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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
155/162

【155】異世界↔異国間の転移はできるのか


「なんと、その若さで意中の人がいるとは。隅に置けないな、ケートも」

「それも聖女様の生まれ変わりの方とだなんて、なんて誇らしいことでしょう。」 


公爵夫妻はにわかに嬉しそうになり、ケートとユーリを祝福した。



ケート、かなり男っぽくなったとはいえ、リンリー侯爵家の末の妹…なんだよね?


女の子と結婚する!って家族に宣言したようなものなんだけど、そこらへんは特に問題なしで誰も突っ込まないんだな。この世界では。


──いや、もしかしたら俺達の住む元世界でも現在だと同性同士で結婚できる国は沢山あるから、先進国の中でいちいち気にするのはいつの間にやら日本だけ…ってなってたらどうしよう。

世界の中で取り残された気分になってしまう。



そんな俺の心配をよそに、ユーリはケートの隣に座らされ、公爵夫妻に

「よろしくおねがいします」

的な挨拶を交わす状況になって、和気あいあいとしている。


しかしまあ、親の恋愛から結婚までの段取りをイチから見せられているようで、息子としてはぶっちゃけなんだかムズムズするぞ。



ふと横を見ると、川口はユーリたちの光景をまるでテレビでも見るようにポカーンと眺めながら、カスタードをてんこ盛りに塗ったビスケットを口に放り込んでいる。


そして、福田はというと──


「このクリーム美味しいねぇ〜!バターとカスタードの間って感じだなあ」

「クロテッドというクリームじゃ。」

「へえ〜!オレの世界にもあるのかなあ〜」


な、なんかオリビアとおやつ談義してる…?!

まあいっか、子守は奴にまかせとこう。

あの柔和なトボけた雰囲気が、子供には楽に感じるかもしれない。




「──さて、その少女についての話なのだが…。」


お茶を一通り飲み終えた頃、公爵が厳かな雰囲気で話をし始めた。


「お父上の名前がヘンリー・ソルベリーとお聞きしたが、確かですかな?お嬢さん…」

「そうじゃ」

「たしかに、この国の王家にヘンリー・ソルベリーという人物はいる。いや、いた、と表現すべきか。」


えっ、どういうことだ。

お父さん、もう亡くなってるとか…?


公爵は、ひと呼吸ついてから


「ヘンリー・ソルベリー元国王は、約100年ほど前に崩御されている」


と言った。



──なんだって?


それじゃあこの子の言ってる事がもしデタラメじゃなければ…



「ヘンリーおとうさま…」


ハッ、と気づいて、オリビアを見た。

ショックを受けてやしないだろうか。


「──ほうぎょ、ってなんじゃ?」


俺たちは盛大にズッコケた。


いや、吉本新喜劇じゃないから、全員実際はコケたりしてないクールそのものの外見だけど、なんというか精神的表現として。


「えっとねえ、ヘンリー王はお亡くなりになったってことだよぉ、オリビアちゃん…」

「おなくなり…?」


オリビアは、大きな緑色の瞳をキョトンと開いてケートを見ている。


「ずっと前に死んじゃったってこと…」

「──!!」


これにはオリビアも理解ができたようだ。

大きく目を見開いて、事実を受け止められず混乱しているのが見て取れる。


「嘘じゃ…」

「オリビアちゃん?」

「嘘じゃ嘘じゃ!お城を出る前、父上から頭をナデナデしてもらったのだぞ!死んでなんかいない!」


涙ぐむオリビアの頭を、なだめるように福田が撫でてあげている。


「お前たちはわらわを騙してるんじゃ…うう、ヒック…」


オリビアの涙につられ、涙もろい福田もホロリときているようだ。

頭をしきりにナデナデしてあげている。



「もし本当に姫君だという話なら、吸血鬼の館に、子供の姿のまま100年以上閉じ込められてたってことなのか…?!考えられん。」


公爵は額に手を当て、どう対処しようか思索している様子だ。


「でも確かに……」


ソフィアは、オリビアの姿をじっと見た。


「この少女のドレスは、数少ない肖像画で描かれている昔のソルベリーのスタイル。歴史の本に出てくるような作りをしていますわ。たとえ王族でも、現代の親が子供の普段着のためにこれを着せるとは考えられませんわ。」



