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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第三章 英国の香り・ソルベリー王国
134/162

【134】俺と勇者の新スキル!らしい


「ケートもレベルアップして固有スキル、増えたの?」

「はい!転移のスキルが新しくなりました。」



侯爵家での午後のティータイム。


俺とユーリ、ケート、侯爵で冷たい花茶を飲みながら異世界の衣類買い物代行について話をしていた時に、ケートが元気よくニュースキルの報告をしてきた。



ちなみに、川口と福田はイブのお供で城下町に魔術の材料を買いに行っている。(まあ、要するに荷物持ちだ)



「ナギサ殿、いまの僕のステータス画面にはこう書いてあります。


【ケート・リンリー】15歳

【職業】勇者

【レベル】231

【固有スキル】異世界転移 および 同世界内転移

(本人もしくは聖女の経由した場所全て)

 

※レベル500で神との対話

※レベル1000で神降臨………。」



「まあ、私の転移スキルより範囲が広くなってるのね?!」


ユーリが驚きの声を出した。


俺は最後の「※」のところが気になって仕方ないんだけどね。

なにそのスタンプ貯めると5個とか10個とかキリの良いところでプレゼントもらえます、みたいなシステム。



「これ、ユーリとナギサ殿もあるのかと思ってたけど…僕だけなんでしょうか?」

「ええ、おそらく──『勇者』のみなんでしょうね。」



みんなのリーダー『勇者』の特権。


遠く離れた土地まで、仲間を連れて転移すること──


「ケート、それがあればソルベリーに行けるんじゃないか?」

「そうよ!ケートはご家族で旅行した事があるんでしょう?みんなを連れて転移しましょうよ。」


ユーリはケートの手を取り、目を輝かせて言った。

だが、ケートは複雑な表情だ。


「はい、でも、あの──」


もう一度、ステータスを見る仕草をしたあと、


「同行者は聖女のみ、とも書いてあります…。」


気まずそうにそう言った。



これは──どうにもならなくなった時の逃走用スキル、と考えられるな。


パーティーは壊滅したとしても、勇者と聖女だけは生き残り、仲間をまた集めて体制を整え、敵に再戦を挑めるように。


──なるべく、そうならない状況でいてほしいものだ。いやマジで。



「私とケートだけでソルベリーに行くのかあ…。」

「いやいや、ソルベリーが故郷のイブさんや、異世界街を訪れたいナギサ殿を連れていけなかったら行っても意味ないよ、ユーリ。」


ユーリとケートは先程までのキラキラはどこへやら。うーん…と腕を組んで考え込んでしまった。


「──とりあえず、イブが帰ってきたらそのニュースキルについて相談してみましょ。」

「そうだね。あ!ニュースキルといえば…。」


ケートは、俺の方をくるんと見た。


「ナギサ殿は、レベルアップしたことでなにか新しいスキルに目覚めてはいないんですか?」

「俺のニュースキル…。」



ケートに聞かれて、ふと思い出した。


まだほとんど使用してないだけで、俺自身の固有スキルも実は増えている。



固有スキルっていうのは、その人が元々持ってる潜在能力のようなものだと思うから、レベルアップとともに「覚醒した」と考えていいのかもしれない。


だから、例えば「手から水を吸ってお湯にして出すことができる」ホテル従業員の場合、戦闘などでレベルが大きく上がったら「手を水につけるだけで適温なお湯になる」とか、「熱湯を噴射する」というスキルが開放される可能性がある、ということだろう。



ユーリの場合は聖女だから、人の傷を癒やす固有スキルがより強化されていっているようだ。



俺の場合はというと、お金を扱うことがスキルツリーの中心となっているのか、最初は異世界の金庫とかに保有してる自分のお金を両替できるだけだったのだが、次に勇者と聖女の隠し宝物や自分の車などの固定資産を換金できるようになった。


もっともそんなもったいない事、よほど金に困ることでもない限り使うことはないだろうけど。



そして今、有力な固有スキルがひとつ追加されている。


「仕入れ」である。


これは、いわゆるオンライン上のフリーマーケットサイトで買うのと同じで、誰かが出品した商品を自分の資産から引き落とす形で購入して当日〜数日後に受け取れる。


Amazonや楽天みたいな通販、というよりもフリマかな?と思った理由は、スキル発動した時に脳内に開く画面が、完全に日本の某有名フリマアプリと同じだからである。



日本から出品されてるものはおそらくメ○カリなのだが(どうやって俺のスキル画面と繋がってるのかはまるでわからないけど)

異世界の方は、バザルモアの店舗の中で売ってる商品が掲示されているようだ。パン一個まである。

画像は、その場で撮影した画面キャプチャのような物がアップロードされている。



写真はないはずだし、各店の店主が自主的に出品したとは思えないからどういう仕組みか全然わからない。


が、試しにパンを購入してみると、表示されてる額の貨幣がチャリーンと出品側の店主に支払われたようである。


3分かそこらで紙に包まれた温かいパンが手元に届いた。



夜遅くに注文した時は、翌朝ホカホカのパンが届いたので、店主が何らかの知らせで入金に気づいたら包んで送る(?)システムなんだろうと想像しているのだが──


近い内に一度城下町に出てパン屋の主人に聞いてみようと思っている。




「へえー!随分と商人っぽいスキルが開花したんですね。すごいなあ」


俺の説明を聞いて、ケートが妙に感心している。


「別に商人として生きていこうと思ってるわけではないんだけど、なんかお金がらみになっちゃうみたいだね、俺の場合は。」

「ナギサ殿。」


侯爵が、にっこりとした顔で話しかけてきた。


「そのスキルを使ったら、異世界のマーケット出ている商品もこちらに届けてもらえるのだろう?ならば是非とも、我々『異世界好み』の貴族からの頼みを聞いてくださらんか。」


フリマやネット通販の概念はわからなくても、異世界のマーケットで買ってそれが届く、ということはわかるんだな。


「勿論でございます。カタログの本に載ってるものの何万倍も商品がございますので、ご安心くださいませ。」


そう伝えると、侯爵はホクホク顔でメイドにとっておきのフルーツケーキをお出しするようにと頼んだ。



いえ、夕飯が入らなくなりそうですので──と答えようとしたが、ユーリとケートの期待のまなこがすっごいキラキラ。口からよだれもたれそうだ。



「ありがたくいただきます。」


オトナな俺は、そう言って侯爵にお礼を申し上げたのだった。


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