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船上での契約

話しかけてきたのは、前に立っている若い男のようだ。

俺たちよりちょっと年上の20代前半くらいだろうか。

なんかできる若手の外資系商社マンがいたら、こんな感じだろうなと思わせられる、若さをあまり感じさせないスキのない立ち姿の男だった。

身長は170ちょっとくらいだろうか、痩せているが、ガリガリって感じではなく、ちゃんとそれなりに引き締まった体をしているのが服の上からでも分かる。それにどことなく知的な雰囲気も感じられる。


残りの二人は、話しかけてきた男の後ろに並ぶようにして立っている。


一人は『若手外資系』―― 心の中で勝手にそう呼ぶことにした ――より少し年上くらいの男だ。

格闘技かスポーツをしているのだろうか、かなり体格もよく、身長も180以上ありそうだ。

てか上着を羽織っていないどころか、上は半袖だ。寒くないのだろうか・・・。


もう一人は『若手外資系』と同い年くらいで、目つきは少し悪いが、それを加味しても綺麗な顔立ちの女の人だ。

髪はベリーショートで、女性にしては身長も高く、たぶん160後半くらいで、いわゆるモデル体型をしている。派手さはないが、どこか迫力のある女だった。

勝手に『ゴリマッチョ』と『ヤンキー姐さん』と呼ぶ―― もちろん声に出したら、どちらにも殺されそうなので、心の中でだけだ ――ことにした。


俺は、武志が騒いでいたことにすぐ思い至り、とりあえず謝ることにした。



「すいません、うるさかったですよね。迷惑かけてしまってすいませんでした」

「いえいえ、楽しそうで見てて微笑ましかったですよ」

「そう言っていただけてありがたいです。でも、もう静かにさせますので」

「いえ、ほんとにお気になさらずに」


どうやら武志が騒いでいた件ではないようだ。

十中八九そうだと思ったんだが、そして後で武志を始末する予定だったんだが、予定が狂ったな・・・。


「では、俺たちに何か?あ、たぶん俺たちの方が年下なんで、敬語使わなくて大丈夫ですよ」

「ん?そうかい?じゃあ、初対面だけど失礼して、お言葉に甘えさせてもらおうかな」


急に敬語を使わなくなったからだろうか、さっきまでとはどこか別人のように感じられた。

どうやらそう感じたのは俺だけではないようで、自然と武志も身構えていた。

この人たち、只者ではないようだ。

それは向こうも感じたようで、苦笑いしながら、しゃべりだした。



「はは、そう身構えないでくれ、いささか傷つくよ。それにちょっと相談があって、話しかけただけなんだ」

「・・・・相談とは?」

「ただ、それを話す前に確認なんだけど、君たち、この船に乗ってるってことは、今日の受験生なんだよね?」

「はい・・・そうですけど、そちらも受験生なんですか?」

「まあね、一応三人ともそうだよ」


というかいちいち確認しなくても、この船は今日の受験のための臨時往来船だから、受験生以外乗れないのだが。まあ、可能性として、派学の関係者ってのもあるか。

ていうか相談って何だろう。受験生ってことを確認し合ったってことは、今日の審査でのことだろうけど・・・。

などと鷲一が思案していると、れたのか、『若手外資系』武志から初めて切り出した。


「で、相談ってなんすか?」

「ん?分からないかい?そうか、そうなってくると、どうしようか・・・」

「は?急に何言ってんすか?」


このまま武志に話をさせるのはまずいなと思ったので、鷲一は話に割り込んだ。


「もしかして・・・手を組むとかですか?」

「お、そうそう、そうこなくては」


ふぅ、良かった、合ってたみたいだ。

相談ってだけじゃ俺も分からなかったが、受験生同士って条件を加えて考えると、ぱっと思いつくのは、『情報収集(交換)』か『審査での協力関係の提案』の二つくらいだ。

すぐに思いついていないのを残念がった様子から考えても、簡単に思いつきそうなこの二つであってるとはすぐ分かったが、問題は二つのうちどちらかだ。

そこで一次審査の時に書かされた、同意書の守秘義務の項目に、審査内容に関することも含まれていたことを思い出せば、自ずと答えは分かる。


ちなみになぜ審査内容を守秘させるかというと、毎年の審査の内容は似ているので、情報が出回って審査のハードルが低くならないようにするためだ。

まあ情報を伏せても、複数回受けている人が有利なのは、そこまで変わらないのだが、毎回最終審査に到達する人がそこまで多くないため、一応伏せる意味はあるかもしれない。


