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三人組の秘密

海の上に浮かぶメガフロートにある学園都市、通称『派学島』は上空から見ると、南北に長い長方形の形をしている。

北区画の4分の1が空港で、南区画の南西部分には船が着港できるようになっていて、そこから島の中央にある派学まで大通りが貫いている。

大通りの両側には小売店、飲食店、娯楽施設や宿泊施設など、様々な商業施設が立ち並んでおり、島ですごす人が不自由しない程度には、一通り必要なものが揃っていると言えるだろう。



3月3日である今日、その大通りを年齢、性別バラバラの集団を乗せたバスが走っていた。

そのバスの車内に困り果てたような声が響いた。


「いい加減、機嫌直してくれよ、シュウ!俺が悪かったってー」

「ったく、あんなヤバそうな連中を怒らせたまま、いなくなるなよなー。何とか話がまとまったから、良かったものの、こじれてたら、今頃どうなってたか・・・」

「だからさっきから謝ってるじゃんかー。でも確かに、あのゴツイやつはやばそうだったよな・・・」

「タケには、いまいち誠意が感じられないんだよなぁ」

「シュウ、しつけぇなー。そんなんじゃ、モテねぇぞ」


つい反射的に、お前には言われたくないと言い返しそうになったが、実は武志はこれでもそこそこモテるのである。

普段の言動を近くで見ている鷲一としては、世の中おかしいと思わずにはいられないが、武志は身長もほぼ180くらいあり、顔もわりと精悍な顔立ちをしていて、運動神経もかなりいいのだ。

スペックだけ見ると、確かにモテそうであるが、鷲一としてはどうしても納得がいかないのであった。


「はぁ、世の中、不公平だよなー」

「何だよ、急に・・・。それより、船での話はだいたい分かったけど、ほんとにあいつらが守る保証あるのか?」


武志とは船を降りる前に合流して、そこからの道中で、武志がいなくなった後の話の流れを説明していた。

将也まさやと約束したので、武志にも決めたことを守らせないといけないのだ。



「んー、まあ推測でしかないけど、わざわざ事前に労力を割いて、作った関係をそんなに簡単に壊さないんじゃないか?まあ初めに向こうが提案してきてた協力関係だったら、逆手にとって利用できるかもしれないけど、結局最終的な契約は、相互不干渉だからな。向こうの邪魔さえしなければ、こっちには敵対の意思はないんだし、大丈夫だと思うよ。それに受験生が4000人いる中で、俺らだけ敵対視する意味もないしな」


「それもそうだな、確かに。さすがシュウ、頼りになるぜ!・・・でもさ改めて考えると、そもそも協力できるような審査内容かどうかも分からなくないか?そうなると、その契約も結局は意味ないんじゃ・・・」


確かに俺もそこは疑問に思った。

それで最初は、もしかしたら、あの中の誰かが以前の最終審査経験者で、その経験から『他の受験生と協力関係を事前に築いておくべき』という発想になったのかと思ったんだが。

でも、それにしては審査内容に関して、確信を持ちすぎているような印象を受けた。


たとえ毎回の最終審査の内容が似ているとは言っても、全く同じ内容であるはずがない。

もし、同じ内容なら、いくらなんでも初心者と経験者で有利・不利の差がありすぎる。

そんなのは、国立学校の審査として、ありえないだろう。

だから、いくら経験者と言っても、そこまで確信を持てないはずなんだが。

となると、やはり・・・。



「いや、意味はあると思うぞ」

「ん?そうか?審査が普通に学力テストと身体測定みたいなのだったら、意味ないんじゃないか?」


まあその可能性もかなり低いが、無くはないかもな。

でも、こんなどう見ても普通じゃない学校の最終審査が、そんなありきたりな内容だとは、どうしても俺には思えないんだよなー。



「まあな、その時はせいぜい頑張るさ。それよりタケ、あの三人組、何かおかしくなかったか?」

「え?どっかおかしかったか?俺には、ごついやつが真冬に半袖だった以外、普通に見えたけどなぁ」

「そりゃ、俺も半袖は思ったけど・・・。てかそこじゃない!そもそも三人組なのがおかしいんだよ!」

「はぁ?・・・おいシュウ、俺にも分かるように言ってくれよー。お前わざとやってるだろー。置いていったことまだ根に持ってんのかー?モテないぞー」


こいつ、また言いやがったな。気にしてんのに・・・。

あっ、そう言えば、さっきこいつる予定にしたんだったぁ。

今、ってしまおうかね、このくそ野郎・・・。ふふふふ・・・・・。



「わ、悪かった、シュウ!な、なんか怖いから、その顔、やめてくれぇぇぇ!!」

「・・・ッチ・・・、しゃあねぇな。次はねぇぞ・・・・」

「は、はい・・・。それより何で三人組だとおかしいんだ?」

「まあ考えてもみろ、たまたまあの三人が、10組もある最終審査で同じ組になるのがそもそも変だろ」

「た、確かに言われてみれば変かも!」



そう、あの三人組はどう見ても、最近知り合った感じの雰囲気じゃなかった。

その三人が全員、たまたま同じ組になるのは、どう考えても不自然だ。

まあわずかにその確率が無いわけではないが、その場合の彼らの危険度は低いので、考慮する必要はないだろう。



「そう、あの三人組は何らかの組織に属していて、おそらくその組織のメンバーが大勢、この派学の審査に参加しているんだろう」

「そうか!その組織の中からたまたまあの三人が今日の組になっただけなんだな・・・」

「そう、そして仮にその組織Xにあの三人が所属していると考えると、審査内容について確信を持っているふうだったのもうなずける。たぶん、3月1日か2日の組で審査を受けた組織の仲間に内容を聞いて、知っているんだろう。審査内容の守秘義務はあるが、仲間内で伝えるくらいなら、派学サイドに知られる心配もないしな」



その組織、何が目的で参加してるんだろうか。

でも、あの三人の雰囲気からして、どうせロクな組織じゃないだろうなー、怖い怖い。

それにもし、お互い審査に受かったら、これから無関係ではいられないだろうなー、嫌だ嫌だ。



「シュウ、もしかして他にもその組織のやつ、今日の組にいたりすんのかなぁ?」

「んー推測だけど、俺らみたいなのに協力を求めるくらいだから、いてもそこまで人数はいないんじゃないか?たぶんいたとしても、あと二、三人程度だと思うぞ。ただ、声をかけたのが俺らだけってことはないだろうから、声をかけている人数次第じゃ、面倒なことになってそうだけどなー」

「げ、それはほんとに面倒だな・・・」



ただそれよりも俺が心配しているのは、審査に参加している何らかの集団が、その組織の他にもいるかどうかってことなんだよな。

最終審査全体で4万人残っている事を考えると、まだいそうだよな、どう考えても・・・。

そうなると、今日の最終審査、俺らが思ってるよりかなりハードなことになりそうだ。



でも、俺は(一応武志も)、舞のために何としても、振り落とされる訳にはいかないんだ!!



「おいシュウ、派学の停留所についたみたいだぞ。行こうぜ!」

「ああ、改めて気合入れないとな!」

「そうだな!よっしゃあぁぁぁ!!!舞ちゃん、俺はやるぜぇぇぇ!!!」

「うっせぇ!!静かにしろっ!!」


最終審査も間近に迫っているにも関わらず、緊張感とは無縁の二人なのであった。

読んでくださってありがとうございます!

よろしければ、評価やブックマーク、感想など、ぜひお願いします!



◎主人公

名前:倉田鷲一くらたしゅういち

身長:174cm


◎(主人公の)幼馴染

名前:本城武志ほんじょうたけし

身長:179cm

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