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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
161/162

【161】福田の好みのタイプは……らしい


「聖女様、ナギサ様とご一行様、こちらにいらっしゃったんですね。」


オープンテラスカフェでお茶を飲んでる俺たちに、公爵家の馬車の御者の一人が声をかけてきた。


「うどん店の方にいらっしゃらなかったので──」

「あっ!もう3時間超えてましたか、すみません。」

「よろしいんですよ。この街の中で皆様を見つけるのは難しくない事ですので。」


御者のお兄さんはニコッと微笑んでそう言った。


えっ、俺たち、そんなに目立つ感じなのかなあ……やっぱり、街なかだからって遠慮なく現代服で歩いちゃってるからかな。

それとも、いかにも日本人ですって顔がこんなに何人もいるから…?


 


俺たちは揃って馬車に乗り、公爵家へと向かった。


吉乃くんについては、御者の人には仲間になったとだけ言っておいたら大丈夫だったけど、公爵に会わせた時にはちゃんと説明しなきゃな。

日本に帰してあげたいという気持ちを。



「さっきの話、中断しちゃったけど…なんだったの?渚。」


馬車の中で、ユーリが聞いてきた。


「うん…まあ、ユーリに隠すのも変だからもうこのさい言っちゃうけど──川口と福田は俺の異次元ポケット経由でソルベリーに運んでこれたんだ。」

「なにそれ?!ポケットに人間を入れて大丈夫なの?」

「生身だと無理だと思うけど、容れ物に入れたらスポッと入っちゃった。」

「容れ物?」

「そーなんだぁ。オレたち、渚の車に乗ってたら転移の時に車ごとしまわれちゃってさあ〜」


福田がケラケラと笑う。


「ウム。恵比寿のマンションの駐車場で、再び車ごと取り出されるのをジッと待っていたんだ。薄暗い中、二人で。」

「あれさー、誰か住人に通りかかられたら怪しまれたよね、絶対。何アイツら運転もしないでじっとしてんだーってね。まあ短時間だったからなんともなかったけど……」

「ああ、もし呼び出されるまで何時間もかかるようだったらどうしようかと悩んだぞ。オシッコしにいってる間に車が消え失せたらどうしよう、高速道路でひどい渋滞に巻き込まれた時みたいにペットボトルかなんかにした方がいいのだろうか、と──」


渋滞時にそんな事してんのかよ、川口!

よかったー、すぐ呼べて。

たとえこぼさなくても、後部座席でそんな事されるのはちょっとなー…。


もし次に車ごとしまっておくことがあるとしたらマンションの駐車場の車じゃなくて、文京区にレンタルしてある個人用のガレージに停めてあるクロカン車の方にしよう。


そこなら、いくら中でじっとしてても誰かに見られることはない。



「ねえ渚、じゃああなたの行く先々にいつでも誰かを連れていったり、マンションに帰したりできるってことなのね?」

「あ、ああ……。」


俺は吉乃くんをちらっと見た。

異次元ポケットについて話してないからか、よくわかってない顔をしている。


「よかった!じゃあ私もケートも、パスポートがなくても恵比寿に直で行けるのね。安心したあ〜!」


ユーリは手を叩いて喜んでいる。


「ケートと一緒なら、スキルで他国にも転移できるんじゃないのか?」

「そうは聞いてたけど、日本にまで行けるかどうかはまだわからないじゃない。もし戻れてもイギリスにしか行けないならまいっちゃうから…。」

「ここからバザルモアには転移できるだろうから、バザルモアから異世界転移すれば日本に行けるんじゃないかな。」

「行けるかしら。」

「バザルモアは日本と、ソルベリーはイギリスと繋がってる訳だから、行けそうな気がするけど…。」



どうどう、と馬を止まらせてる御者の声が聞こえてきて、馬車がストップした。

話してるうちに、いつの間にか公爵家へ着いたようだ。



使用人が嬉しそうに駆け寄ってきて、馬車の扉を開いてくれる。

なにか報告があるようだ。


「聖女様、ケート様がお戻りになられております。」

「無事戻ってこれたのね!」


ユーリは馬車を降りるなり、タタタ…と走って俺達より先に館の中に入っていった。


俺たちも、あとから続く。

吉乃くんとオリビアも一緒だ。



「ユーリちゃん、すっかり『カノジョ』って感じになってるよねぇ〜。ケートくん男になるって言ってたから、結ばれちゃうのかなあ」


後ろ姿を見送りながら、福田が言う。


うーん…

どちらも今の所は女性だし、かといって前世は俺の両親なわけだし、二重の意味でなんだか想像の領域をこえてる現実…。



「あーっ、ちょっと好みだったから残念だなあ〜!なんてね。」

「なんだ福田、ユーリが好みだったのか?」


それは気づかなかった。

マジか…金髪碧眼美少女に見えて中身は半分マイ・マザーだぞ…福田。


「違う違う!ケートくんの方だよぉ〜」


え。

それはもっと気づかなかったぞ。


「うーむそうか、福田はぼくっ娘が好きだったか。なんとなくわからんでもない…」


川口が顎に手をあてて、うんうんと納得している。

エエェ…福田にそんな兆候あったっけ?いままでに。


川口の中で何のカンが働いてんの。


「でもさあ、ユーリちゃんとケートくんはいわばニコイチみたいなもんじゃん?前世から聖女と勇者カップルなわけだし。ここはあきらめだよねえ〜…」


残念そうに茶髪の前髪をかきあげる福田。

うん、あの。

ユーリならまだしも、ケートは俺にとってはマイファザーなわけで。

諦めてくれると違和感少なくていい…かな。



「ふくだにはわらわがいるからいいのじゃ…」


ん?

オリビアが急に、福田のシャツを摘んでなんか言った。


「ふくだはわらわのおむこさんになるウンメイなのじゃ!だから安心せい」


ニコーっと笑うオリビア。


あ、この子初めて満面の笑顔見せたよ。かわいい。


「えっと、オリビアちゃんはまだ小さいからね〜、いつかね!」

「約束じゃぞ。」



ロリコンの気がみじんもない福田は適当なことを言って流したが、


──オイオイ、こういうのってしっかり覚えてたりするもんなんじゃね?


それにオリビア、ちっさくても幼児って訳じゃないぞ。

立派に初恋できる年齢だぞ。

世間知らずな育ちだからかわからないけど、ちょっと幼く感じるからってナメてるといかんぞ。



今の時点で福田24歳、オリビア10歳くらい。


福田が三十代の頃には、オヤジなんか不釣り合いなくらいの美女に育ってるんだろうな、きっと。


そんな年頃になったオリビアに迫られたら、穏やかではいられないんじゃあないか?!



俺自身は年上専門主義なんだけど、その日の事を考えるとなんだかちょっと羨ましいような気がした…くそう!

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