探索、開始!
動けなかった・・・・。
美波は自責の念に駆られていた。
自分のことを二度も助けてくれた人が襲われているのに、遠くで見ていること以外、何もできなかったのだ。
鷲一に促され、ディアと名乗ったAIのあとを走り出した時にそれは起こった。
前を飛びながら先導していた、ディアが突然止まったのだ。
『シュウイチが、攻撃されてるのよ~』
振り返ったディアにそう言われ、美波も同じように後ろを振り返ってみると、ちょうど襲撃者に蹴り飛ばされたところだった。
突然のできごとに声にならない声を上げ、とっさに駆け寄ろうとした美波だったが、『シュウイチの邪魔しちゃダメなのよ~』とディアに止められてしまった。
それからしばらく襲撃者との攻防が続いていた。
美波には、終始鷲一が劣勢だったように見えたので、自分も助けなければと思い、何かできないかと必死に考えたが、目の前で繰り広げられている戦いは文字通り、次元が違い、助けに入るなんて、到底不可能なことだった。
もし無理に割り込んでしまっていたら、ディアの言う通り、邪魔にしかなっていなかっただろう。
そんなことを悩んでいるうちに、戦いは終わったようで、襲ってきた男の人が走り去っていくのが見えた。
いつまでも立ち止まっているわけにもいかないと思い、美波は戦いを終えた鷲一の元へと急いだ。
――― ――― ――― ―――
修吾と名乗った男が立ち去って、しばらく経ってから、ようやく鷲一は臨戦態勢を解いた。
さっきまで戦ってた男は、姑息な手を使うタイプには見えなかったが、一応用心して、再度の奇襲を警戒していたのだ。
しかし、どこかに隠れていた後衛の気配も完全に無くなったので、どうやらその可能性もないようだと判断し、警戒を解いたのである。
終始ギリギリの戦いだった。
まず、先手を取られてしまったのが、大きく、そのせいで常に後手に回らなくてはならなかったのだ。
それにあのような前後衛での高度な連携での奇襲を受けた経験がないことも、鷲一が劣勢に立たされた要因の一つだった。
特に最後の攻撃を避けれたのは、本当に運が良かった。
あれを受けていたら、鷲一が最終審査を突破するのは難しくなっていたかもしれないのだ。
この最終審査、明確な合格基準のようなものは未だに示されていない。
だが、この審査の形式上、ライフが重要なポイントであることは間違いない。
ラッキーパンチが発生しかねないので、単純に審査終了時点での残っているライフの数値だけが基準になったりはしないだろうが、でもおそらく、それも一つの審査基準だろう。
仮に単純計算で、今日の4000人の中の上位200人が審査を突破できると考えると、かなり険しい道になることは簡単に予想できるので、審査を突破するためにも、こんな序盤で簡単にライフを削られてやるわけにはいかなかったのだ。
「倉田さん・・・・大丈夫ですか?」
振り返ると、不安そうにこちらを気遣っている美波が、いつの間にかすぐ近くに来ていた。
どうやら、思考に没頭して、周りへの警戒が薄れ、接近に気付かなかったようだ。
先ほどまんまと襲撃を受けたのも、油断が原因なので、鷲一は再び気を引き締めた。
「ああ、大丈夫。ライフも削られてはいないし、大した怪我もない」
「・・・・それは・・・よかったです・・・」
美波の態度は、未だに初対面の時と変わらず、どこかぎこちない。
まだ心を開いてくれるまでには、かなりの時間がかかりそうだった。
いやそれとも、元々誰にでもこういう態度の子という可能性もあるが。
「それより、もう機械動物が放たれてから、一時間近くになる。装備が重要になってくるこの審査で、他の受験生に出遅れるのはまずい」
もし、あの襲撃の時、修吾が強力な武器を所持していたら、鷲一はおそらく大きくライフを削られることになっていた。
それを考えると、まずはサポーター以上の防具、それから武器の順で入手できないと、いつか手遅れになることは、誰にでも予想できる。
