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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【20】大人なデートをしてみるらしい


日曜日、梨亜との待ち合わせは恵比寿駅前。


恵比寿像の前…はいつも混んでるから、表の通りから3階まで一気に到着できる、長いエスカレーターを昇りきったあたりが待ち合わせ場所。



人通りの邪魔にならないよう、壁沿いに立って待っていると、LINEにシュールなパンダが物陰からジトーっと見ているスタンプが届いた。


ハッと顔をあげてみても、梨亜の姿はない。


「あれ?まだ来てない?」


キョロキョロすると、少し離れたところの物陰からこっちを見てニヤニヤしてる梨亜の姿を見つけた。


俺が見つけたことに気づくと、再び物陰から覗くパンダのスタンプを送ってくる。2回連続で。



俺は笑いをこらえながら、梨亜の方に近づいた。


「パンダ見つけた。」

「えへへ、見つかった。おはよ!渚くん。あ、もうおはよって時間じゃないか」


梨亜はエヘヘ、と笑った。


ピンクブラウンの髪にウェーブをつけ、左サイドの髪を耳にかけてふわりと肩に垂らしている。

服は白くてダボッとした、ふくらんだ袖のブラウスとピンクブラウンのスカート。


「あれ?髪、パーマかけたの?」

「コテ使っただけ。パーマじゃないよ」

「へえー、似合ってる。」


梨亜はスッと顔をそらして、俺と反対側にあるパン屋に興味があるような仕草をした。


左側の耳が赤く染まってる。照れてる?


(今日のために髪を巻いてくれたんだと思うと嬉しいな。)


「この上にある、オーガニック系のカフェレストランに行こうと思うんだけど…」


俺は上を指差して言った。


「アトレの上なんだ?オーガニックいいね、太らなそう」


梨亜の興味は引けたようだ。


「あ、でも今2時半だからご飯って時間じゃないかあ…。ごめんね!親に付きあう用事があって午前中つぶれちゃったから…」


俺達はアトレ内のエスカレーターで上階に昇っていく。


「問題ないよ。おやつでもいいと思うし」

「昼ごはん食べてきたばかりだから、オーガニックといえども太っちゃうかな」

「梨亜も太るとか気にするの?」

「そりゃあ気にするよー!実際太ってるし」

「まったくそういう風には見えないけど」

「渚くん目が悪いからなー」


梨亜は1段、上の段で正面を向いて立った。


後ろから見上げた耳が、また少し染まっている。

思った以上に照れ屋なのかもしれない。


(高校まで彼氏がいる感じなかったから、男に外見のことを言われるのにあまり慣れてないのかな…)


今は、どうなんだろう…

彼氏とか、いるのかな?

それとも、「いた」のかな?


そこまで踏み込んだ話は、日常のLINE会話でしていない。

なんか失礼なような気がして、聞けなかったのだ。



カフェレストランで、俺はオーガニックコーヒーとガトーショコラを、梨亜はデトックスティーと人参ケーキを頼んだ。


「ここ、ビュッフェもやってるみたいだね。食べ放題でも体に良さそうでいいな」


メニューを店員に返したあと、梨亜が言った。


「良さそうだよね。今度改めて食べに来ようか」

「渚くん近所だから、すぐランチに来れるよね。いいなあ。」

「よーし先にひとりで味見しちゃおうかな」

「その時はどんな感じだったか教えてね」

「もちろんもちろん」



俺達は運ばれてきたドリンクを飲みながら、高校時代のクラスの友達が今何をやってるかとか最近ハマってる音声サービスの話、ゲームの話など、色々な話で盛り上がった。


梨亜は学生時代から話すのが得意なタイプだったので、マンツーマンで喋っていても、どんどん引き出してもらえる感じで疲れない。


話は俺の新居についてにも及んだが、


「男の一人暮らしですって感じだよ、なにもなくて。」


と茶を濁しておいた。

なにもないのは本当だ。買った家具もまだ届いてないから、相変わらずガラーンとしている。


引き出してほしくないな、という空気をちょっとでも出すと、梨亜はそれを察して、すぐに別の話題にしてくれるので助かる。



店を出る時、会計のさいは以前の約束通り、梨亜に奢ってもらった。



店を出て、俺達はアトレ恵比寿の中のショップを見て回った後、駒沢通りから代官山にむけててくてくウネウネと横道にそれながら歩き、途中にある雑貨屋や古着屋を散策。


東急東横線の代官山駅周辺のショップをあれこれと見て回った頃には日も落ちてきて、ふたりの足もすっかり疲れていた。


「夕飯、どうしようか。代官山で食べてく?」


梨亜がきょろきょろと周りを見渡す。


「それも悪くないけど、実は予約してある店があるんだよね。」

「えっ、そうなんだ。渚くん用意周到…!」

「まあねー!まだ引っ越して間もないけど、ちょこっとリードさせてもらいます。」



俺は「代官山アドレス」の駐車場にあらかじめ車を停めておいたので、そこに梨亜を案内した。


「すご!待ち合わせ前に停めておいてくれたの?用意周到すぎるって」

「ちょっと坂を登るから疲れるかなと思って…やりすぎた?」

「ううん、ちょっとびっくりしたけど嬉しい。」


ホッ、よかった。引かれてないみたいだ。

サービス向上頑張りました!感が出すぎたかな、と心配だったけど…


(代官山まで歩いて、そのあと恵比寿まで戻るの絶対疲れるもんなあ…100%足痛くなる。)



梨亜は車のことはそんなに詳しくないようで、


「新しくてかっこいい車だねー!」


くらいの反応だったので助かった。

今の所無職の俺が持っているにしては高額すぎるから、怪しいもんな…。



車を走らせ、駒沢通りから坂を登り、恵比寿ガーデンプレイスに到着。

駐車場に入れて、車から降りた。


「おおー、ガーデンプレイスだあ。テレビで見た事あるけど来たことなかった…ここでご飯食べるの?」


梨亜は興味しんしんであたりを見回して、スマホで写真を撮ったりしている。


「うん。タイ料理屋を予約してる。」

「タイ料理大好き!あれ?言ったっけそのこと」

「前あった時、辛いものが好きだって言ってたよね、たしか。」

「言ったっけ、私…よく覚えててくれたねえ」


梨亜の顔がパアッと喜びで一杯になった。

スパイシーな料理は俺も大好きなのでワクワク。



ガーデンプレイスタワーの高層階にあるタイ料理屋で、俺達は夕食を食べた。


辛いけど辛すぎず、どれもウマい…!

夜景の眺めも良く、店内もキラキラとした装飾で夜に映える。


梨亜はスパークリングワイン、俺は運転があるからジンジャーエールで乾杯をした。


「渚くんがこんな大人っぽいお店を知ってるタイプだなんて知らなかったよ。意外な発見。」

「食いしん坊なだけだよ。」


なんてね、実際は頑張って調べただけなんだけどね。梨亜が喜びそうな店を。


「またどこか遊びにいこうね。」


ニッコリ。

はい、いただきましたー!梨亜の笑顔!

足の疲れも全部吹き飛んでいく。



─感染症がなくなってなければ、こんなゆっくりと夜の時間を使って外食できなかっただろうし…下手したら緊急事態宣言で、お店自体閉じてたかもしれないよな…



母の聖女の力のおかげで、徐々に社会の締め付けは緩和されていっている。



─帰ったらまた今日も、親の異世界体験談の続きを「なろう」にアップしなきゃ…。



せめてもの恩返しをしなければいけない。


俺はデザートの東南アジア風スイーツを口に運びながら、心に誓った。

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