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「影鼠」

 水晶が(ねずみ)に噛み砕かれた時、城の兵士たちは理解した。

 鼠の一匹たりとも通さないという行為が、どれほど難しいことかを。

 そして、もう自分たちを守る壁が機能しないことを。



 その城は長く、不可侵の領域だった。

 最奥に隠された水晶が魔法の壁をつくり、それがあらゆる害意を何代にも渡り阻んできたのだ。


 そして城の兵士もまた、主に忠実であり、用心深かった。

 壁の力ばかりに頼らず、彼ら自身も鼠の一匹であろうと見逃すまいと、常に注意深く見張りを続けていた。

 

 だからこそ、侵入者はありえない。

 城の誰もが、そう信じていた。

 だが何事にも、絶対はありえない。

 

 長く続いた城の不可侵を破ったのは、一匹の鼠だった。

 それは影が実体を伴ったかのような、黒いもやが鼠の形をしただけのもの。

 魔法使いが放った生き物ですらないそれが、城壁の隙間か、あるいは誰も気づかないような小さな穴から侵入し、魔法壁の発生源たる水晶を砕いたのだ。

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