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第5話 クランシステムの村再興計画




 この村に僕より年下がいないという事実が判明して一週間。

 そろそろ村が限界で、今日食べる食糧さえ怪しくなっているらしい。アバーダたち若い男衆が狩りに出かけ、女性陣が山菜を摘みに行く。そして、僕に十分な量が行くように配分してから、村の全員で分ける。

 村の人数は40人強と少ない。これまでは殺された人の家に備蓄されていた食糧や、燃えなかった食糧をかき集めていたからなんとか凌げていた。

 その話を聞いた僕は、もう限界だと思った。この村がこのままだと、全員餓死してしまうことは明白。

 庭に顔を出し、訓練をするように言っていたドーバとマーティに声をかける。

 二人はすでにファミリアに入れていて、あらゆる行為が経験値に繋がる。そして、僕への好感度や忠誠度によって体の強化具合も変わってくるというシステムだ。


「ドーバ、村の全員を集めて。マーティはみんなを迎え入れる準備を」


「わ、わかりました! 行ってきます!」


「はい!」


 二人とも僕が与えた武器を家の壁に立てかけ、行動を開始する。

 マーティの準備が終わり、ドーバが戻ってくるまで30分とかからなかった。



「全員集まりました。ムラサキ様」


 アバーダが代表して、村のみんなの前に座る。その正面に僕が座っていた。

 僕は村人全員の顔を見て、やつれていたり衰弱していたり、さまざまな様相が伝わってくる。この村の健康状態もよろしくない。


「みんな知っての通り、この村はもう長くない」


 僕がそういうと、みんなが歯を食いしばる。この帝国から抜けて敵対するということは、食糧援助も期待できない。帝国にこの村を保護する義務はないからだ。

 まぁ、その帝国が村を潰そうとしていたのは間違いない事実だけど。


「そこで、僕に一つ案がある。僕の力の一つにクランというものがあって、それにみんなが入ってくれれば解決できるかもしれない」


 クランの設立条件は、最低人数の10人を揃えること。それともう一つが、1000万ゴールドの申請金。カンストまで育てた僕のこのキャラなら、たった1000万ゴールド。はなくそだ。

 ゴールドは仮想通貨みたいなもので、この世界に出すことはできない。だけど、ゲームシステム上で使う分には何も問題ないはずだ。

 僕の提案に、みんなが興味をひかれていた。

 この餓死目前の中から脱出できる可能性となれば、その望みにかけたくなるのが人間だ。

 なぜギリギリまでしなかったのかというと、ギリギリじゃないと入ってくれない人もいるのではないかと考えてのことだ。


「その、くらん、というものに入れば、本当に助かるのですか……?」


 アバーダが食い気味に聞いてくる。

 力強く頷くと、アバーダは少しみんなと相談すると言い、後ろを向いた。


「相談するまでもない。アバーダ、入ろう。いまさら俺たちをどうこうしても、ムラサキ様にメリットなんてないだろ。それに、どっちみちそれしか道がないんだ」


「そうだそうだ! ムラサキ様! どうかクランというやつに入れてください!」


 村人たちがクランに入るという強い意思をもって、アバーダや僕に伝えてきた。アバーダが決心したように振り返って僕に目を合わせ、頭を下げた。


「お願いします。俺たちを助けてください。ムラサキ様」


 アバーダが頭を下げたことを皮切りに、ほかの面々も頭を下げる。その中には両サイドに控えていたドーバとマーティも含まれていた。


「わかった。今から、本当の意味で僕の庇護下に入る。みんなを死なせたりしない」


 一呼吸おいて、立ち上がる。


「システムコール。クラン設立。座標、現在地から半径50メートル。クランハウス・タイプ神殿」


 そう告げた瞬間、視界が一新された。

 家が消失し、開放的な空間になった。大理石でできた床や壁、そして柱。マンションの5階ほどの高さを持ち、奥には大聖堂がある。周りは円形のつっぱりがいくつも出ており、下から見れば城のようにも見えるだろう。

 久しぶりに新しいクランハウスを作ってことに新鮮味を感じつつ、うまくいってよかったと安堵する。

 これで、ゲームマネーのゴールドを使えることは確定だ。そして、クランを設立した以上はゴールドの収入も見込める。クランメンバーの数×1000ゴールドが、税収のように毎日入ってくるのだ。

 1000ゴールドといえばHPが200回復するポーションを30個ほど買える金額だ。それだけあれば、きっと食糧問題も解決する。

 最後にクランメンバーの一覧を確認し、頷いた。


「さて、これで完了した。毎朝ここに食糧を取りに来てほしい。今日は出せないけど、明日からは問題ない。ただ、これは一時しのぎに過ぎない。明日種をあげるから、それをまず育ててほしい」


「は、はい! お任せください!」


 唖然としていたアバーダが我に返り、ほかの面々も正気を取り戻し始めた。

 各々僕の異形を讃えたり、ここにいる限り安泰だといったり。

 ただし、食糧問題を解決することはできても、毎日の収入をそれに使うと、クランハウスのレベルアップができなくなってしまう。クランハウスのレベル上げは重要だ。特典がたくさん増えていくのだ。それを放置しておけるほど、魅力のないものではない。


「じゃあ、解散で。また何かあれば相談しに来て」


「神だ。本物の神だ……!」


「お、おい! 帰るぞ!」


 僕を神だと崇め、手を合わせて頭を下げる。そんな人がめちゃくちゃいた。悪い気はしない。だけど、むずがゆくもある。なんたって、僕以外のカンスト勢でもできることなのだ。なんなら、カンストしてなくてもある程度の資金があればできる。

 ……この世界の人には不可能だけど。


「姉ちゃん凄い……俺たちをまた助けてくれてありがとう!」


 ドーバが敬語を忘れて僕に抱き着く。頭を撫でてやると、恥ずかしそうにもそもそと離れていった。

 思春期かな?

 いや、それはまだもうちょっと先か。


「マーティもドーバも、訓練を怠らないで、毎日やるんだよ。僕はちょっと奥の大聖堂に行ってくる」


「「はい!」」


 二人を置いて大聖堂へ移動した。

 大聖堂には二つの扉があり、一つはクラン倉庫。もう一つは、クランマスターの部屋だ。今日からここが僕の家となる。ちなみに、大聖堂の正面奥には祭壇があり、そこでゴールドとあらゆるアイテムと交換することができるのだ。


「これで、ひとまず安心か」


クランマスターの部屋にあるソファに寝転がり、疲れからかすぐに眠りについた。





ブクマ、誤字報告ありがとうございます!


次回予告

「帝国の使い」


※この通りの内容とは限りません。

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