのインドカレーお前のおごりな。」

「なにっ!むしろお前がおごってくれよ。遺産入ったんだろ」

「あ…と、そうだったか、そうだな。」


俺は、祖父の遺産が大量に入ってマンションを借りれた事になってる設定を思い出した。



昨夜、飲みながら川口に話した事は…遺産の件と、翻訳の仕事でそこそこ入るようになったからコンビニバイトを辞めたって話。



「なんだよ、渚。本気にすんな。たとえ金持ちになってもワリカンでいいに決まってるからな。」

「ハハ…ありがと。でも遊んでるときとかに思わぬ支出があったりしたら、俺が払うよ。」

「太っ腹だな。沖縄旅行もそのひとつなんだろ」


俺はギクッとして、川口の顔を見つめた。


抽選で3名一組沖縄旅行が当たったから、川口と福田を招待した…というふれこみでいたんだが、


「福田と二人で、なんかおかしいな?と言ってたんだ。だってお前、そんなラッキーな事がおきたのにTwitterでもLINEでもなんにもその事について口走らないだろ。」

「あ…あれは、他の人に自慢するのもなんだな、と…」

「なんか嬉しいことがあるとすぐ文字に書くお前が、ヨロコビの匂わせすらないとか…本当に抽選したのか?って怪しんでたんだよ。」

「……。」

「なんで払おうとしてんだろ?と思ってたけど、遺産とか、まとまった金が入って来たってのを聞いてやっと理解できた」



俺はおし黙って、ナンをモフッと噛んだ。



単純なんだなー、俺って…。


遺産のことだって、もしかしたら疑われてるかもしれないけど…あまり突っ込んで暴こうとしないでくれてる、川口に感謝だな。


今のところは。



「ごめん、嘘ついて…。」

「気にすんな。福田もおれも感謝してる」

「こうでもしないと、なかなか3人で旅行なんて行けないよなと思って…でも俺が払うって言って、気を使わせたくはなかったから…」

「いいっていいって、ありがたく奢ってもらうぞ。…ただ、いまたまたま金があるからって無茶すんなよ。」


川口は勢い良くマトンとチキンのカレーの2種セットを腹に詰め、ナンも2枚ほどおかわりした。

大食らいなので、まだ足りないみたいだ。


俺はほうれん草とマトンの2種セットを食べ、食後にチャイティーを飲んだ。



「この後、どこか寄ってく?スタバとかもあるけど…」

「いや、今日は夜勤だから、一旦家帰って着替えてからいくわ。」

「そっか、またな。」

「おう、次に会う時は旅行当日かもしれんがな。」



そう言ってニヤリと笑うと、彼はJR恵比寿駅の改札へと消えていった。



「沖縄旅行…抽選じゃないってバレてたな。でも、さすがに親の素性についてまでは言えないな…。」


今後は、実は祖父の家が大金持ちだったって設定で行こう。



─福田や梨亜にも、バラバラの設定を話さないよう、つじつまを合わせていかないとな。



矛盾や間違いをつつかれた時に、咄嗟の嘘で誤魔化すのはどうやら苦手みたいだから、今後はひときわ気を引き締めていかねば…。

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