頼れる相棒
「なっ・・・なんだこれはっ!?」
まるで自分が瞬間移動したような、この世のものとは思えない現象に、珍しく鷲一の頭脳は思考停止しかけた。
しかし、何故か不意に、先ほどモニターで見た、あの妙な男の言葉が頭に浮かんだ。
『思考を止めぬことだ。そうする限り、真に打開できない状況など、ほぼない。あるとしたら、ただ必要な情報が足りなかっただけのことだ。』
「癪だが、あの野郎の言う通りだな。それにたとえどんな状況に陥ろうと、凡人の俺が思考を止めたら、元も子もないよな。・・・しかし、あんなやつに助けられるとは・・・・俺もまだまだだな」
そう自分に言い聞かせるようにつぶやくと、何故か無性に笑えてきた。
周りに誰もいなことだし、無理に止めたりせずに、少しの間、鷲一はくつくつと笑い続けた。
ひとしきり笑ったところで、鷲一はさっそく行動することにした。
笑うことによる効果だろうか、気分がスッキリして、頭が冴えているような気がする。
「よし、とりあえず今できることをやらないとな」
どんな原理で瞬間移動のような現象が起こったのか分からないが、そこは今考えることではない。
おそらくあの男が言っていた、『奇跡の欠片』という言葉が手がかりだろうが、きちんと考察するには、さすがに情報が少なすぎる。
となると、やれることは、まず現状の考察だ。
ここがどこだかは分からないが、ホールでの流れから判断すると、派学の最終審査の会場であることは、おそらく間違いないだろう。
次に周りの状況を確認するために、辺りを軽く見回してみる。
木々や草花しか見えないことから判断すると、森のような場所にいるようだ。
植生からして、日本と気候はそこまで変わらないかもしれない。
それに今のところ、近くに動くものも見当たらないし、その気配もなさそうだ。
もちろん、油断は禁物だが、当面身の危険の心配も必要なさそうである。
「武志たちも無事だとといいが・・・・次は情報収集だな」
スマホ型端末を取り出して、新たに追加されている情報を確認してみると、いろいろなことが分かってきた。
最終審査は『探索&戦闘』という名称で、その内容は、審査会場である孤島を探索しつつ、会敵すれば戦闘し、お互いのライフを削り合うというサバイバルのようだ。
設定として、保有ライフは1000で、一応、各受験生には、武器としてグローブ、防具として、ボディスーツとサポーターが配布されている。
それぞれ武器には攻撃力、防具には防御力が設定されていて、互いが接触する事で効果発動し、攻撃力が防御力を上回った場合のみ、その差の分、ライフを削る仕組みのようだ。
また初期装備だけではなく、孤島には武器や防具、また特殊な装備などが数多く隠されているらしく、それを発見し、審査を有利に進めるのが、『探索』の要素らしい。
鷲一が端末を操作していると、急に『サポートAIを起動しますか?』というメッセージがポップアップしてきた。
「サポートAI?」
一瞬躊躇したが、勝ち残るためには少しでも情報が欲しいので、起動してみることにした。
鷲一が起動をタッチした直後、読み込みが始まり、しばらくして読み込みが完了すると、画面の中に羽の生えた妖精が現れた。
妖精らしく、白く輝く鱗粉のようなものを漂わせながら飛んでいる。
体型はすらっとしているが、三等身なせいでどこか子供っぽく感じる。
髪は月の光を纏ったかのような銀色で、目もぱっちりしていて、顔立ちも可愛らしく、全体的にとても神秘的な雰囲気を漂わせていた。
単なるAIにしては、細部までかなり作り込まれていて、仮にフィギュアで再現するとなると、かなり難しそうだ。
そんな光景に鷲一が呆然としていると、耐えかねたのかそのAIがしゃべり出した。
『あたしを引き当てるなんて、幸運なやつなのよ~』
もっとよくあるAIっぽい音声かと思っていたが、実際に聞こえた声はまるで肉声のようで、感情も感じさせる、外見にぴったりの可愛らしくおっとりとした声だった。
「・・・・・・・・・・・」
『何か言うのよ~』
「・・・・・お前が・・・サポートAIなのか?」
『そうなのよ~、ディアって言うのよ~、よろしくなのよ~』
どうやら名前もあるらしい。
