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「慈悲の剣」

「私はただ、みなさんの悩みを取り去ってあげたかっただけなのです。悲しみや苦しみを抱えて生きるのは、きっと辛いことでしょうから」

 ――聖女アリアンナ



 教会の聖女、アリアンナが隠し持っていた武器。

 銀の刃に祈りの言葉が刻まれた、本来は祭儀用の道具。

 

 武器として耐えうる強度は持ち合わせていないが、刃は鋭く尖り、人の胸を刺し貫くことはできる。

 アリアンナはこれを(ふところ)に隠し、いつも持ち歩いていた。

 そして悩み持つ者に、この刃で慈悲を与えたのだ。


 アリアンナの慈悲に、他者の意思は関係ない。

 ただ彼女は、よかれと思って刃を振るうのみだ。

 

 老いた親の世話に苦しむ若者には、親の死という慈悲を。

 親の財を無心する子には、子の死を。

 誰かの死を願う者には、その者の死を。


 アリアンナの手により、恨まれつつも死までは望まれなかった者たちの遺体が、無数に積まれた。

 しかし彼女は最後まで、これは慈悲であると語ったのだ。


 慈悲と優しさは、押しつけるものではない。

 望まぬ者に与えれば、優しさとて暴力になるのだ。

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