王城の午後
―――――――――アインス王国、王城
「やぁ! マイシスター! 今日もかわぶへ!?」
「王子!?」
俺が勢い良く妹......おっと違った。女王陛下が居る執務室のドアを開けた途端、顔面に分厚い本がぶち当たり仰け反った。痛いじゃないか。
付き添い兼護衛で隣に隣に立っていたダイメルが驚いていた。俺はヒリヒリと痛む顔を手でさすりながら執務室の中を見ると腕を組んで仁王立ちした女王陛下が机の前に居た。
あー......あれは怒ってる、目元がピクピクしてるし。
「ッチ! 急所を外したわ......何の用かしら? ゲンシュお兄様?」
「陛下、ジャストミートでございます......プフフ」
妹が舌打ちして側に控えていたクリスが肩を震わせていた。最近のクリスが俺に冷たいんだが? 妹は昔から俺に冷たいが。
「いやいや陛下、何の用って貴女が私を呼んだんじゃないですか? 昼過ぎに執務室に来いって」
「そうだったかしらね?」
「私は存じ上げません」
「っく!......」
これがイジメって奴か!? 俺はなにもしてないぞ? むしろ感謝される事はあるが妹が俺に対して怒ることなど......あ。
「はっはーん、分かったぞ。昨日の夜に叔母上の所に行ったから嫉妬しているな? フフフ」
「んなっ!?」
「お前は昔っから叔母上が大好きだったからな、嫉妬しても仕方ないか」
「なっ! なっ!?」
妹の顔が真っ赤に染まった。分かりやすい奴め、お前が叔母上を尊敬し敬愛しているのは周知の事実、最近は御前会議やら謁見やら書類仕事で会えないと語っていたのをメイドを通じて知っているぞ。
おや? うつ向いてしまった。からかい過ぎたか?
「......ろ」
「何だって?」
「お前の罪を数えろ! 馬鹿兄上! 『我が命ずるは天を貫く柱なり、その雷鳴をもって穿つ槍なり』! 『ライトニングスピア』!」
「ちょ!?」
雷系魔法の『ライトニングスピア』だと!? 妹が上に突き出した右の手の上にバチバチと放電する黄色い槍が現れていた。
「うっわ! やっべぇ! 王子! 達者でな!」
「私は私用を思い出したので」
「待てぇい! 逃げるなお前ら! 仮にも王子だぞ!? 王子が死んじゃうよ?!」
クリスとダイメルは廊下を走って数メートル程のところまで逃げていた。護衛が逃げてどうする!?
「大丈夫だー! 王子なら出来るぞー!」
「逃げながら何言ってんだお前はー! 王子を置いてにげ―――おわぁああ!?」
ズドンっと雷の槍が鼻先を掠めて通りすぎて壁に当たり黒く変色させて煙をあげていた。
「外したわ、でも大丈夫、次は外さないわ『我が命ずるは天を貫く柱なり、その雷鳴をもって穿つ槍なり、複数の雷鳴を轟かせろ』! 『ライトニングスピアーズ』」
「!? ちょっと待て妹よ! それは不味い!」
俺が妹の方を見るとさっきと同じ雷の槍を四本浮遊させた肉親の姿があった。雷系魔法『ライトニングスピアーズ』は『ライトニングスピア』を複数作り出し撃ち出す中級魔法、威力は半減するが手数が多いのが特徴だ。
「っく! 『母なる大地よ我に力を貸したまえ、我が命ずるは地の盾なり、数多の害を防ぐ盾なり』! 『アースクレイシールド』!」
俺が呪文を詠唱すると目の前に岩で出来た背丈程の壁が作られたた。土系魔法の『アースクレイシールド』は岩の盾を作る魔法だ。雷系魔法を防げるのは俺に手持ちの中でこれしかない。
だが相手は雷系魔法の天才児と言われている我が妹だ。威力もけた違いなはずだ。
「考えましたねお兄様。確かに土系魔法は雷系魔法にとても強いです。しかも防御を固められてはてが出せません」
「そうだろうな、だからその物騒な物を引っ込めて話を―――」
「ですが弱点もあります。『水よ、生命なる水よ。我が命ずるは地を穿ち、地を満たし、尖り、尖り、鋭く尖る水の槍なり』『アクアランス』!」
「複数同時発動だと!? 」
チラリと岩の壁から覗くと雷の槍と水で出来た槍を浮遊させて笑っている我が妹が居た。
「はい、お兄様。まず『アクアランス』でその壁を砕き、『ライトニングスピアーズ』をお兄様の股間に集中させます」
背筋がゾッとした。
「な、なんと言う恐ろしい事をッ......!?」
「その方が確実だってクリスが」
「おのれクリス!!」
執事と騎士団長が逃げた方をに視線を向けるとダイメルが腹を抱えて笑っており、クリスは壁に手をついて肩を振るわせていた。
「ではお兄様、スミカ様に迷惑をかけたその罪。償って下さいね」
「ちょちょちょ! ちょっとま――うわぁあああ!?」
俺の作った壁は一瞬にして砕かれ光の粒子となり消え、雷の槍が俺の股間に―――




