「コロンの絶望」
「後世に伝えるというのは、なかなか難しいものじゃな。例えばほれ、これなんかもそうじゃ。なーにが、コロンの絶望じゃ。コロンという少年が絶望した様子を描いた絵? 作者不明? まったく、なにを言うとる。これを描いたのがコロンじゃよ」
――『蘇った画家』、エドモンド
『コロンの絶望』は、中期もしくは後期前半に描かれた作品とされている。
僅かに得られた資料からはコロンという名前しかわからず、作者は不明。
不気味に歪んだ風景と人物が特徴的な、油彩画。
どす黒く、渦を巻きねじれた空と、横長に潰れ、淀んだ太陽。そして、両膝をついて頭を抱える少年が描かれている。
おそらくコロンという名前であろう少年の体は、通常ではありえないほどねじれて曲がりくねり、悲痛な表情は何かに怯えているようにも見える。
後世の者はそれを、恐ろしい出来事の前触れを予期し、暗く不気味な空に背を向け絶望している様子なのだと解釈し、この絵を『コロンの絶望』と名付けた。
だが実際には、コロンとはこれを描いた作者の名前である。
また、黒い背景も経年劣化による変色で、元は紫色の空に黄金の光が浮かぶ絵だったようだ。
幼き日に、コロンは見た。
黄金の翼膜を広げ、東の空からやってきた白亜の竜を。
巨竜の紫炎が、泣き崩れる友を灼き尽くすその瞬間を。




