意義のある検証
男が抵抗しなくなったことを確認すると、鷲一は辺りの安全を確認し、引き続き、検証を開始した。
まず、空いている右手のグローブで男のサポーター4つ全て触れてみる。
【グローブ(攻撃力13)によりサポーター(防御力7)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを6削りました】
【グローブ(攻撃力13)によりサポーター(防御力9)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを4削りました】
【グローブ(攻撃力13)によりサポーター(防御力8)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを5削りました】
【グローブ(攻撃力13)によりサポーター(防御力8)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを5削りました】
触るだけでも、問題なく攻撃とみなされるようだ。
接触することが、攻撃の条件になっているのは間違いない。
次に、男の右手のサポーターを握ってみる。
何も表示される気配がないので、握っていた手を離してみると、すぐ視界に表示が映った。
【グローブ(攻撃力13)によりサポーター(防御力9)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを4削りました】
なるほど、武器が防具に触れてから離れるという現象を、システム上の攻撃として認めているようだ。
次に、グローブで男のボディスーツに触れてみる。
【グローブ(攻撃力13)によりボディスーツ(防御力1000)を攻撃し、失敗しました】
【攻撃失敗により、ライフを削れませんでした】
ふむ、防御力を攻撃力が上回れないと、攻撃失敗とみなされ、当然ライフも削れないようだ。
次は、男の右ひじのサポーターを二の腕につけてから、男のボディスーツをグローブで触り、それから、次にそのサポーターを外し、地面に置いてから、同じくボディスーツをグローブで触ってみる。
【グローブ(攻撃力13)によりボディスーツ(防御力0)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを13削りました】
【グローブ(攻撃力13)によりボディスーツ(防御力0)を攻撃し、成功しました】
【攻撃成功により、ライフを13削りました】
「・・・・これが分かったのは大きいな・・・」
どうやら、サポーターなどの防具は、適切な位置に身につけないと、装備状態と認められないらしい。
さらに検証したところ、武器にも適切な装備の仕方があるみたいだ。
それにやはりボディスーツの特殊効果は説明文通りで、ボディスーツ以外の防具を適切な位置に4つ以上つけていないと、防御力は0に激減するらしい。
となると、ボディスーツを過信している相手には、防具の位置をずらし、ボディスーツの防御力を0にしてから、ライフを削る戦法という戦法が、かなり効果がありそうだ。
「おい・・・さ、さっきから、な、何やってんだ?」
うつ伏せで倒れているため、男からこっちの行動はよく見えていないだろうが、鷲一がいろいろ動いているのは分かったのか、気になったようだ。
「別に大したことじゃない。・・・・一応、忠告しておいてやるが、ちゃんと端末は確認した方がいいぞ。あと、場所を覚えてるなら、メガネも取りに戻るべきだな。・・・・まあ目が覚めたとき、まだライフが残っていればの話だが・・・」
「は?め、目が覚めたときだとっ!?お、おい、何するつもりだ!?」
鷲一の不穏な言葉に、嫌な予感がしたのか、大人しくしていた男が再び抵抗し出した。
そんな男を見て、何も言わずにやってしまうべきだったかと、鷲一は後悔した。
もたもたしていると誰かが通りかかったりして、鷲一も危険かもしれないので、さっさと済ませることにする。
「抵抗されると、荒っぽくやるしかなくなるんだが、大人しくする気はないか?」
「て、てめぇ、こ、この離しやがれ!!」
「そうか、なら仕方ない、悪く思うなよ」
再び大声で喚き出されると危険なので、鷲一は空いていた右手で、背中側から肺のあたりに強い打撃を加えた。
すると、肺に吸い込んでいた空気が吐き出される。
男は反射的に咳き込みかけたが、鷲一はその前に捻り上げていた左腕の肩関節を躊躇なく外した。
