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「婆怒擦砥雷駆」
「こんな婆も倒せないで冒険者になろうなんて、甘いこと言ってんじゃないよ。そんなんで怪物から身を守れると思ってるのかい? さあ、次はこいつを耐えてみな、坊や!」
――『謎の婆さん』
婆怒擦砥雷駆とは、始まりの町の冒険者協会に所属する試験官、『謎の婆さん』の必殺技である。
『謎の婆さん』を自称する老婆は、冒険者協会始まりの町支部の開設当時より試験官を任せられている重鎮で、その名の通り謎が多い。
誰も本名を知らず、経歴も不明。ただ、蹴散らされた冒険者たちの数だけが、彼女の実力を物語っている。
婆怒擦砥雷駆。
それは地を深く踏みつけ、雷が地上を駆けるが如き疾さで距離を詰めながら、拳による一撃を見舞う技。
相手からすれば、婆が滑るように地を進んだと思った瞬間にはもう、懐に飛び込まれ拳を叩き込まれているのだ。
『謎の婆さん』は何年もの間、新米や昇格試験に挑む冒険者にこの技を叩き込んできた。
しかし、動きが衰える気配は微塵もなく、むしろさらに研ぎ澄まされているようだ。




