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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
162/162

【162】一旦イギリスに帰還してみるらしい


「お帰り、ケート!」


公爵家の応接間の扉を開けると、バザルモア王国への転移から無事戻ってきたケートが長椅子に座ってお茶を飲んでいた。


その隣には、馬車を降りるなり駆けていったユーリがちょこんと座っている。


──ケートが転移してからというものなんだか物静かだと思ってたんだが、ちゃんと戻ってこれるかどうかユーリなりに心配していたんだろうな、きっと。


「ナギサ殿!お待ちしておりました。」

「ケート、イブとお父さん──リンリー侯爵に伝えてくれたかい?俺たちのいまの現状を…。」

「はい、全て伝えました。大変安心していましたよ。ただ──」


ケートは頭をポリポリとかいた。


「吸血鬼に僕まで捕らえられていたことは、話さないでいちゃいました…すみません。父が心配しすぎるといけないから…。」


まあ、それもそうだろうな。

これからおこるかもしれない旅先での冒険や危険な戦いに、心配のあまり待ったをかけられてしまったらたまったものじゃないし。


「あ!でも、吸血鬼の棲家から女の子を見つけ出した話はしましたよ。イブ殿がぜひ直接会いたいと仰っていました。」

「俺たちとしても、長年生きてる大魔導士であるイブから助言を貰えると、助かるんだけど──」


おっと、長年生きてる、なんて、本人に聞かれたら嫌な顔されちゃうかな。


イブは今、バザルモアに閉じ込められてる形になっちゃってるんだよね。

ユーリと一緒じゃないと、東京のマンションにも帰れない訳だし。


「イブ殿からの伝言なんですが──船でソルベリーに行くことは出来るが、少なく見積もっても一ヶ月はかかってしまう。ナギサ殿のアイテムを使うとか、なにか他の手段で手早く合流できないものだろうか、とのことで…。」

「そうだな、一番早いのは……」


ケート、ユーリのスキルで、俺たちはおそらくイギリスにだったら転移して還ることができる、と思う。


沖縄の転移を考えると、神様の力を使ってもらった転移ポイントでの転移は時間を止められてる可能性があるから、来たときと同じように川口&福田と一緒に戻ったほうがいいだろう。


俺たちの間で時間のズレが発生すると、なにやら良くないことが起きるかもしれないから一応…という感じで考えてる。


そして、ケートとユーリには再びソルベリーに戻ってもらい、バザルモア王国へ国間転移。


バザルモアでイブと合流し、彼女を現実世界──東京に戻してもらい、イブは飛行機でイギリスに渡る。


そして俺たちとロンドンで合流する──


「いいわね!その案。イブは私達と違って日本でのパスポートを持ってるから、飛行機のチケットさえ取れればすぐ来れるものね。」

「国と国の間の転移スキルが全員対象だったら簡単なんだけど、ケートとユーリしかできないから…イブには日本での姿になってもらって、飛行機を利用してもらうしかないな。」

「ユーリ、飛行機は高速船より早いのか?」


ケートが質問した。

ユーリは沖縄から東京まで飛行機に乗ったことがあるが、ケートはまだ元世界の高速移動の乗り物は車しか乗ったことがなかったっけ。


「とても早いのよ。日本からイギリス──あちらの世界でのソルベリーの位置の国までは、1日もかからないで到着できるわ。」

「1日…!すごいな。それならすぐにでも行動に移さなきゃ。……ん?」


ケートは、俺達の一番端っこで小さくなって腰掛けている吉乃くんに気づいた。


「彼は、日本からの転移者…ですよね?」


目線があった吉乃くんは、ペコリとお辞儀をした。

この屋敷と、ケートから発せられる貴族オーラにあてられてあきらかに萎縮しているようだ。額に汗が滲んでいる。


「そうなんだ。まだ日本から転移してきて半年かそこらの高校生らしいから、日本に還してあげようと思ってさ。本人も家に帰りたいみたいだし……ね、吉乃くん。」


吉乃くんは「???」が浮かんだ顔で、汗をたくさんかきながら俺を見ている。


「あの、すみません…今話してたこと、最後の「ね、吉野くん」しかわからなかったっす…。すみません、俺、店で使う異世界語くらいしかまだ覚えてなくて…。」

「「「ええっ!」」」


今や俺たち日本人メンバーは全員、自動翻訳の指輪をつけているから意識しなくなってたけど…もしかしてケートと話す時も、他の異世界人に対して話す時と同じように、傍目には異世界語を喋ってることになってるのかな、俺。


