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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第一章 億万長者になっちゃった!
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【14】おにわのおうちにあるらしい


俺はなんとなく勉強机の引き出しを開けてみた。


一人暮らしを始める時にほどほど整理し、日常使う訳ではなきけど思い出があるから捨てるのもなー…という小物だけ残してあったはずだ。



すると、一番上の引き出しに、目につくように紙が入れてあった。

子供の字で、クレヨンで書いてある。



『おにわのおうちにあるらしいよ!』



─なんだ?これは…。


紙は画用紙だし、知らない人が見たら子供の頃書いた紙を引き出しに入れてとってあるだけにも見える。


しかし、俺が書いたものじゃない。


紙の新しさから、父か母がわざと子供の字っぽく書いて、入れておいた気がする。


俺にきょうだいはいないし、小さな従兄弟もいない。

子供が訪れる可能性はない。


「転生する前の、親からのメッセージ…?!」


だとしたら、「おにわのおうち」って─


「!!」


一つ思い当たる場所があった。


家の裏手にある、目隠しフェンスに囲まれた小さな庭。


子供の時、毎朝雀が遊びに来ていたことがあって、俺は米粒を上げたりして楽しんでいた。

父さんがそんな俺を見て、鳥用の小さな小さな小屋を作ってくれたことがあった。


そしてそれを「すずめのおうち」と呼んでいた記憶がある─



俺は一階に降り、台所の勝手口から庭に出てみた。


隅の方に「すずめのおうち」はまだあった。


フェンスに針金でくくりつけるように設置してあり、色は剥げてるけど壊れたりはしていない。


近づいて覗いてみると、小屋の中の床部分に銀色の防水用のガムテープが貼ってある


貼ってからまだそんなにたってない風合いだ。


少し盛り上がっているのが気になって、ガムテープを剥がしてみた。

すると…


「指輪…?」


小さなビニール袋に入った2つの指輪が出てきた。


サイズ的に、父と母のものだろう。


父の方は、俺と変わらない指の太さだったようで、中指にはめることができる。


母の方は細くて入らない。

女性じゃなきゃ無理な気がする。



「結婚指輪かな…?」


転生とともに消滅しちゃうのが嫌で、俺に託すつもりで謎掛けみたいにして隠しておいたのかな。


「ジュエリーケースかなんか買って、俺のマンションで保管しておこう。錆びたらいけないし…」


─とは言ったものの


この指輪、なんの素材で出来てるんだろう?


プラチナ…より軽くて、つけてるかどうかわからない程だ。

長年使ってたとは思えないくらい輝きもあり、錆びるとは思えない。


「異世界の素材だったりして…」


結婚指輪かなんかで、身につけていたものだからそのままこっちに転移して持ってこれたとか…



「ま、魔法が使えるようになってたりして…?」


ゴクリ。


つばを飲み込むと、俺は試しに異世界っぽいことを唱えてみることにした。



「ステータス、オープン!」



─シーン


なにもおこらない。


「オープンザステータス!ファイア!ウォーター!癒しの光!鑑定!」


どれも駄目だった。


じゃあ筋力とか、基本数値が上がる効果の指輪だったり…と思って、フェンスを持ち上げようとしてもビクともしない。


しばらくやってたら、手のひらや腕が痛くなってきた。

体の防御力が伸びたわけでもなさそうだ…。


(ま、まあ、ここでいきなりフェンスがズボーッて抜けても修理とか大変になるし…)


なんとも情けないような気分になり、自分への言い訳をし、とりあえずわからないから今日の所は帰ることにした。



(たまに帰ってきて、家の中をもう少し調べよう。ポストも見ないといけないし…)


いくら両親がいなくなったとはいえ、実家を処分する気持ちはない。



リュックを背負って玄関から出ると、隣の家のお婆さんが出てきたので軽く会釈。


「あら!渚くん?来てたんだねえ」


しまった、話しかけられてしまった…近所の人に会わないように気をつければよかった…と思ったがもう遅い。


「庭からなんか男の人の声が聞こえるから、泥棒だったらどうしようかと怖かったんだよ。あんたで良かったよ〜」


はっ…

魔法を唱えているのを聞かれてしまった。


お婆さんだから、俺が唱えてたのがファンタジーあるある魔法だって気づかないでくれたようだ。よかった。


(でも万が一、あそこで大きな火の玉がボンッ!と出てしまっていたら騒ぎになってるよな。親の遺品を探る時は、今度から気をつけよう…)

 

隣のお婆さんは、少し声をひそめて


「ここん所ずっと、ご両親いないでしょう。お店も開けてないし…なにかあったのかい?」


と聞いてきた。


「旅行で全国を巡ってるので、店は閉じたらしいです」

「まあ〜、そうだったの。いいわねえ」


しまったぁぁ…この嘘をずっとつき続けなきゃならないぞこれは…!!


親戚に聞かれたらこう言っておこう…という取りあえずの言い訳が、口をついて出てしまった。

きっと近所に伝達されるだろう。もう後戻りはできない。



それでは…と挨拶をして、俺は駐車場の方へと向かった。

まだドキドキしてる。


(ふう〜…嘘をつくなら、もうちょっと細かいところまで決めておかないといけないな…。)




駅前の駐車場に戻り、車に乗り込みエンジンをかける。


「まずは家に帰って、親のノートパソコンをどうにかして解析する事と…」


ハンドルを握る手に、一瞬視線を落とす。

そこには、不思議な金属の指輪がキラリと輝いている。


「…この指輪の能力の解明だな。きっとなにか、あるはずだ…」

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