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第一章 迫り来るもの 8

 私は……眠っていたのでしょうか?なんだか体が重い気がします。外はもうすっかり暗くなっていて部屋の様子も見え辛いです。何かに寄り掛かっているようですがここは……ベッドの横、ですか。とりあえずランプを点けに行きましょう。そう思って立ち上がろうとして右手に重みを感じて……


「えっ……これは……?」


 右手に握られていたのは私の剣。たしか私、勇人と楽しそうに話すカスタードを見ていて、それで……


「まさか、私これで!?」


 慌ててランプに駆け寄って火を灯す。刀身には……何も付いていません。何かを拭った形跡も特には見受けられません……


「そう、ですよね……大丈夫、ですよね?」


 でも自信がない。確かめに行くのも怖い。剣を取り落して力なく床にへたり込んで、震えながら両手を眺めることしかできません。ただただ怖い、この呪いが、私自身が……


「お~い、リリちゃん、ちょっといいかな……ど、どうしたの!?」


 カスタード!


 良かった、本当に良かった……私、まだきちんと抑え切れて……


「剣、持ってたの?手入れ……っていう感じじゃないね。どうしたの?」


「私……私、貴女を……ッ!」


 そのまま駆け寄って来てくれたカスタードにすがりついて、声を殺して泣くことしか出来ません。情けないことですが、謝罪の言葉は胸につかえて出て来てくれなかったのです。


「……辛いことがあったのかな?もう大丈夫だよ、落ち着くまではアタシが傍に居てあげるから。」


 もし私が呪いを抑え切れていなかったら、間違いなくこの手でカスタードを殺してしまっていたでしょう。それが恐ろしくて、それからカスタードの優しさが暖かくて涙が溢れて止まりません。こんなにも私のことを心配してくれる友人を、あんな些細なことで手に掛けようとするなんて、私はもう……


「もしかして、さっきキリくんと話してるところ見てた?…………そっか……ねえ、リリちゃん、アタシはキリくん取ったりなんかしないから大丈夫だよ。ちょっと二人の事が心配だったから声掛けちゃったんだけど、それがリリちゃんには耐えられなかったんだよね?ごめんね、アタシももう少し考えて行動すればよかったね。」


 なんとか首を横に振って応えます。そうではないのです。全部、全部私が悪いのです。きちんと呪いを抑え込めていればよかったのです。怖がらずに勇人と話をしていればよかったのです。そうすればこんな事には……


「リリちゃんもさ、キリくんと同じだね。一人で何でも抱え込んで、そりゃあ制約の事とか話し辛いことがあるのは分かるけどさ、アタシも、それからゼオくんも心配してるんだよ。ほんの少しだけでもいいから頼りにして欲しいなぁ。」


 そう言って頭を撫でてくれる。その心遣いがありがたくて、でも、自分を責める心は晴れなくて……


「ごめ……なさい……私もう……」


「リリちゃん……」


「い……や……嫌……です……助けて……勇人……」




 



 それからどれぐらい時間が経ったか分かりません。気付いた時にはカスタードは居なくなっていて、私はベッドに寝かされていました。泣き疲れて寝てしまっていたのでしょうか?


 部屋のランプは灯したままになっていて、柔らかな明かりが心を落ち着けてくれるようです。


「これは……」


 ベッドの横の台にカスタードが残した書き置きがありました。迷う理由はないですからそのまま手に取って見ます。


『キリくんと話でもしてみたらどうかなって思って来たんだけど、とりあえず疲れて寝てるって伝えておくね。無理はしないで、起きたらゆっくり温泉に入ってリフレッシュしよう!大丈夫、キリくんはちゃんとリリちゃんの事を考えてくれてるよ、焦らないでね!』


「ありがとうございます、カスタード……」


 ですが、これ以上呪いを抑え続ける自信はありません。このままではいつ何処で爆発してしまうか……


「……考えても仕方のないこと、なのでしょうか……」


 もう空が白んできています。一先ず汗を流してすっきりしましょうか。できれば誰にも会いませんようにと願いながら……


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