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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
111/162

【111】異世界バーゲンセール


一週間後─ 



俺たちはユーリの魔道具屋を新装開店して、3日間限定の在庫一掃セールを始めた。 


「誰も来ないと思ったら、開店時刻前からそこそこ人が集まってるみたいだね〜!」


カウンター裏の小部屋に並べてある、在庫の入った段ボール箱をチェックしつつ、福田が言った。



おそらく、この街の中でちょっとだけ話題になってるんだろうと思う。


建物の壁に、愛嬌ある青いペンギンのマスコットキャラを大きくペイントした。

ペンギンの背景は、赤一色だ。


自分の手でペンキを使って描いた訳ではない。

俺が、魔力探知機のペンギン(っぽい青い鳥)の人形をマスコット化して描いたデジタル画像を、イブの魔法で壁一面に移したのだ。


店内は山積みで密度の高い、ある意味、店というより倉庫かな?と思わせるような品物のの並べ方にし、ひとつひとつにユーリの手書きポップがつけてある。


ちょっとユーモラスな表現で魔道具を説明した、黄色い手書きポップ。


そして、店の入口ドア横の壁には


『魔道具・雑貨が驚きの安さ!』


というデジタルで作ったデザイン文字を、やはりイブに大きく移してもらった。

もちろん、異世界の言葉バージョンである。

(はじめは『激安の殿堂』か『驚安の殿堂』って文字にしようかという案も出ていたが、殿堂と謳うのは広い建物じゃないと使ってはいけないルールがあると、ユーリに説明された)



もうおわかりだろう──


異世界に、小さなドンキ(の、ような店)を作ってみたのだ。



真っ先に店の外観から手を付けたので、


「なんか珍しい感じの店舗を作ってるようだぞ。やたらと派手派手な─」


という噂は、一週間で口コミ効果を見せたらしい。

開店時刻直前には、結構な人が集まってきていた。




開店──


待っていた人の先頭から、どやどや入場してもらった。


満員で入れなかった人たちには整理券を渡して、周辺の店舗を見て回ったりと時間を潰してもらうことを伝えた。


こうすれば、店の前に人が群れて道通りの迷惑になることもないし、周囲の店の貢献にもなる。


後ろの方で並んでいた人たちは「どうせ少しかかるだろ」と、近くの茶店へ行ったようだ。

もちろん、整理券を渡してある。



すぐ順番がまわってきそうな人達は、道に広がらないよう店の壁にそって並んでもらっている。

これはよく遊園地のチケットカウンターなどにある、並ぶラインを定めた赤い紐のついたポールを置いて、それに沿ってもらうよう川口が誘導してくれてるのだ。


お盆にスポーツドリンクの入った紙コップを載せ、欲しいようなら取ってもらう。

熱中症になられたらたまらないからね。

もちろん、訝しがる人は取らないでいればいいし、自由だ。




店の中に入った人たちは、大人が二人すれ違えるくらいの幅でたてこまれた棚の間をウロウロしながら、黄色いポップを読む。

そして気になる魔道具があったら、手にとって見る。


細かい質問をされることもあるので、ユーリは引っ張りだこ状態だ。


魔道具の説明ができるからと、イブも店員として接客に当たってくれてる。


ふたりとも美女だからか、男性客はデレデレだ。

話しかけたいがために魔道具の説明を求める奴すらいる。


迷惑かと思いきや、そこら辺は上手いことセールストークをして、買いたい気分に持っていってるようなので─


─二人とも、なかなかちゃっかりした性格してんな。



福田も負けてはおらず、魔道具以外の商品に関しては彼が片っ端から説明に当たってる。


愛想もよくニコニコと場馴れした感じで説明するさまに、主婦層の客が親しみを感じているように見える。


─さすが、元ドンキ店員…やはり本物は違うな。



今回、独特のゴチャゴチャ感を演出するために、ちょっとした雑貨小物を魔道具と魔道具の合間に差し込んで、展示している。

どれも、日本でいったらどこにでもあるようなものばかりだ。


こちらの世界の技術でも、作ろうと思えば作れるものをユーリにチョイスしてもらった結果─

 

美白系の美容アイテム全般(それぞれガラス瓶に移し替えた)、

布マスク、

布製のサンバイザー、

バナナを吊るすスタンド、

Tバックの下着(男女どちらも)

布製のプリントトートバッグ、

紙や布でつくられたブックカバー


ブックカバー?と最初驚いたが、こちらの世界にはないそうだ。


スマホもインターネットもないので、当然書物は「本」の形で読む世界。

(製紙、製本技術はあるようだ)


表紙の素材自体が革だったりと、高い本ほど分厚いくなっていて、重いし高いらしい。


逆に安いものは小学校で作る文集みたいな簡単なつくりで、傷みやすい。


「だから安くて簡単なカバーがあれば、本が長持ちするでしょう?」


ユーリが言った。



どれもチェマの人の心に刺さったようで、どんどん売れていく。


日本の価格のままで売ってるので、さすがに高く感じるんじゃないか?と思いきや、珍しくて便利なものだからかしっかり売れる。


おそらく、一般の小金持ちに混じって商人方が買っていって、自分のところで似たようなものを作ろうと考えているんだろう。



じゃあメインディッシュである魔道具は売れないんじゃないかと思いきや、この3日間限定でどれも大幅値下げをしているので、ちゃんと売れている。


日本の便利グッズはこちらの世界では高級品の値段だが、魔道具は『驚きの安さ』に設定されているのだ。

しっかりすべてポップに価格表示されているので、安心安全だ。


「それに魔道具たちも、新品のできたてピカピカ状態だから、新製品の雰囲気出てるもんね…!」



実は、俺の腹のポケットから、新しい宝物をひとつ見つけたのだ。


その名も『タイムを戻す風呂敷』。

ドラちゃんグッズに似てるって?まさにその通りだ。


といっても、大人を子供にしたり、料理を原材料にしたりはできない。

すべての商品の汚れや時間経過による色あせ、日焼けをとり、新品同様の状態に戻すだけである。



日本のようにすべてのお店で新品ピカピカのものを売ってるわけではなく、誰かが買うまで置きっきりで売ることが多いこの世界では、できたてホヤホヤピカピカというのはかなり美しく映える。


「こいつはいい物を見つけた…まさに今回の在庫セール企画にぴったりだ。この調子で全部売れますように──」



俺は、カウンターに立って慌ただしくお会計をしながら、そう願った。

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