自動翻訳は便利だけど、こういう時逆に分かりづらいな。


じゃあもしかして…


「オリビア、俺たちが話してる言葉、わからない時あったりしてた?」

「わらわに話しかけてるときのことばはわかるぞえ」

「え、じゃあ俺たちだけで話してるのは──」

「なにをいってるかさっぱりわからぬときばかりじゃ。でもフクダはわらわにむかって、わかることばで話しかけてくれる。」


オリビアは、福田の方をチラッと見て、頬を少し赤らめた。


そっか!だから福田にやたらとなついてるんだ。

孤独を感じてたオリビアに、唯一話しかけてあげてた「子守担当」福田。


彼女の目に映った福田は、すごく頼りがいがある、唯一の存在に見えただろうな。



「ナギサ殿、彼を還すのは少し待っていただけないだろうか。せめて、イブ殿と合流して、お知恵を頂いてからで──」


ケートが心配そうな顔で言ってきた。


「ああ、もちろん。今連れて帰っても日本には戻れないだろうから、どのみち困ったことになる。俺たちの世界は、国と国を行き来するときに関所を通ってハンコを貰わないといけない決まりがあるんだ。」

「へえ…!転移スキルのある者にとっては不便ですね。」

「ハハ…まあ、転移できる人なんていない事前提で法律が作られてるからね。」

「でも、犯罪者が簡単に他の国に逃げたり、悪いものを他国に持ちこんだりできないから、そういう意味では便利ですね。」


そう考えると、感染症の流行で渡航禁止、出入国禁止になっていた状態なんてのは、人間全員が「悪いものを持ち込む人」になる可能性があったってことなわけだよな。


ああ、なくなってくれてよかった、ウィルス…。


お互い同士、犯罪を犯したわけでもないのに疑心暗鬼になる状態なんて、長く続いたらたまったもんじゃないもんな。




ケートとユーリは、公爵夫人であるケートの姉・ソフィアに再び転移してくる旨を伝えた。

そして、俺たちが戻ってくるまでの二、三日間、吉乃くんとオリビアが生活するための部屋を与えてあげてもらえないかと話した。


不安そうな顔をしている吉乃くんに川口が近寄ると、自分の指にはまってる翻訳の指輪を吉乃くんにはめてやる。すると──


「もちろん、喜んでゲストルームをご用意させていただきますわ!異世界からのお客様なら、夫も色々とお話を聞きたいことでしょうし。」

「ひゃああっ…」


吉乃くんが変な声を出した。


「な、渚さん、言葉、わかるっす!」

「それ翻訳の指輪だから、全部日本語にしてくれるんで便利だよ。」


俺は川口の方を振り返り、無言で親指をあげてグッジョブ!を伝えた。



ソフィアは吉乃くんに近寄り、聖母の微笑みで優しく微笑む。


「吉乃さん、異世界に比べるとなにもなくて退屈かもしれませんが、しばらくの間ご実家のようにくつろいでくださいね。」

「退屈だなんてそんな!こ、こんな豪華な屋敷、来たことないから緊張するけど、どうぞよろしくお願いします!」


吉乃くんは、ソフィアに深々と頭を下げた。


「オリビア様も、滞在中は私達を実の親のように頼ってくださいね。もしかしたら恐れ多い存在の方かもしれませんが、いまは娘のように可愛がらせていただきますわ。」

「うむ、よろしくたのむ…!」



ソフィアの慈愛に満ちた微笑みを見て安心したので、俺たちは早速、転移の準備にかかることにした。



ユーリ、ケートとともに手と手をつなぎ、光に、包まれていく。


「ああ、一緒だと安心…」


ユーリがつぶやく。


「心配させてごめん。これからはできる限り、一緒に飛ぼうね。」


ケートが、ユーリに向かってニコッと笑った。



消える瞬間、幸せそうなユーリの顔と、ちょっと心配そうな表情で福田を見つめるオリビアの顔が目に入った。


うーん青春してるゥ……!



「イギリスの、元の地点へ転移!」



俺たちの体は強い光に包まれ、そして消えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~

★読み専活動をしたいので、連載をしばらく休止します。

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