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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
146/162

【146】ストーンヘンジで祈るらしい


翌朝、俺たちは早起きしてホテルの朝飯を食べ、チェックアウトして駅へ向かった。



パディントンからウォータールー駅までは電車で20分もかからないくらい。


移動に旅行用トランクが邪魔じゃないかって?


もちろん、俺の腹の異次元ポケットに入れてある。

パスポート、スマホ、財布など、必要なものだけそれぞれ普段使いの鞄に入れて持ち歩いてるのだ。



大荷物がないだけで、山手線に乗ってるみたいな気楽な気分になれるし、階段も楽だ。




ウォータールー駅もクラシカルな雰囲気漂うしゃれた造りをしていた。


俺たちは、ソールズベリーにむかう特急のチケットをカウンターで買った。

1時間に一本なようだが運良くちょうど来るみたいなので、それに飛び乗ることにする。




ロンドンを出て少し経つと、窓からの風景はすぐに郊外っぽい雰囲気になり、どんどん緑が増えていった。


東京近郊よりも、都市部から田舎っぽくなるまでの距離が短いかもしれない。



1時間半経ったころ、電車はソールズベリー駅についた。


他にも何人か降車する人たちがいる。観光客っぽい風体だ。

──きっと俺たちと同じで、ストーンヘンジ目当ての外国人なんだろう。


「わかんなくなっても、あの人たちについていけばなんとかなりそうな。」

「混んでないといいよね〜、現地…どうする?人がみっしりいたら。転移できないじゃん…」

「渚の車で一足お先に──って訳にゃいけないか。」

「日本や異世界だったらそれもできるんだけど、国際免許持ってないから、見つかったらアウトだよ」


って、車も海外の公道で使う場合、なにか届けがいるよね絶対。

日本国内と同じナンバープレートでいいわけないだろうし。



駅を出ると、ストーンヘンジ行きのバス乗り場はすぐ見つかった。

(乗り場にストーンヘンジの写真が掲示されていたのだ)


バスのチケットと入場代がセットになってるらしい。


「これならタクシーで行ってあとでチケットも買うってのより、楽かもしれないね。」

「席もまだあいてるみたいだし、乗っちゃお乗っちゃお〜」



暫く後、満席にならずにバスは発進して、俺たちをソールズベリー平原へと運んでくれた。


窓の外の風景はどんどん建物がなくなっていき、最終的には農家もなくなった。

ひたすらに草。


いや、(笑)って意味じゃなくて、ガチの草、草、草。


「うおお、こんななにもない草原、マインクラフトでしか見たことないぞ。」

「北海道をバイクで横断とかしたら見れるのかもしれないけどさぁ、そんな雰囲気だよね〜!開放的!」




お土産物屋らしい小屋があるバス停で、俺たちは降ろされた。


小屋から少し離れた所に石柱がいくつか建っているのが見える。

あれがストーンヘンジだ…!



─フワッ─


俺の体の中を、何かが通過していった感覚がした。

沖縄の時のような嫌な感じじゃない。


そう、例えて言うなら──


「ユーリに回復のスキルを使ってもらった時みたいな感じ…?」

「おっ、渚もそれ、感じたのか?!」


川口が、驚いた顔をして俺を見た。


「マジで?!オレも感じてたよ〜!それ…」


福田もどうやら、同じ感触があったらしい。



よくわかんないけど、


バスに乗る時まではユーリたちが転移した事も、どこか別の世界の話みたいに感じていたけど、



ここにはなんか──



「なんか、あるよね…!」


川口と福田は、大きく頷いて同意した。



俺達はお土産屋にはよらず、なるたけ誰とも接触しないようにして、サーッとストーンヘンジの遺跡に近づいていった。



沖縄の辺戸岬での転移を思い出して、独特のモヤモヤとするような感覚をより強く感じるほうへと足を運ばせていく。


自分自身が探知機になったつもりで、遺跡周辺で最もモヤるポイントを探すのだ。


「どうだ?渚。」

「んー、まだいける気がする…。」


額に手を当て、少しずつ進む。


「ストーンヘンジのど真ん中、とかじゃねーだろーな…」


遺跡の周りは簡単な柵で囲われて、観光客が石に触れないようにしてある。


立入禁止にしておかないと、かの有名なパルテノン神殿同様に削ったり落書きをしたりする不届き者がいるのかもしれない。



「柵をこえてズケズケ入るのは…ちょっと無理な雰囲気だよね。」


遺跡の周りは色々な国の観光客が写真や動画を撮って、取り囲んでいる。


中にはレポーター気取りの喋りをして撮影してる奴もいるが、あれは間違いなくYouTube配信用だろう。



うまい具合に、より強いモヤモヤを感じる方向は遺跡より少し離れたあたりだった。


「そういえばイブが実験中に短時間だけ転移したときも、遺跡の中とかじゃなかったっぽいもんね。」

「ウム、周りを見渡したら遺跡が見えたから、近づいてみたら売店の小屋があって──みたいなことを言っていた気がするぞ。」

「それくらいの距離、ってことだよねえ。今いる辺りみたいな……。」



そう、まさにモヤモヤは最高潮。

なんというか、今にもピュッと転移しちゃいそうなくらいだ。


なのに、祈っても祈っても、転移が始まらない──



「うーん、おかしいな。ポイントが違うのか、それとも俺一人だとやっぱだめなのか…」

「沖縄の時の転移は特別だったってことか?」

「そうなのかもしれない…」



俺たちはしばらくこの辺りをウロウロしてねばってみることにした。



「北の神様、頼むよ。気づいてくれ…!」

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