〜幼馴染編〜2話
師匠の家に、みんなが揃った。
「あと1年したら成人の儀が始まる。それまでに各自、自分のことを知る必要がある。」
と真剣な顔をして言った。
リードは、それが分からないんだという顔をしながら右手の人差し指で口元のところに軽く触っている。リードの癖である。
アクシスは、ノートを取り出した。アクシスは、頭が良く作戦などの指揮をとるのが上手い。
「今までの修行から学んだことをノートにメモしているんだ。そこで、分かったことが少しだけある。それは、戦闘パターンが少ないことだ。」
「確かにそうかもしれない。僕とムドが、前線で戦いリラが回復役、そしてアクシスが魔法でとどめをさす。これがいつものパターンだな。」
この村では、4人1組で戦うのが主流になっている。幸いにも、このチームはバランスがとれていると言えるだろう。
リード(剣士)・ムド(武闘家)・リラ(ヒーラー)・アクシス(魔法使い)。これが、このチームの職業だ。
師匠の職業は、分からない。教えてくれないんだ。ただ、魔法を使えるのは知っている。そう、師匠は謎が多い人なのだ。
「確かに戦闘パターンが限られているのは、あまり良くないだろう。しかし、いつもの攻撃パターンは大きな武器にもなるということは知っておいてほしい。」
どういうことだろう?とみんなは首を傾げていた。
「1人が複数の職業につけたら面白いのになー!」
ムドが、何かを閃いたかのように言った。ムドは、時々確信をつくことを言う。この閃きで助かった場面も多くあるので、みんなはムドの閃きを信用している。当の本人は、思ったことを口にしているだけなので深くは考えていないだろう。
「面白い発想だな。でも、それは厳しいね。君たちには、まだ早過ぎるかな。複数の職業に就くには条件がいるんだ。それは、時が来たら教えてあげるよ。」
少し寂しそうな顔をしながら師匠は言った。
僕は、なぜか心が痛くなった。この感覚はなんだろうか。
「良い考えだと思ったんだけどな。」
と言いながらアクシスは深く次の考えを導き出そうとしていた。頭の回転が早いのだ。
「みんな考えすぎなんじゃないかな?もっと、簡単なことのような気がするんだけど。分からないけどねー。」
リラが言った。リラは、その場を明るくする力がある。師匠は、リラの方を見て涼しく笑っていた。
「リラは、そのままでいいんだよ。」
リラは、嬉しそうな顔をしていたが心ではどういうこと?と思っていた。
「師匠!いつもの森に行って試してみたいことがあるんだ。」
リードは、真剣な眼差しで師匠に言った。
「試したいこと?良いだろう。みんなで練習の森に行こうか。」
師匠は、頷きながら了解してくれた。
練習の森というのは、いつも僕たちが魔物を狩っている森のことである。幼い僕たちでも、手頃に練習できるところなのだ。
つづく。