「そうか、ディア、よろしく頼む。ところでさっきの言い方だと、俺たち受験生に与えられるAIは同じではないように聞こえたが、他にもAIの種類があったりするのか?」
『そうなのよ~、でもあたしほど優秀なのもなかなかいないのよ~』
言い方から推測すると、サポートAIにも性能の違いがあるようだ。
そして、ディアはその中でも、性能がいい方に分類されるAIなのだろう。
「そうか、俺は運が良かったみたいだな」
『そうなのよ~、せいぜい感謝するのよ~』
短い付き合いなので、はっきりとは分からないが、ここまでのやりとりから判断すると、ディアは結構上からモノを言うタイプのAIらしい。
「で、サポートAIには何ができるんだ?」
『あたしはディアなのよ~』
そこら辺のAIと一緒にするなと言いたいらしい。
AIに機嫌というものがあるかは分からないが、もしあったとして、機嫌を損ねても、鷲一に得はないので、素直に謝ることにした。
「・・・・すまん。では改めて、ディアはどんなサポートしてくれるんだ?」
『もちろん、あなたが勝ち残るためにありとあらゆる手助けをするのよ~。それより、あなた、名前はなんて言うのよ~』
比較的まともな感覚の鷲一には、AIに自己紹介するなんて、なんか変だなと思わずにはいられなかったが、このままでは良好な関係を築けそうになかったので、きちんと名乗ることにした。
「ああ、まだ名乗ってなかったな。俺の名前は倉田鷲一だ。好きに呼んでくれ」
『じゃあ、シュウイチって、呼ぶのよ~。じゃあ、シュウイチ、補助デバイスのメガネを端末にリンクしたから、メガネを装着するのよ~」
さすがに威張るだけあって、仕事は早いようだ。
鷲一はディアに言われた通り、メガネをつけた。
「時間が表示されている以外、特に何も変化はないみたいだが・・・」
『今は表示してないから、当然なのよ~。あたしも必要に応じて表示するけど、シュウイチも出して欲しい情報があったら、表示するから、遠慮なく言うのよ~』
「どんな情報が出せるんだ?」
『出せるのは、マップ情報、シュウイチのステータス情報と装備情報、あとは会敵した時、読み取れる範囲での敵の情報くらいなのよ~。所詮は単なる補助デバイスだから、その程度なのよ~』
どうやらディアに言えば、すぐさま指定された情報を表示してくれるらしい。
自分で操作して表示することもできるが、戦闘時となれば、そこまで余裕はないかもしれないので、かなりありがたかった。
「じゃあ、マッピング情報を出してくれ」
『はい、なのよ~』
ディアが返事した瞬間、すぐさまメガネをかけた視界に情報が表示されたが、自分の現在地以外の全部が、グレーに塗りつぶされているだけのマップデータだった。
「なんだこれは?・・・もしかして、自分で行ったところ以外表示されないのか!?」
『そうなのよ~。ただし、装備以外にマップデータも、孤島内のいろんなところに隠されているから、それを見つけるのが一番効率がいいのよ~。あと、他の人とマップデータを共有することもできるのよ~』
なるほど、装備もだが、マップデータもかなり重要になってくるかもしれないな。
「よし、そういうことなら、武志と合流しないとな。でもとりあえず奇襲を受けやすい森は、早く出たほうがいいな。たいていのやつなら、気配を探れるだろうが、それでも危険なことに変わりはない。・・・・ディア、探索しつつ、森を出るのに一番良いルートの予測とかってできるか?」
『あたしを誰だと思ってるのよ~。シュウイチの身体データの解析が終われば、すぐに予測演算できるのよ~』
鷲一が言う前に、ディアは行動を始めていたらしい。
思っていたよりもなかなか頼りになる相棒のようだ。
「さすがだな、じゃあできたら、指示頼む」
『はいはい、なのよ~』
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◎頼れるサポートAI
名前:ディア
ランク:???
○装備品ステータス
・武器【グローブ】
攻撃力:11~15
特殊効果:なし
使用可能回数:∞
・防具【サポーター】
防御力:6~10
特殊効果:なし
使用可能回数:∞
・防具【ボディスーツ】
防御力:0
特殊効果:ボディスーツ以外の防具を4つ以上着用時、防御力1000になる
使用可能回数:∞
性能:防刃、耐衝撃、耐熱、撥水、速乾




