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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
160/162

【160】アフタヌーンティーで閃いたらしい


ソルベリーの富裕層用の街をひと通り見た俺たちは、ガイド役を買って出てくれている吉乃くんに


「庶民の繁華街は行ったことある?」


と聞いてみた。


「勿論ありますよ!でも僕はこっちの言葉をまだあまり話せないんで、店長にくっついてではありますが…」

「どんな感じだった?治安とか…」

「ああ、全然問題ないっすよ!庶民の人たちの暮らしの方がむしろ、日本にいる時の生活に近いかもしれないっす。」

「うまい飯、あるか?」


うどんはもう消化してしまったのか、川口が聞いてきた。

俺も、腹が減ってるわけじゃないけど、こっちの普通の人が何を食べてるのかはちょっと気になる。


「ありますよ!ただちょっと、ここからだと距離があるっす。地下鉄の駅で2つくらい…歩いていけなくはないんですが。」


公爵家の迎えの馬車が来るまで、あともう1時間を切ってる。

うーん、さすがに無理か。


「ソルベリーには地下鉄まで通ってるの?」

「あ、いえ日本なら、の例えっす。こっちはまだ馬車文化ですよ。キックボードは転移者の案で開発されたみたいですが、舗装されてない床との相性が悪いので、建物の中で使うくらいしかできないみたいっす。」


自転車やバイクはまだなのか。

転移者の誰も仕組みがわからなかったのかな?

まあ俺もよくわかってないけど──考えてみると、元世界の文化は「仕組みはわからないけど便利に使ってる」って物ばかりだ。


開発してくれた先人への感謝も特になく、そこにあるから当たり前のように使う、ってのを俺たち現代人は赤ん坊の頃から日常的にしている。


そう考えると、テレビもプレステも電子レンジもスマホも──どれも魔法と変わらないな。




俺たちは、富裕層の街のオープンテラスカフェに寄り、時間をつぶすことにした。


煉瓦造りの立派な建物で、道に面した壁が一面ガラスの扉になっており、それを開いてオープンテラスにしているようだ。

店の外にも中にもテーブル席がある。

ソルベリーは気温が低いようなので、冬が来たら屋内席だけになるのかもしれない。



いかにも高級店といった感じのキチンとした身なりの給仕に、人数分のアフタヌーンティーセットを注文した。


皿が3段の層になっているケーキスタンドには、格段ごとに小さめのサイズのスコーンやケーキ、サンドイッチ、フルーツなどが上品に盛り付けられている。

イギリス名物のお茶請け(?)だ。


果たしてこちらの世界にイギリス式のお茶のやり方が偶然発生したのか、それともイギリス人の異世界転移者が教えて定着したものなのかわからないが。

──サンドイッチだって、イギリスのサンドイッチ伯爵が発明したものだって知られてるけど、サンドイッチ型の食べ方は本当はもっと大昔からあったらしいし、人間は自然に同じような食べかたを思いつくものなのかもしれない。


お茶はラベンダーとカモミール、ミントが混ざった香りのするハーブティー。

紅茶の茶葉はソルベリーには存在しないのかな…?


ちなみに値段は一人あたり30ソル。日本円にして3千円。

ウェスティンホテルのアフタヌーンティーセットが約6千円だったから、その半額くらいか。


バザルモアの市場の価格に比べると異常に高く感じるが、富裕層向けの店だから特別なのかもしれない。




「吉乃くん、異世界にはコーヒーってないの〜?」


福田が運ばれてきたハーブティーを飲みながら聞いた。


「あー、それ僕も店長に聞いたことがあるんですけど、ないみたいっすね。コーヒー豆が見つかってないんじゃないでしょうか。」

「本来暑い地方で採れるもんだもんな。バザルモアでないならソルベリーでも飲めないだろう。…しかし、甘いもん食うとスタバ行きたくなるよなあ。」


川口がちょっと残念そうに呟きながら、サンドイッチを口に放り込んだ。


「スタバ…行きたいっすね。日本に帰れたら行けるんですね!」

「あはは、イギリスでも行けるけどね。一緒に帰れるとしても、帰還地点がイギリスになる可能性・大なんで、そこからが問題なんだよなあ。」

「あの…ひとつ疑問があるんだけど、いいかしら。」


ユーリが小さく手を上げて、言った。

見ると甘味の皿はすっかり食べ尽くしている。早い。


「渚がソルベリーに転移してくるとき、沖縄で起きた転移みたいなことがイギリスでもやれたって聞いたけど…」

「うん。」


ユーリにはイギリスのストーンヘンジで転移が起きて、ソルベリーに来れたことはざっくりと話した。


沖縄の時みたいに、ユーリが命の危険にさらされたことを神が気づいてくれたから転移できたんじゃないかな、などと互いに推測はしたんだけど──


「川口くんと福田くんもその時一緒に転移できたから、ここにいるのよね?」

「そりゃもちろん…。」

「じゃあ、勇者の血族以外の人でも転移できるんじゃないかしら…?」


ハッ…

そうだ!そうだった。


正確には、川口と福田は転移したんじゃない。


「二人は──転移じゃなく、俺が【取り出した】んだった。」

「え?どういうことなの?」


彼らは、車に入ったまま俺の異次元ポケットに【収納】されたんだった。

それを車ごと出しただけ。


だから、


イギリス→東京のマンションの駐車場→ソルベリー


って順に移動したってわけで──



待てよ待てよ。

そうだとしたら、吉乃くんをパスポートなんか関係なく東京に返してあげることができるんじゃないか?!


彼に、車に乗った上で俺の腹に入ってもらいさえすれば──


それどころか店長や、この国にいる他の転移者の人も全員、東京にだったら戻してあげれる。



そこまで考えて、突然不安が襲ってきてしまった。



果たして、吉乃くんや他の転移者の人たちはこの世界のことを隠し通せるだろうか。


家族や警察に問い詰められて、ペラペラと話してしまうんじゃないか?



──しかし喋ったところで、ショックで少しおかしくなってしまったんじゃないかと心配されるのがオチだろうけど……それもそれで、やはりその後が心配だ。



「どうしたの?渚。怖い顔して…」


ユーリが急に黙ってしまった俺の顔を覗き込んで、心配そうにしている。



今、この発案を吉乃くんに言ってしまっていいのか。まずいのか。



神様、俺はどうしたらいい?

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