そうか、俺たち日本人から見たら、『異世界好み』のせいでか時代はバラバラながらも、みんなどこかレトロクラシックな服を着ているように見えるんだけど──侯爵家や公爵家の人たちから見ても「更に古いお召し物」にあたるんだな、オリビアのクラシカルなドレスは。



吸血鬼は、なぜこの子の血を吸わず、長い間そのままにしておいたんだろうか?


情が移った?

うーん、そんな人間らしい感情があるとは思えない奴だったな。


影に飲まれて真っ黒の、ダンジョンの魔物と変わらないような奴だった。

喋れるし、強かったけど…


訳があって残していたとしたら、その訳は何…?



そう考えると、王族の人だろうからすぐ王城に連れて行こう、という気持ちが鈍るのはわかる。


一見あどけない顔をしているが、実は魔物の手に堕ちた悪しき存在だったら──

姫の姿を借りた、偽物だったら──


国王と対面した途端、本性を表したら──?



対応に迷って汗をかいてる公爵に、俺からの提案をする事にした。


「公爵、王城で100年以上前、ヘンリー国王の時代に、幼くして死亡したことにされている令嬢がいないかどうか、調べていただくのはできますでしょうか?」

「あ、ああ。それならばすぐにでも。」

「自分はオリビアを、前の大戦で活躍した大魔道士・イブに会わせて、判断を伺おうと考えています。」


悪しき心を持つ存在かどうかは、ちょっと俺たちだけだと判断ができない。


ここは、魔術の専門家であり人生経験も豊富なイブに相談するのが一番だろう。


「ケート、バザルモアへは転移できるよね?」

「はい。」

「じゃあイブの元へ行って、ソルベリーに来てもらうように頼んでもらえるだろうか。そもそも俺たちは暫くの間消えてしまった事になってるから、リンリー侯爵もイブも心配してるかもしれない。」

「わかりました!父上にも、ここまでの出来事を話しておきますね。」


ケートは急いで立ち上がった。


「一人で大丈夫…?私も一緒に──」


心配そうな顔で見つめるユーリに、


「大丈夫だよ、ユーリ。バザルモアの王城と僕の家に直接飛ぶだけだから。危険な敵はいない。それより、君はここに残ってナギサ殿たちの転移の手助けをして差し上げてくれないか。」

「あ…そ、そうよね。私がいないとみんな転移できないものね。」


ケートはユーリの頭にポン、と手を置いて微笑んだ。

励ましているつもりなのだろう。

クッ、イケメン的行動を自然にできる奴だな……!



「それでは姉上、義兄上、しばし失礼をば。」


そう言うと、ケートは目を瞑り、光とともにバザルモアへと転移していった。




さて──俺たちは、なんだけど。

沖縄のときの感じで考えると、だ。


もしかしてこれは、勇者と聖女の危機を救うため、神に時間を止めて転移された可能性がある。


そうなると、次に元世界に戻ったら、また来ることができるかどうかわからない。


果たしてユーリのスキルで戻れたとしても、そこはイギリス。


彼女はパスポートも何も持っていないわけだ。

沖縄の国内旅行とは訳が違う。



イギリスから異世界転移スキルを使えば、自動的にソルベリーに来ることになるのかどうか。



イブが転移魔法アイテムの実験をした時は、


ソルベリー→イギリス→ソルベリー


だったはずだから、理論上できるのではないか。



うーん、こわい。


しかし、もし時間の流れがもし止められているのだとしたら、正規の時間に戻さないといけないし…



ケートがバザルモアから戻ってくるまでの間、ちょっとみんなで話し合ってみよう。

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