「・・・・き、機械動物?・・・な、何ですか、それ?」
「ごめん、小河さん、今、ゆっくり説明してる時間はないんだ。手分けして、装備を探さないと。ディアは小河さんに付いてくれ。俺はその周辺で探す」
「・・・・よ、よく分からない・・・ですけど・・・ディアちゃんと一緒に・・・探せばいいんですね」
「ああ、ディアは俺たちの身体能力とかを考慮して、効率のいい探索範囲を振り分けて、それをそれぞれのマップへ表示してくれ。あと、もし小河さんに何かあったときは、俺への連絡と合流地点の指示頼む」
『分かったのよ~。それくらい簡単なのよ~』
こうして、鷲一、美波、ディアの三人組(?)は手分けして、装備を捜索し始めた。
探索方法はこうだ。
まず、二重の円をマップ内に表示し、その内側の円内を美波とディアで一緒になって―― ディアはAIなので、体という概念はないが、主に美波の端末に、探知系を含んだ演算能力の比重を置いている ――捜索する。
そして、その外側の円内を鷲一が捜索し、めぼしい物が無い場合は、その二重円ごと移動するという感じだ。
また美波が強力な装備、または機械動物を見つけた場合は、鷲一もすぐさま合流することになっていた。
ちなみにディアは端末を行き来できるので、鷲一側で反応があった時には、鷲一の端末へ移動し、そっちで正確な探知をする手はずになっていた。
しかし、三十分捜索しても、機械動物は発見できていなかった。
機械動物は見た目、普通の動物と同じらしいので、ろくに生き物のいないこの島だからこそ、見れば簡単に分かるはずなのだが。
一応、特殊効果なしの装備は武器が一つ、防具が二つという具合で、発見できてはいたが、どれも普通のグレードで、それほど強力なものではなかった。
防具に関しては、サポーターよりは使えるので、鷲一と美波で一つずつ付けて、二人共サポーターは一箇所外している。
一方、しらみ潰しな捜索方法であるため、他の受験生との遭遇率が上がってしまうのが、悩みどころだった。
だいたい三十分くらいで、五人の受験生と遭遇しただろうか。
さすがに修吾たちのような強敵はそうそういなかったが、それでも、中には空手や柔道、ボクシングなどをかじっている者もいたりして、無力化する―― 気絶させるだけで、時間が惜しいため、ライフは全て削ってはいない ――のには骨が折れた。
そして、捜索開始から四十分経った頃だった。
また新たな受験生を見つけ、奇襲をかけようと木の上へ移動していた鷲一にディアから連絡が入った。
『シュウイチ、機械動物見つけたのよ~。マップに位置表示したから、早く来るのよ~』
「分かった、すぐ向かう。見失わないように、見張っててくれ」
これで美波たちが見失ったり、他の受験生に取られたりしなければ、ようやく、特殊効果ありの装備を手に入れられそうだ。
マップを確認すると、かなり近い位置だったので、ひとまず安堵し、美波の元へ急いだ。
他の受験生が来ると、美波には悪いが、守りきれる可能性が低いと想定していたので、鷲一は移動中の警戒度を緩めてまで、かなりのスピードで急いだ。
ものの数分でたどり着いて、周りを確認したが、幸いなことにこの辺りにいるのは、美波と鷲一たちだけのようだった。
肝心の機械動物が逃げては元も子もないので、美波に近づく際、鷲一は可能な限り気配を消して、そばに近づいた。
そのため美波は、かなり近くに来るまでこちらに気がつかなかったようだ。
「・・・あ・・・倉田さん・・・早かったですね」
「ああ、できるだけ急いできた。で、見つけたのはどこだ」
「・・・えっと・・・・あそこです」
そう言って美波が指さした先にいたのは、一匹の白いうさぎだった。
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体調を崩してしまって、何とか間に合いましたが、投稿が遅れてしまいました。
ストックはしておくものですね・・・・。
これからは気をつけなければ!




