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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【18】武勇伝を発表するらしい


「おおっ?これ…いけるかも!」


実家から帰った翌日、転生した親のノートパソコンのパスワードを頑張って解析していたら、ある言葉で不意にロックが解けた。


それは、俺に残してくれた親のメモ(?)


《おにわのおうちにあるらしいよ!》


がヒントとなっていた。



「Oniwaring0817」


Oniwanoouchiとか、Honyakuringとか、関係がありそうな言葉を色々試してみた結果、とうとう見つけた。


数字部分は、なんとなく俺の誕生日じゃないかな…と思っていた。勘だ。


「このノーパソ自体、俺に気づかせるために設定されて、唯一ポツンと残されてたんじゃないかなって思ってたんだよな…」


電源もコンセントにささって、いかにも見てください!って感じで充電100%だったし。


だから俺に関連する、俺だけがわかるパスワードだろうと考えた訳だが…


「庭の鳥小屋に指輪があることを気づけてなかったら、わからないようになってるのか。」


要するに、両親が異世界で得た能力のかけらを受け継ぐことができないと、見ることもできないと…


─中にはどんなデータが入ってるんだろう?


「俺も転移しちゃうとか、そういう結果になりませんように…!!」



怖くなったので、気合を入れようと冷蔵庫からコロナビールを持ってきた。


俺はこのメキシコビールが好きだ。

名前は今のご時世「損してんなあ」と思うけど。


缶ではなく、瓶のままラッパ飲みするのが大好きだ。

切ったライムの破片を瓶の口で絞って、そのまま破片を中に落とし、ちょっと酸っぱくしてグビッと飲むと、ライムの香りとビールのさっぱりした味わいがいっぺんに喉と鼻孔を通り抜け、どんな時でも夏の海辺にいるみたいな気分になれる。



ビールで勢いをつけ、ロックが外れて開いたノートパソコンの画面に視線を移す。


デスクトップ画面にはテキストデータが2つ。


片方は『Keisuke』

もう片方は『Yuko』

とタイトルがついている。


Keisuke─佳祐─父の名だ。

Yuko─由子─こっちは母の名だ。



「文章データ…?またメッセージみたいなやつか…?」


俺はコロナビールをグビーッと一気に飲み干し、父のテキストデータの方から開いてみた。



「こ、これって…まさか…」



─そこには、父が日本の日常生活から異世界に召喚されてから日本に帰るまでの全ての出来事が、克明に書き記してあった。


王族のもとで騎士をしたり、逃げ出して鑑定スキルやアイテムボックスを駆使して商人をやったり、冒険者ギルドに登録してぐんぐん頭角をあらわし、奴隷商人をやっつけて美少女たちを救い出したりしてちょっと女にモテたりする。


その後、遺跡の謎をとき神獣たちと契約を結んだり─同じ転移者であるユーコと再会したり…


最終的には、闇堕ちした召喚士が呼び出した邪神と決戦をし、一度死ぬけど母の聖女の力で再生し、再び戦い人間たちの世界を救う─



そんな感じの内容が、かなり長いテキストデータとして書かれている。

《ケイスケ》という主人公の目線で。



そして、もう一つ、《ユーコ》が主人公の方の物語はというと…


「似た流れだけど、別の目線だ…母の…」



─聖女として召喚された《ユーコ》は、病気の王妃を聖なる力で救い、王室御用達の治療士として働き始めるが、王と王子から道ならぬ求愛をされ、王室から逃げ出す。


別の国のギルドに登録し、貧しい村や窮地に陥った冒険者パーティーを聖なる力で救っているうちに「不思議な治療士がいる」という噂が広がり─勇者ケイスケと再会。


そして邪神を倒すためにケイスケと、ほか二人の仲間とともに立ち上がる。

その頃には、聖女ユーコのお腹の中には新しい命が芽生えていた。


聖女ユーコは、一度死んだ勇者ケイスケをお腹の子供と力を合わせ、愛の力で蘇らせる─


「えっ?俺協力したの?勇者再生の局面で?」


やるじゃん、俺。知らんけど…。



どちらも大変読み応えがあり、読み終えるまでかなりの時間がかかった。


異世界者の小説として読んでも純粋に楽しく、小説執筆未経験であろう両親の文章でも、話の流れに全く矛盾もなくスラスラと読める。

(実際に経験した事だからだろうか。という事は普通の小説ではなく、ドキュメンタリー小説…と考えたほうがいいのかも…?)



読み終えた時には、空が明るくなり始めていた。


「フーッ、異世界モノの長編小説二本読んで、お腹いっぱいになった気分…。ん?」


母の方の文の最後に、一文添えてある。


『ps,どっちもなろうに出してね』


と…。



は????????


なろう小説知ってるの?母よ…

マジで???

本当のことなのに公開しちゃっていいの?

本当にあったバトルの話だよ。ほんバト!


─って、これを作者の体験談ととらえる人はまずいないだろうけどね…!



俺は両親の遺言(?)通り、なろうにアカウントを作って投稿することにした。

ペンネームは…『武勇伝』でいいや。


『異世界に勇者召喚されたけど聖女の嫁ができて戻ってこれた話』

─これがケイスケサイド。


『異世界に聖女召喚されたけど勇者の恋人と戻ってこれた話』

─これがユーコサイド。


この2作を連載していこう。


「全部一気にじゃなく、少しずつ出していこう。ケイスケの話とユーコの話をそれぞれ。」


多少俺が脚色して、各登場人物との会話やコミカルなシーンなんかをつけくわえてあげよう。

全部モノローグってのも読みにくいし。


んで、話を毎話読める形に膨らまして、ちょうど良い感じに区切り、毎日連載。


結構長めの連載になれそうだ。


「新しい日課が出来たぞ。仕事と言うよりかは趣味って感じだけど…」


首をコキコキ言わせながら、俺は4本目のコロナビールを飲み干した。

時間をかけて飲んでたせいで、多少気が抜けてしまっている。


「それだけ夢中になって読んでたってことか、自分…いやあ、面白かった。面白かったよ!父さん、母さん!」


異世界につながってるわけはないだろうけど、俺はノーパソの画面に向かってそう言った。



これは色んな人に読んでみてほしい。


父と母が、この世界に─いや、向こうの世界にとも言えるかもしれないが─生きていた足跡だ。



まさに、「武勇伝」といえるだろう。


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