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「ニーソマン」
「お願い……助けて、にぃさま」
――兄に助けを乞う妹
ニーソマン。それは兄を想う弟妹を見守る、謎の存在である。
窮地に陥った時、あるいはどうしても会いたいと願った際に弟妹がこの名を呼ぶと、ニーソマンが望みを叶え、兄を呼び寄せるのだ。
学者たちの調査の結果、特に兄を「兄様」と呼ぶ者ほど、ニーソマンにすがる傾向があることがわかった。
しかし、実際に聞いてみたところ、呼んでいた本人でさえニーソマンという名称に対して首を傾げるばかりで、まるで存在を認識していないかのようだった。
このことから、ニーソマンは弟妹の意識の中に入り込み、無自覚に名前を呼ばせているのだろう。
その理由はおそらく、対象の兄を呼び出す魔法の発動条件が、自分の名前を呼ばせることだからだと推測される。
その姿が語られることはほとんどないが、ニーソマンというくらいなのだからニーソックスを履いているのだろうと、研究者たちの間では憶測と噂が飛び交い、何度も議論されているようだ。
ときおり、兄を引き止める際にもニーソマンを呼ぶ弟妹がいるが、こうした状況では、兄を説得できる確率は格段に落ちるという研究結果もあるらしい。




