表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街かど宿屋のドラゴンさん  作者: 抹茶さめ
1話
44/93

聖王と王子



 エスルーアン聖王国、険しい山々に囲まれたその国は癒やしの女神『エイス』を信仰対象としており、治癒魔法を使える魔法使いは他国の平均より多い、そして世界で唯一『勇者召喚』を行える国である。


「だったか? ダイメル」

「はい、山々に囲まれているために難攻不落の国とか言われてりしていますけど裏を返せば国に行くまでが困難、それでも勇者を代々召還している国ですし、隣国は友好を深めるために多くの行商人を向かわせているのも事実」


 俺とダイメルは妹に頼まれた手紙というか書簡を持ってアインス王国を飛び出したのが約五日前、今はようやく到着した王城の待合室でダイメルと一緒に聖王国産のお茶を飲んでいた。渋いなこのお茶......


「我が国も山を挟んでほぼ隣だから隣国にはなるが、なんか関係持ってたか?」

「得にはありませんね、たまに合同訓練とかしますけど」

「一緒に演習する仲か、結構繋がりは強いな......」

「まぁ確かに、お互いの兵とか戦法とか兵器も見せ合ってますしね、渋いですねこのお茶」


 お茶を口に運んだダイメルが顔をしかめた。


「この渋みが良いらしいぞ? 俺は苦手だが」

「その土地の風土には慣れろと良く言われましたがこれだけは苦手ですね」


 そう言ってダイメルがお茶の入ったカップを置くとほぼ同時に扉がノックされた。


「ゲンシュ王子殿下、ダイメル様、王の謁見の準備が整いましたのでお呼びに参りました」

「そうか、入れ」

「失礼します」


 開かれた扉の前には黒髪で少し背が高く、白を基調とした給仕服を身に纏った女性が立っていた、国も違えばメイドの服装も違うのもまた面白いな、それにしてもこの女......元冒険者か? 風格というか立ち姿がそう思わせる。それに右目に眼帯か、メイドと言うより護衛といった感じだな。


「案内いたします、こちらにどうぞ」

「感謝する、行くぞダイメル」

「はっ!」


 俺は立ち上がり外交用の王家の紋章が入ったマントを翻しながら部屋を出る、その後ろをダイメルが近衛兵仕様のフルプレートメイルの兜を被っていた。あんな重装備で疲れないのか? やはり『レベル』の恩恵は大きいな。


 謁見が行われるのは王城の『大聖堂』と呼ばれている場所だ。いかにも聖王国らしい名前の場所だな、俺達二人を案内していたメイドが大きな扉の前で立ち止まった。


「それでは、私はこれで失礼いたします」

「うむ、案内ご苦労だった」


 そう返すと黒髪の女性は腰を折り、静かに頭を下げてから横に退いた。


「アインス王国! ゲンシュ・ヴィッシュ・アインスヴェルク王子殿下! 並びにアインス王国、近衛兵長! ダイメル・ディセング様! お入りになります!」


 俺とダイメルの名前と国名を若い男が大声で言うと大きな扉が開かれた。大聖堂の仲は天井に付けられた色つきのガラスが太陽の光を色とりどりに飾り立てて降り注がせ、赤い絨毯が真っ直ぐに一段高くなっている王座に伸びていた。


 絨毯の両脇には騎士団なのか、同じ甲冑に身を包んだ兵士が剣を正面で構えたまま動かず、まるで置物のようになっていた。俺は胸を張り、堂々と肩で風を切り、マントをはためかせて絨毯の中央を歩く。その後ろをダイメルが付いてくる。

 

 そして王座にどっかりと座った中年でガッシリとした体格の王の手前、数メートルで止まり片膝を付いて頭を下げた。


「お目に掛かり光栄です。聖王陛下」

「表を上げよ、ゲンシュ王子殿」

「はっ」


 俺は頭を上げて真っ直ぐに聖王に視線を合わせると聖王がニヤリと笑った。


「ノエ女王の手紙、確かに読ませてもらった。大変に面白い内容で楽しませてもらったぞ」

「と、言いますと?」

「何だ? 読んでいないのか? おい! 誰か手紙を!」

「はっ!」


 聖王が少しだけ声を張ると一人の兵士が俺が昨日、聖王補佐とか言う男に渡した封筒が大事そうに持たれていた。


「それをゲンシュ王子に」

「はい! どうぞ王子殿下」


 差し出された封筒を受け取ると中身を取り出した。二枚の紙が出て来て一枚目に目を通す。


「は?」


 自然と言葉を発してしまったがそれよりも全身から嫌な汗が噴き出した。そのまま二枚目に目を通す頃には俺の顔は真っ青に染まっていることだろう。それを見ていた聖王が笑みを浮かべていた。


「どうだ? 中々面白い内容だろう?」

「我が妹ながら、肝が据わっていますね......」

「はっはっは! 俺もそう思ったぞ? いい主君だ」

「ははは......なんと言えば良いか」


 豪快に笑った聖王に俺は乾いた笑みしか浮かばなかった。丁寧な字と着飾った文面を簡単に要約すると手紙の内容は『ウチの国に面倒ごとを持ち込むな、この借りは高く付く、叔母上を頼るな!』だ。一歩間違えば戦争が起きるぞ?!


「あの歳これだけ国を思い、肝が据わった者はそうはおらんぞ? 隣国としてこれからも長く付き合いたいものだ」

「は、はい! ありがたきお言葉」

「うむ、さて。俺の送った使いはいつ帰って―――」

「どわぁあああ?! あっぶねー! 顔面から地面にキスするとこだったぜ!」

「......まったく、スミカ殿はもう少し説明してくれてもよか―――聖王陛下?! それとゲンシュ王子殿下?!」


 聖王が喋りきる前に後ろからドシャドシャっという音が聞こえたと思うと二人の男の声が聞こえた。振り返ると鎧を着けてはいるが叔母上の宿屋で見た二人の騎士だった。そうだよな? ケインズとか呼ばれていた奴の顔が少し野性味がでている気がするのだが? 


「おぉ! 騎士団長と副団長! はっはっは! 中々に面白い登場だな!」

「も、申し訳ありません! このような醜態を晒してしまい大変申し訳ありませ―――」

「良い、大方あのお人にいきなり送り返されたのだろう?」

「は、はい! 実は―――」


 騎士団長が話し始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