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「長命者の泉」
町の広場には、小さな噴水がある。
かつて貴族が作ったもので、いまは黄金の塗装も剥げ、獅子の手も片方が取れているが、かろうじて口から水は出せるようだ。
噴水の水は郊外の丘、清らかな魔力の流れる湖と繋がっている。
普段は水霊が棲み、人間は近寄れないが、湖の水を一口飲めば、十日は寿命が伸びるという。
しかし、町でそれを知るのは噴水で水浴びをした鳥だけだった。
足元でうろつく鳥が、まさか何十年も生きているなどと、誰が気づけるだろうか。
人はそれほど、鳥の区別ができるわけではない。




