絶対的な悪
「無駄だ。お前はもう逃げられない」
俺はやり遂げた。この女をついに追いつめたのだ。
「お前は完全に包囲されている。全てを諦めてお縄につけ」
事実。無数の警官が女を包囲している。完全な詰みだった。
「私が包囲されている? そうね確かに見方によってはそうかもしれないわね」
「世迷い言を言うな! 罪を償え!」
女は連続殺人犯だった。人を様々なほうほうで殺し、俺の相棒だった刑事もこの女に殺された。
「貴方はここから私の逆転はないと思うわけね」
「逆転? 何を言っている!! ここの警官全てを一度に殺す術や逃げる術があるとでもいうのか!」
「そんな事できるわけないじゃない。小型の拳銃すら持っていないわよ」
「結局なにが言いたい!!」
「そうね……」
女はそういって懐から何かを取り出そうとする仕草をした。
包囲している警官たちが銃口を一斉に向けた。
俺に向かって。
「お前ら……何をしている」
「貴方以外、私の友達なのよここの警官は」
「……なんだと」
「悪党と警官の癒着なんていつの時代もありえるじゃない。だから私を捕まえる警官なんてここには貴方以外いないわ」
「お前ら……」
警官たちは何も言わず無表情に俺に銃口を向けている。
「これはたまにやるゲームね。刑事や警官を一人選んで私を逮捕しようとさせる。ああそうそう。貴方の相棒を殺したのもゲームの内容の一つね。私に憎しみが湧くようにね」
「お前はいったいなんだ!!」
「ものすごくお金持ちで偉い人だと思ってくれればいいわよ。趣味が人殺しのね」
俺は理解できなかった。この女と仲間だと思っていた警官たちに裏切られている今を。
「さあて、貴方の呆然とした顔も見たことだしこれから貴方を殺すわ。今回はドラム缶に大量の蟹を貴方といっしょに入れて貴方の体を蟹が食い破ろうとする時の悲鳴を聞くの。きっと最高よ」