表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
141/162

【141】おにわのおうちにまだ何かあったらしい


埼玉の実家を、本来の持ち主である父・勇者(今はケートと融合)と母・聖女(今はユーリと融合)とともに小一時間ほど散策。



一階の庭に面した物置部屋を見ていた時、


「あそこに──」


と、ケートが庭を見て声を出した。


「どこ?」


と、俺が聞くと、黙って隅っこの鳥小屋を指さす。



──あそこは『おにわのおうちにあるらしい』という親の遺した暗号(?)を解いて、翻訳の指輪が隠してあるのを見つけ出した雀小屋…



「あそこに隠してあった指輪なら、もう見つけてるよ。ほら、いつもつけてる…」


と言って指を見せると、ケートは首を振る。


「なにか、他にも隠してあると『記憶』が言ってます…。」




俺たちは庭へ出て、鳥小屋の周りに集まった。


「この手作りの雀小屋に、指輪が貼り付けてあったんだ。」

「へえ〜!そんな隠し方されてたものなんだね。じゃあ中は空っぽなんだ?」


福田が体をかがめて小さな小屋を覗き込む。


横に立ってその姿を見下ろしてたら、あることに気づいた。


──小屋の下の棒が刺さってる地面…そのへんの土だけ、盛り上がってないか…?


庭の、他の部分の地面は芝が生えているのだが、ここだけない。

最近生えたような雑草がピロピロと芽を出している感じだ。


俺はしゃがんで、手で土を掘ってみた。


芝が生えてる部分は硬く踏みしめられて、指で掘るのは難儀なものだが、このあたりだけは簡単に掘れる。


まるで、この半年以内に掘り返されて土が柔らかくなったように──


「な、なんだよ渚?隠した宝を見つけた犬みたいに、急に地面掘り出して〜…」

「宝があるかもしれないんだよ。」


少し深めに掘ったら、何かが指に触れた。

100均で買ってきたと思われる、小さい木箱だ。



掘り起こして蓋を開けてみると、中に小さな巻物が二本、入っていた。


「なんだこれ……?」

「魔道具ね。 巻物(スクロール)


ユーリが手に取り、しげしげと眺める。


「なんの魔法のなのかしら…」

「えっ、魔法の呪文が書いてあるの?!これ。」

「私も本物は見たことないからわからないけど、異世界から持ってきたものな気がするわ。」

「僕に見せてください。」


ケートが、もう一本の巻物を手に取った。


「似たようなものを、宮廷に仕える魔道士に見せてもらったことがあります。」

「なんの魔法が使えるの?」

「書いてある呪文によって違いますが…ちょっと開いてみましょう。」


ケートが巻物を開いて、中の文字を見る。


「…なあんだ、これは呪文の文章じゃないですね。地名が書いてあるだけでした。」

「ケートくん、なんて書いてあったのー?」


福田がそう言った瞬間、俺の胸に激しいざわめきが起きた。


「待っ──」


「[ソルベリー王国]って書いてありま──」



──間に合わなかった!



ケートは光りに包まれ、瞬時にして消えてしまったのだ。



「えええっ!ケートくん?!」

「しまった!転移した…!」

「どどどういうことだよ〜っ?!」


イブの言っていた、転移の巻物(スクロール) だったんだ──!!


「一人でなんて、危なすぎる…!」


ユーリは、即座に巻物を開いて、


「[ソルベリー王国]!!」


と叫んだ。



そして、ユーリの姿もまた、光に包まれ消えてしまった──



「ど、どーしよう、渚…!あの二人がいなかったら、異世界に行けないじゃん…」

「あっ!そうか」



これはヤバいぞ。


せめてユーリだけでもいたら、バザルモアに転移して、魔法研究所の準備に奔走してるイブに相談できるのに…。



いや、でもケート一人だと、転移先でなにかあった場合、やはり心配だ。

ユーリがついていてくれれば、怪我をしても大回復ができるし、大きな街まで避難できるだろう。


なにせユーリのほうがレベルが高い。

というか、おそらくそこらの山賊なんか束になっても歯が立たないクラスになっていると思う。もはや。



「しかし、よりによってイブ抜きで日本に戻ってきた時に限ってこんな事が起きるなんてなあ…」

「まいったね…。あ、でもホラ!あの二人、転移してこっち戻ってこれるからさぁ、ちょっと待ってれば現れるんじゃねーの?!」



俺と福田は庭に面した部屋に入り、腹ポケットから出したコーラゼロを飲みながら、待った。



なかなか戻って来ないので、テレビとテレビ台、そしてプレステを腹ポケットから出して床に置き、画面シェアで福田と一緒に戦国時代の無双ゲームをして時間を潰した。




5時間たち、日も暮れてきた。


初めて無双を触った福田も、明智光秀としての人生を上手に扱えるようになったくらいだ。

彼のためにイチからやり直したストーリーモードも、だいぶ本能寺の変に近づきつつあるほど進んだ。



だが、ユーリとケートはいっこうに音沙汰なし。


恵比寿のマンションの方に転移されてないかと何度もユーリのスマホに電話してみるが、圏外。

送ったLINEメッセージの既読もなし。



もちろん、イブも異世界にいるので同じく圏外だ。



「ねー、渚…これはいよいよヤバいんじゃないか…?」

「うん……。」



どうしよう。

ほんとにどうしよう。



俺のステータスを開いてみても、異世界転移の固有スキル項目は(勇者か聖女の同行時のみ)のまま、変わりないし──




夜中まで実家でずっと待っていたけど、ユーリとケートは結局戻ってこず、連絡も途絶えたままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