幽霊の正体見たりほにゃららら ~幽霊を信じない男の子の話~
どこどこの誰かさんが見たってよ。
あら本当、うちもこの前見たのよ。
Kさんも、Aさんも、Tさんも見たらしいわ。
怖いわね……いったいこれからどうなっちゃうのかしら……?
そのような噂が最近よく囁かれていた。
何を見たって? 幽霊だよ。
僕の住んでいる住宅街では最近、幽霊が出るという噂が広まっているんだ。僕の周りの人のほとんどが「見た」と言っている。
人によって幽霊の姿形は様々だ。
女の幽霊だったという人もいれば、男の幽霊だったという人もいる。足があったりなかったり、声だけを聞いたという人、白い姿をした人影だという人もいるし、光る人魂だという人もいる。十人十色、人によって様々だ。
噂だけが独り歩きしていると言ってもいい。
僕はそんなもの信じない。
そんな噂に振り回されない。
幽霊なんているわけないじゃないか。
もう子供じゃないんだから、そんなものを信じている大人が滑稽に見える。同じようにまだ幽霊を見ていないという、友達たちと僕は大人たちを笑っていた。
確かに僕も昔は幽霊を信じていたさ。夜トイレに行くのだって怖かったし、暗いところが怖かった。だけどそれはもう数年も昔の話なんだ。
僕はもう大きくなった。
幽霊何て怖くない。
出れるもんなら出てみろ。
僕の周りの人たちは幽霊を見たという話で持ちきりだったけど、一向に僕は見なかった。
きっと、寄ってたかって僕を騙そうとしているんだ。
僕はそんなデマ信じないっ。
だけど、そう心に誓ってから数日が過ぎたある日、塾帰りに僕はあるものを見ちゃった……。
白く発光する人魂を……僕は見ちゃったんだ……。
僕は怖くて怖くて、必死に逃げた。
途中足が意思に追いつかなくて、何度もこけそうになりながらも家に帰った。
親に幽霊を見たと僕は正しく鬼気迫る形相で説明した。
だけど、僕の両親もまだ幽霊を見ていなくて信じてくれなかった。
本当なんだ……本当だったんだ……幽霊を見たんだ……。
何で誰も信じてくれないの……?
僕と仲のいい友達にも幽霊を見たということを打ち明けた。
だけど友達たちは誰も信じてくれなかった……。
本当に見たのに……。
白い人魂を見たのに……どうして誰も信じてくれないの……。
信じてもらえなかった人は僕と同じ気持ちだったのかな……?
本当に幽霊を見たのに、誰にも信じてもらえなかった人たちは僕と同じ気持ちだったのかな?
そうか……わかったよ……。
信じてもらえないのなら、信じさせればいいんだ……。
僕が幽霊に化けて信じさせればいいんだ……。
信じてもらえなかった人たちは、きっと僕と同じ気持ちになったんだ――。