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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
115/162

【115】異世界人だってバレバレだ


侯爵令嬢・クララには、俺たちが異世界人だということはバレバレだったようだ。


「この国の人には気づかれにくいかもしれないけど、ソルベリー王国の貴族や大商人なら『異世界品』を目にした事があるのではないでしょうか。」


なんでもないことのように、クララは言った。



─ソルベリー王国といえば、イブの話だと異世界…つまり地球から転移した人たちが国の保護のもとに、地球の技術を活かした製品開発につとめている街がある、と…。



ええーっ、じゃあソルベリーってこのバザルモアとは違って、めちゃ発展してたりするんじゃないか?もしかして。


侵略戦争とかは起きないんだろうか、こちらの世界は。



「私はバザルモアの侯爵家の者なんですが、ソルベリーの貴族に嫁いだ姉がおりますゆえ、一度だけ旅をしたことがあるんですの。その時、異世界の方々の街を見学させていただけて…それはもう素晴らしい品物ばかりでした。」


クララは胸に手を置いて、夢見るような口調で話した。


「中でも彼ら、彼女らが元の世界から持ってこれたものは、どれも独特の文字で書かれた説明のようなものがついていて、こちら世界の商品との違いは明確でしたわ。」


文字での説明──?


あ!そうか、パッケージやタグの商品説明のことか。


そういや、元世界の物にはパンツ一つにもタグみたいなのが付いていて「綿100%」とか「Made in Japan」とか、なんかしらの説明が書いてある。

お手製ではなく、工場で大量生産されて市場に出された商品としての証のようなものだ。


薬品や食品になると、なお細かい成分の説明や注意事項が書かれている。



「確かにこの店で販売したものも、硝子の容器に移した美容製品以外は、説明タグはついたままでしたね。気づきませんでした。」


俺は、素直に白状した。


その場にいたユーリや福田は、ハラハラした顔でこちらを見ている。


「いいのですよ。私のような『異世界好み』な者にとっては、説明のタグがあるものはそれこそ本物の印──まさか私がこのバザルモアで、複製品ではない本物の異世界品を入手できる機会があるとは思ってもみませんでした。」


そうか、クララはそんなに異世界──地球のアイテムが好きなのか…。


効能が高い美容製品ならまだしも、こんな、そこらへんで売ってるサンバイザーやTバック下着で喜んでもらえるなんて、なんだか申し訳ない感じだな。


「この店は今日でセール終了ですが、他にもまだ色々異世界の商品はございますので、クララ様がお望みでしたら後日ご用意いたしましょうか?」


ユーリがクララにそう伝えると、彼女はフワァッと大輪の花のような笑顔を浮かべてユーリの手を両手で握りしめた。


「本当に?!まあ、どうしましょう…。ユーリ、と呼んでいいのかしら?」

「はい。」

「ユーリ、お店が落ち着いたら、是非私の屋敷に遊びに来て頂戴。もちろん、お仲間の皆さんもご一緒に…」

「喜んで。」


ユーリも花のような笑顔で返した。




クララが帰り、ほどなくして閉店の時間がやってきた。



先程の場に運良く商人の客は居合わせなかったようで、「自分の店にも異世界の在庫を転売してくれないか」などの話を持ちかけられることもなく、無事閉店することができた。



「やったあ〜!セール期間しゅうりょ〜う!!」


福田が両手を上げて、バンザイのような伸びのようなポーズで喜びの声を上げる。


「魔道具も3〜4個を残して、あらかた売り切れたね、ユーリ。」

「クララ様がお帰りになってから渚の案で『最終価格タイムセール』をしたのが良かったんだと思うわ。」


そう、最終価格として、値下げ価格より更に大幅に下げたプライスシールを貼っていったら、今買わなきゃ損だとばかりに、その場にいた客たちがドシドシ買っていってくれたのだ。


もちろん、異世界アイテムは全部売り切れである。



「よかった…これで在庫に悩まされることなく、お店を閉められるわ。売れ残った品は自宅用として使うことにするわ。渚、みんな、本当にありがとう…!」


ユーリは両手を合わせてお祈りするようなポーズをとり、俺たちに向かって頭を下げた。


「いいんだよ、ユーリ。俺たち、好きで手伝った訳だし…。」

「そーそー、それにいいツテもできそーな感じじゃん。ラッキーだったね〜!」

「おい、ツテってさっきのお嬢様のことか?あれなんだったんだ?」


クララとの対話に、接客中で居合わせる事ができなかった川口とイブに、ユーリが一連の出来事を説明した。



「ふむ…彼女はリンリー家の娘さんだったか。あんなに大きくなって、その上『異世界好み』になっていたとはな。」


イブが興味深げな表情で呟いた。


「イブさんはクララ様に会ったことがあるんですか?」

「彼女が赤子のときにな。いやあれは、あの子ではなく姉の方だったかもしれない…?」

「ねーイブさんって一体何歳な……まふっ!」


トシを聞こうとした福田の口を、川口が慌てて押さえた。

そこはなんだか聞いちゃいけない気がするぞ。グッジョブ川口。



「地球製品のファンのことを『異世界好み』って言うんですか?」

「そうだ、貴族や王族、大商人の中に一定数いる。ソルベリー王国だと、ここバザルモアより多いから、複製品は富裕層の中でわりと浸透しているぞ。」


へえ…そうなのか。

ソルベリー、尚更行ってみたくなってきたぞ。



「私、クララ様に月に一回くらいお届け物をしようかしら…。いいと思う?」


ユーリが、俺に聞いてきた。


「いいと思うよ。ユーリとそんなに年齢も違わなそうだから、話も合うと思うし、友達になれるかもしれないね。」

「そうだな。なにかあった時に、貴族ともパイプが引かれていたほうが有利になるかもしれないしな。」


イブがそう付け加えた。



見たところ、そんなに権力を振り回す感じじゃなかったけど、やはり貴族は力を持ってる感じなのかな。




なんにせよ、俺たちが異世界の者だということは見る人が見ればバレバレだ、ということがわかったのは収穫だった。 


クララはいい子そうだけど、周囲の大人はわからないので、今後は気をつけて行動しないといけないな。

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