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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
149/162

【149】テレレレッテレー!通り抜け額縁!


木立を抜けて、城まで真っ直ぐ。



「なあ渚よ、ソルベリーってバザルモアより発展してる国なんだろ?それにしちゃあ…」


川口が窓から見える風景を胡散臭げな目で見て言った。


「…人の気配、なさすぎねぇか?」



それは俺も感じていた。


大きな城があるならば必ず城周辺は城下町になっていて、そこから一歩外に出ても、たいていは城を囲むようにして農村地帯が広がっている。


村という、素朴ながらも人の気配がする地域があるはずだ。


いや、考えてみれば最初に降り立ったところの辺だって城がはっきり見えるわけだから、なんらかの農家、または牧場があってもいいはずだ。


「なんでなんにもねえの?」

「林の中に朽ちた空き家みたいなのはあったけど…ハイ着いたー!お城!」



ズーン……


重たくそびえる石作りの古城。

これは…もしや…


「廃墟…いや、廃城──?」

「ウーム、醸し出してる雰囲気が重い…悪魔か吸血鬼が住んでそうだぞ」

「やだなぁ〜、早く離れよ!ここ不気味だよ〜」


扉は固く閉ざされている。


開くかな?と思い、大きな扉に触れてみたら、その瞬間──



『たす…けて…』



耳ではなく、頭の中に声が響いた。


この声は──間違いない、ユーリ!


「ここにいる!」


俺は、巨大な木の扉をドン!と叩いた。


「どうしたんだ、渚。」

「声がしたんだ!ユーリの!」

「「なんだって!」」


通り抜けられる場所はないだろうか。

勝手口とか、裏門とか──


車で城の周りを一周してみたが、あるにはあれどどれも固く閉ざされていた。


「な、なんかないの渚、中に入れる不思議アイテムとかさあ。」

「ほら、あのどこにでも行けるドアはどうだ?!」

「駄目だ。あれはダンジョンの中でしか使えない。」


似たようなのないか、似たようなの…


ホラ、どこにでも行けるドアがあるなら、同じドラちゃん縛りで──



効果の程を頭に浮かべながら腹ポケットを探っていたら、ふっと手に吸い付いてくる道具があった。


これは──この触り心地は


俺は腹からテレレレッテレー!と取り出した。

テレレレッテレーは雰囲気であり、今回は口で言ってる訳ではない。


「通り抜けられる…フープ、じゃなかった、額縁ー!」


たぶん。

たぶんだけど。


「え?マジで?そんなん持ってたの?渚。」

「いや、使ったことないからわからないけど…。」

「使ったことないのになんでわかるんだ?」


んー。

この、ポケットに手を入れると頭で思ったイメージのアイテムがスッと手に吸い付いてくる感覚…。


説明しても伝わりにくいだろうな〜。


「まあ、貼ってみようよとりあえず!」



俺は、(たぶん)通り抜けができる(と思われる)額縁を、固く閉ざされた大きな木の扉に貼り付けた。


額縁は、両面テープもなにもつけてないのにピターッと扉に貼り付いて、なんと、向こう側が透けて見えるようになった。


「えっ、これ通り抜けられるんじゃね?」


福田が額縁の中を覗き込んでみると、普通に穴が開いてるように頭が縁の向こう側まで行く。


「マジで通り抜けれるよこれ〜!どーなってんだ?」


しかし、扉の厚みがかなりあるのと、俺が貼り付けた位置が高いのとで、乗り越えようとしてもかなりやり辛い。


「ね、渚。この額縁さあ、下の方には貼り直せないの?高さ的には頑張れないこともないんたけど、狭いからキツイ…」


やっぱ目線の高さだとちょっと高かったか。

額縁の先入観で、なんとなくそれくらいの位置につい貼ってしまった。

背の高い福田でもやりにくいなら、俺だとなおさら無理だろう。


俺は額縁を両手で持って「外れろ!」と念じながら引っ張ってみたら、スポン!という感じで壁から離れた。


もちろん、その部分の壁は元に戻って──


「戻ってなあぁァァァい!!」


ヤッッッベ!!!!


人様の城の扉に穴あけちった!!!!


「ど、ど、どうしよう、これ…」


何百年も経ってるような荘厳な扉に、ぽっかりとレーザーカッターで切ったような四角い穴。


「だ、大丈夫だ!廃墟だきっと!」


川口が俺の背中をバンバン叩いて励まして(?)きた。


「そーそー、だってユーリちゃんの助けてって声が聞こえたんだろー?」


福田も、俺の方を抱いて励ましてくれてるが、額は汗でビッシリだ。


「そうだ!だからここにいるのは悪人か化け物だから、扉くらい穴開けてもかまわん!な!」


──それはそれで恐ろしいんだけど、メチャクチャ。



穴の事は後で考えるとして…(もしかしたら修繕できる魔道具があるかもしれないし)

俺は、額縁を扉の一番下に貼った。


これなら、しゃがめば入れる。



俺達は、こうして怪しい古城への不法侵入罪(?)を無事果たせた。




城内は人が普通に暮らしてたらどうしよう…と思ったが、その不安は無駄だったようだ。


廃墟丸出しの古ぼけ方で、人の住んでる気配は欠片もない。

高いロビーの天井は蜘蛛の巣がかかり、どこから入ったかコウモリすら飛んでいる。



「城内を探そう。閉まってて入れない所はもうこのさい、額縁で通り抜けていこう。」

「渚、武器と盾を出してくれ。中は魔物の巣窟かもしれない。」


俺は川口に腹ポケットに一時入れておいた剣と盾を渡し、自分も銃を抜いて手に持った。

何が飛び出てくるかわからないからな。



俺たちは慎重な足取りで、廃城内部を探索し始めた。



正直こっえー!

こんなの、イブに特訓つけてもらう前だったら絶対無理だったぜ、きっと──

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