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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【117】中華ランチで異世界の治安を考えたらしい


「車庫用の倉庫、わざわざ借りたのか?」


川口が驚いた顔をして聞いてきた。


「あーやっぱ、マンションの管理下の駐車場だと異世界に持ち出せないからかあ〜」


香港風焼きそばの麺を箸で手繰りながら、福田が言う。




俺たちはいま、ウェスティンホテルの二階にあるチャイニーズ・レストランでランチを食べている。


近場で美味しい中華を食べたいなー、と考えてたら、先日1階のビュッフェに来た時見かけたことを思い出したのだ。

ランチはコースでグラスのスパークリングワインもついて4500円。

ディナーコースとなると1万円はするから、随分と安い。




「シャッター付きの倉庫ならさ、中で出たり消えたりしても誰にも見られないし、万が一こっちの世界には無いようなものを持ち込んでも人目を気にしなくていいじゃん。」


俺はピータン入りのお粥を食べながら答えた。


ちなみに福田は香港風焼きそば、川口は牛肉入りチャーハンを食べて「ランチは軽いからまだちょっと足りんな」とか言ってる。


前菜やら点心盛り合わせやらスープやらを食べたあとのこれである。


──俺なんて、食べきれなくなるといけないからメインディッシュをお粥にしたというのに…。



「文京区は住んだ事あるけど、23区の真ん中へんにあるからどこに行くにも楽だと思うぞ。狭い道や坂は多いがな。」


川口が、チャーハンをぺろりとさらいながら、そう言った。


「へえ〜、川口って都心部に引っ越したことなんてあったっけ?家賃高そぉ〜!」

「住み込んでたようなもんだから、俺が借りたわけじゃないけどな。」

「げ!もしかして前付き合ってた人のマンションなのかよ〜!畜生、一人だけ大人のお付き合いを知りやがってぇ…」


俺も川口が通い同棲みたいな事をしてたなんて知らなかったので、少し驚いた。


あまり恋愛ごとは話したがらないやつだけど、今度飲み会の時に酒の勢いを借りて聞いてみようかな。



「文京区からならどこへも行けはするけど、異世界用の車だからあまりそれで街乗りはしないかも…。」

「なんでだよ〜、メルセデスGクラス買ったんだろ?それでこっちでも出かけようぜ、信州とかさ!」

「ウム、そうだな。冬になったらスノボも行きたいな。」



そっか、別に遠乗りやアウトドアは異世界でって考えなくてもいいんだよな。


こっちの世界で雪山や草原を走ったっていいんだ。


それどころか、現地の駅まで新幹線で行って、そこで腹のポケットから出して乗ったっていいんだ。

異次元ポケットがあれば、レンタカーいらずだな。




それにしても、車や不動産を契約するというのは、思った以上に時間をとられる。



ネットでチャリン、と買えるわけでもなく、現地に赴いて内見をしたり、試乗してみたりした上で、いざOKですよとなるとそこで終わりではなく、法律上の手続きが色々と必要になってくるのが毎度煩わしい。



そんなとき、自分たちの暮らしているこの世界で最も大切な証明は「住所」なのだなあと、痛感してしまう。


家の住所も、車の住所(車庫登録)も、お金を払う本人がどこに住んでる誰でそれはマイナンバーと一致するのかどうかということ──


そうして初めて信頼が生まれるわけだ。



職業や親の存在、保証人なんかは、絶対必要かと思いきやたいして重視されない場合も意外とある。

(物件などの場合、えてして割高で高額だったりするが。)


この世界で暮らす限り「どこの誰さん」なのかという住所証明からは逃れられないのだ。



小さい頃、ファンタジーの作品を見て、


「大人になったら住所不定で、着いた街で頼まれた仕事をしながら野宿をして暮らす、そんな生活がしたい」


と本気で思っていた。


しかし現実だとそうはいかず……いや、やってる人もいるだろうけど、衛生の点においても快適とは言えないくらしになるだろうから、やりたくない。


特に真夏や真冬なんて、到底ごめんだ。




「でも、考えてみれば住所がありさえすれば、その家は放っておいて長い旅に出てもいいんだよな──野宿じゃなくて宿暮らしなら衛生的にも問題ないし。」


俺は、運ばれてきたデザートのタピオカ入りココナッツミルクを受け取りながら、言った。


「そーそー、オレたちの場合、家賃光熱費税金など、ぜーんぶ引き落としで1年の大半を異世界で過ごすって事にしてもいいんだよねえ。」

「おい、おれたちのって言っても、基本的に渚とユーリちゃんに連れて行ってもらわないと成り立たないんだからな。」


川口が福田にツッコミを入れた。


「あっ、そーだった。それも、ホテル・タラートクラスで安全なホテル暮らしじゃないと生きていけないよねえ…治安、まあまあ悪いらしいじゃん。」



街の人達と接客ついでに話をしたことにより、俺たちにもバザルモアの事が少しわかってきた。


格差があり、富裕層がいる地域は異世界からもたらされた文明のおかげで近代化していっているが、そうでない地域は治安が悪く、犯罪もおこる。

盗賊もいるし、ユーリが体験したように、宿屋ぐるみの人さらいもある。


そして、貧しい者=スキルも魔力もない者であり、良いスキルの子供が生まれたら一気に人生大逆転することもできる。


神から見放されなければスキルが芽生えることもある、と思われてるので、犯罪者だらけになるほどにはならず、社会は回っている──という状況らしい。



「レベル上がったから、もし賊に襲われても戦えるのかな?今なら。」


3人でデザートを前にしばし沈黙。


そして想像。


「うーむ、戦えるし、いざとなったら人も切れるだろうけど…」


川口が顎をさすりながら答えた。


「寝込みを襲われたら、アウトだな」

「わかる〜!オレたちさあ、平和な現代日本で育ってるから、多分そういう外敵にピンとくる野生の直感みたいの、鈍いと思うんだよねえ…。」


福田が同調した。



いや…二人はイブの試練により戦闘力があがったからそう言ってられるけど──


俺、多分寝てなくても全く太刀打ちできないと思うよ…!

後衛だし!

弱体化の銃とか、すぐ取り出せる自信ないし…!



異世界での宿泊はなるべくしないに限るな、と心から思った。



あ、でも人が侵入したら知らせるアイテムとかがあれば、もしかしたら難を逃れられるのかな…?



今度腹のポケットの中を探っておこう。

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