と余計なことを考えていると、武志がなぜか喧嘩腰でしゃべりだした。



「はぁ?敵同士で手組んでどうすんだよ?てか全員で残れるほど、甘くねぇと思うぞ!」

「それはそうだけど、とにかくいいから、タケはちょっと黙っとけ!」

「ちぇっ・・・じゃあ俺、めんどいのは苦手だし、シュウ、後は任せたー」


そう言い残してタケは、船内に戻っていった。

あいつ、失礼な態度取って、俺一人残しやがって・・・・後でろう、そうしよう。

とりあえずこのままだとまずいので、武志の代わりに謝ることにした。



「・・・連れが失礼な態度取ってすいません」

「いやまあ・・・まだ許せる範囲だから、別に構わないよ。じゃあ、返事を聞こうか」


さて、ここをどうするのが正しいだろうか。

正直、この得体の知れない三人組は、個人的に絶対敵に回したくないが、安易に味方にするのもどこか不安だ。いざとなったら、裏切られそうな予感がする。

ていうか、武志が失礼な態度取ってから、鋭かった『ヤンキー姐さん』の視線がさらに鋭くなったんだが・・・。武志をる前に、俺がられそうだ・・・。

それより早く決めないと、くそ、ままよ!



「・・・共同歩調って、言うのはどうですか?」

「ふむ・・・それは具体的にどういうものを指すのかな?」

「正直、初対面ですし、お互いの事をよく知らないままでは、協力も難しいと思うんです。だから、互いの邪魔にならないように行動しようってことなんですが、どうですか?」

「なるほど、お互い干渉しないようにするってことか・・・」


しかし、さっきから『若手外資系』しか喋ってないな。後ろの二人とは部下みたいな関係なんだろうか。

とういか、とっさに提案してみたものの、どう考えても、やり手っぽっくてこっちより人数の多い相手には、そこまでメリットのない話だ。

頼む提案を受けてくれ!こっちを認識された今となっては、できれば敵対したくない!



「確かにそれくらいが現実的な落としどころかもなぁ。よし、ではそれでいこう。ところで、それはさっきの彼にも適用されるのかな?」

「はい、自分が言って聞かせますので・・・」

「ははっ、まあそれも信用しておこう。では一応、自己紹介しておこうかな、御陰将也みかげまさやだ。よろしく」

「倉田鷲一です。こちらこそよろしくお願いします」


俺たちは握手を交わし、口約束ではあるが、相互不干渉契約が結ばれた。


「後ろの二人の紹介は、お互いが合格したらにしようか。そっちも一人いないしね。それに受からなければ、どうせ短い付き合いになるだろうし」

「そうですね、お互い頑張りましょう。じゃあもう船が着きそうなので、俺はさっきのやつと合流します」

「ああ、ではまた」

「はい、失礼します!」





将也まさやは走り去っていく青年を面白そうに眺めていた。

そこに、後ろから怒ったような女の声が飛んできた。


「ちょっと将也、説明しなさいよっ!」

「何がだ?」

「協力関係を持ち出して、利用するんじゃなかったのっ!?今までのやつらもそうしてきたじゃない!?何であんなヘボそうなガキ二人だけっ」

「静かにしろ、どこで誰が聞いてるか分からないんだ。まあ聞かれても別に問題ないが、面倒は少ないほうがいい。それに理由なら、ちゃんとある。何だったか・・・ああ、鷲一ってやつの方は、俺らのチームのこと、微妙に勘づいてたみたいだったからな」

「えっ、そんな様子、わたしには感じなかったけど・・・」

「まあ半分は俺の勘だから、別にいいが・・・。何にせよ、残れば使えそうだな」


将也と女が話していると、今まで黙っていた男の方が口を開いた。


「あいつら、なかなかできそうだ。特に先にいなくなった方は俺とも張り合えそうだな、楽しみだぜ」

「ほう、そこまでとはな、ますます使えそうだ。でも、今回は手を出すなよ。一応、そういう約束だからな。それに俺ら以外にも別の集団が複数いるみたいだからな、あいつらにばかりかまってる余裕はないぞ」


読んでくださってありがとうございます!

よろしければ、評価やブックマーク、感想など、ぜひお願いします!



◎『若手外資系』by鷲一

名前:御陰将也みかげまさや

年齢:24歳

身長:172cm


◎『ゴリマッチョ』by鷲一

名前:???

年齢:27歳

身長:183cm


◎『ヤンキー姐さん』by鷲一

名前:???

年齢:23歳

身長;165cm


これから初登場した人物や情報などを後書きに書くことにしました。

読む際の参考になれば、と思います。

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