「北の魔法学院」
「そしていつか、学院の地下、白の霊骸に触れ、星に至る者が現れんことを」
――北の魔法学院、初代学長。秘匿された最後の一文。
北の魔法学院。
それは魔法の学び舎でありながら、才能の有無に関わらず、来る者を拒まず受け入れる異端の学院。
初代学長は言った。
『才能とは、己が自覚するだけのものではない。そして気づきと閃きは、あらゆる場所からもたらされる。だからこそ我らは、種を芽吹かせるきっかけを与え、彼らを大いなる道へと導くのだ』
学院はこの教えを守り、今も分け隔てなく門をくぐる者を受け入れている。
教授たちは奔放な生徒に苦労しているようだが、ここから生まれる魔法使いは皆、尖った部分はあるものの、とても優秀だ。
北の魔法学院に数ある伝説の一つに、炎と降霊術、二人の見習い魔法使いの話がある。
二人は顔を合わせるたびに喧嘩をし、それが何度も学院に被害を及ぼしたことから、当時から学友や教授たちの間でも有名だった。
炎の見習いは自信家ではあったが、それに見合った実力を持っている。
だが、魔法の火力が文字通り高すぎたため、なにかするたびに服が焼け焦げてしまい、そのせいで不名誉なあだ名が付けられたりもした。
降霊術の見習いは、当時としてもあまり人気ではなかった降霊魔法の教室をあえて選択した。
彼女は基本的な降霊魔法を、二年生の内にすべて取得するという偉業を達成したものの、そもそも注目度の低い教室であったため、同じ教室の学友と師事していた教授以外は誰も褒めてはくれなかった。
他にも、金儲けのために霊薬を作って販売などもしていたが、嫌がらせで炎の見習いが放った魔法が霊薬と反応し、教室を丸ごと一つ吹き飛ばすなど、問題を起こすことも多かった。
そして、二人が卒業を控えた四年生の時に、事件は起こる。
卒業試験中、常に一位で突破していた生徒の魔法が暴走した。
その生徒は元々優秀であったが、さらに力を望むあまり禁忌を使用し、それが過酷な状況下で不安定になることで、制御不能となったのだ。
暴走した魔法は茨の怪物となり、学院をのみ込んだ。
炎と降霊術の見習いは怪物にのまれた生徒を救うため、制止する教授たちの話を聞かず二人で中心へと向かう。
しかし、茨が床を突き破り、二人は学院の地下へと落下してしまうのだった。
それから、傷つきながらも地下から脱出した二人は生徒を助け、茨を焼き払った。
学院の誰もが二人を褒め称えたが、なぜかその時、彼女たちだけは一切笑顔を見せなかったという。
騒動が落ち着いた後、二人の内どちらを首席にするかを決める対決を行うと、教授たちが提案する。
だが、その瞬間二人の目つきが変わり、互いに睨み合ったことに恐れを抱いた教授たちは、特例として首席なしで二人を最優秀見習いとすることで、なんとかその場を収めるのだった。
卒業の日、炎の魔法使いは砂漠の都へ、降霊術の魔法使いは叫び谷の森へ。
二人は学友たちが誘う宴を断り、逃げるようにそれぞれの道を歩み、学院を後にした。
卒業試験の最中に起きた事件、崩落した床から落ちた先で起こったことを、二人は結局、誰にも語ることはなかった。
あの時二人は、学院の地下で何を見たのだろうか。