男は急な痛みに叫び声を上げようとしたが、すでに肺の空気はほとんど吐き出されていたので、それほど大きな声は出なかった。
そのまま鷲一は容赦することなく、背中を押さえつけていた体勢から飛び上がって、男の開いていた足の隙間から、最大の弱点である股間を、右足で蹴り上げた。
すると、度重なる痛みに耐えかね、男の意識はブラックアウトした。
「悪いな、大人しくしていれば、絞め落とせたんだが、お前が暴れるから、激痛による失神を狙うしかなかったんだ。いくら身動きを封じているからと言っても、抵抗する人間を気絶させるのは、そんなに容易くないからな。まあ手加減はしたから、外れた肩も戻せるし、玉も潰れてはいないだろう。・・・・じゃあもう会わないことを祈ってるよ、お互いのためにな」
悪いと感じているからといって、敵の肩を戻してやるような親切心は持ち合わせていない鷲一であった。
それどころか、予備武器として、男の付けていたグローブを奪い、サポーターも自分の防御力が低いものは、男が身につけていた防御力が高いものに取り替える、という徹底ぶりだった。
「ペナルティもなさそうだし、やはりこの審査での暴力はある程度黙認されているみたいだな。・・・・じゃあ、ディア、さっきまで進んでいたルートを案内してくれ」
『・・・・・シュウイチ、容赦ないのよ~。お、怒らせると、こ、怖いやつ確定なのよ~』
「敵だから仕方ないだろ。『敵に容赦する奴は死ねぇ!』って、何回も師匠に殺されかけてるからな。条件反射なんだよ」
『その師匠も恐ろしいのよ~。・・・・じゃあ、案内するのよ~』
若干だが、怯えているように見えるディアの様子を見て、鷲一はこのAIには感情のような機能も備わっているのかと、怯えられているのは自分であるにも関わらず、他人事のように感心していた。
そのまま、ディアの案内で進むこと、約一時間、まだ森からは出られていなかったが、ディア曰く、もうすぐ出られるらしい。
いったいどうやってそこまで正確に演算しているのか、気になったので、ディアに聞いてみると、―― 厳密にはもっと複雑だが、簡単に言うと ――周囲の木々の成長具合や分布具合、また地質や気候などから、森林の広がり方をシュミレートして、森の中での現在地をなんとなく割り出しているのだという。
さらに移動しながらも、森の様子を観察し、データを増やしていくことで、その精度を順次高めているらしい。そんなことをしていたとは、ほんとに優秀な相棒だ。
また一時間の移動の最中に、新しく男三人と女一人の計四人の受験生を見かけていた。
四人はそれぞれ一人で行動しており、動きも大したことなさそうだったので、簡単に仕掛けることはできたが、ある程度やりたかった検証は済んでいたので、こちらに気づかれないように通りすぎることにした。
もし、何かの装備を持っているようだったら、奪う目的で仕掛けただろうが、四人とも、鷲一と同じく、初期装備のままだった。
ただ、そんなことより当面の一番の問題は、審査開始から一時間半以上経っているのにも関わらず、新しい装備がまだ手に入っていないことであった。
鷲一も移動の最中、目に付くとこはできるだけ探しているのだが、全く見つからないのだ。
途中で見かけた四人もしっかり確認したわけではないが、見た感じ持っていなかったことを考えると、鷲一だけが不運なのではなく、森にはあまり隠されていないのか、あるいは難易度が高いものが隠されているのかもしれない。
もうすぐ森から抜けるというとこで、突然、前を飛んでいたディアが止まって振り返り、小さな手を前に出しながら、しゃべり始めた。
『シュウイチ、止まるのよ~。・・・今、微かに反応があったのよ~』
そう言った後、何かを感じ取ろうとしているのだろうか、目を閉じて、辺りをゆっくり飛び回り始めた。
どうやら、ディアのセンサーが―― サポートAIの補助機能の一つに、隠されたものを探知するというのがあるらしい ――反応をを捉えつつあるようだ。
鷲一は辺りに人影がないか、警戒しながら、一応自分でも見つけるべく、怪しそうな所を探し始めた。
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○装備品ステータス
・武器【グローブ】
装備可能箇所:両手(同じ箇所には一つのみ)
・防具【サポーター】
装備可能箇所:両ひじ、両ひざ(同じ箇所には一つのみ)
・防具【ボディスーツ】
装備可能箇所:全身(同じ箇所には一つのみ)




