6泊目
SSランク級冒険者、SS級冒険者とも呼ばれるこの世界に三人しか存在しないと言われているランクだ。冒険者はE~Sのランク付けをされる、新米冒険者はEランクで受けられるクエスト、素材売却や商品購入の手数料が掛かるのだがそれかなり高いのだ。
ランクが上がれば上がるほどクエストの報酬は良くなりギルドで渡される『ランクカード』を宿や店で提示すればランクに応じた値引きを受けられる、Sランク級冒険者ともなればその知名度も高く、店側は自分の店の名前を売るために必死に値引きをしたり、宿屋に至っては一番いい部屋を無償で貸すらしい。
だがSランク級に上がるのはとてつもなく厳しい道のりでEランク冒険者達は宿を取らずに野宿やダンジョン内で寝起きし、数多くのクエストをこなしてランクを上げなければならない。
そしてSSランク級冒険者、『Sランク級冒険者であり、かつ世界の発展に大いに貢献し、数多くの魔物を討伐し、伝説級の魔物を討伐していること』この厳しい条件をクリアしなければなることは出来ないと昔風の噂で聞いた。
「ホメットさん、今日は何があったんですか?」
驚愕のオンパレードで思考が追いついていない俺達を余所に店主スミカがドワーフの男に話しかけていた。
「ん? あぁ、それがな。俺達のチームは最近ランクBに上がったんだ」
「それは知ってますよ? つい一週間前にウチで騒いでたので」
「あの時は世話になったな。でだ、そんな俺達五人はいつも通っているダンジョンじゃなくて『死者の祭壇』に挑むことにしたんだ。だが流石にいきなり五人はキツいと思ってな、応援を頼んだのさ」
『死者の祭壇』と言えば店主スミカが王から依頼された純魔結晶を取りに行く場所じゃないか? Bランク級冒険者が入れるダンジョンなのか。そう思って居ると店主スミカの顔から笑顔が消えていて背筋が冷たくなるような鋭い表情に変わっていた。
「行ったのですか? あのダンジョンに」
「あ、あぁ。だが入り口から少し中に入っただけでこのザマだ。何に襲われたのかすらわかりゃしねぇ......」
「......あの男の人、傷だらけだった人が襲われたときになにか聞こえました?」
「アールの奴が襲われた時? さぁ......俺は聞かなかったが、おい! 誰かアールがやられたときに何か音とか聞いた奴いるか?」
ドワーフの男、ホメットが振り向いて騒いでいた集団に声を掛けた。するとピタッと騒ぐのをやめた。
「中は薄暗かったからなぁ......」
「アールの悲鳴が聞こえたっきりだね」
「あぁ、俺もあいつの悲鳴だけだな」
三人の男女を皮切りに次々とダンジョンでの事を話すが誰一人と店主スミカの問いに合う答えが得られなかったが最後の一人がおずおずと手を上げた。
「あ、アタシ聞いた......かも、声だと思う」
「どんな感じでしたか? なんて言っていました?」
「え、えぇっと何か枯れた男? の声で『これで最後』って聞こえた」
『これで最後』? 何のことだろうか、俺にはさっぱりわからない。隣にいたケインズに視線を送ったが首を横に振った。
「......サーシャ、私の部屋にある"三番の手紙"をあの子に届けて」
「......」
コクリと頷いたサーシャは店の奥に消えていった。