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 アタラが言う事でそれが外れた事がない。


 前回以降、異世界に行くと、ちょくちょくシュンと会えるようになった。


 どうやらアタラは未来予知でもできるらしい、そう思っていたんだけど、それは先日、ちがうよ、と笑顔で否定されてしまった。ただ、アタラが笑顔でなにかを言うとウソをついているように見えるから不思議だ。


 まさか不良少年とつるむようになるとは思わなかったよ、ともこの間ぼやいていたけれど。




 シュンはといえば。


 彼は『家族』と上手くいっていないらしいことを話してくれた。家族とはケンカばかりで、学校では『レッテル』を貼られているんだそうだ。よく分からなかったけど、シュンが辛そうな事だけは理解した。

 オレはアウトローなんだと、苦笑いしていた。


 他の人はシュンを怖がるというけど、わたしには優しくしてくれた。最初の頃はすごまれる度に、怯えたけど、最近ではそれがただの照れ隠しなんだと分かるくらいになってきたからというのもある。


 基本的にすごく優しいのだ、シュンは。


 それに、一度会わせてくれた『家族』だって、すごく優しかったように思う。ものすごく『歓迎』してくれた。きっと、シュンがけんか腰だから、いつも収集がつかなくなっちゃうんじゃないだろうか。


 わたしは少しだけ『家族』が羨ましくなった。




 その時、ちょうど一緒に『カフェ』でお茶をしていたんだったか。


 シュンはこんな所きたことねーよ、って始終きょろきょろしていた。


 たしか、アタラはいなかった。用事があるんだと言って、一二時間ほど席を外していたのだ。


 じゃなきゃ、あんな話は出来なかった。


 あの時のわたしは、正直、すこしおかしかったんだと思う。


 シュンが自分のヒミツを話してくれたお返しに、どうしても自分のヒミツを話したい気持ちに駆られたのだ。


「あのね、シュン」


「ん、なんだ?」


 シュンは慣れない紅茶を、顔を顰めながら流し込む。


「あのね、わたしね…信じられないような話をすると思うんだけどね…」


 シュンはげらげら笑う。


「アンタがおかしいのはいつもの事だよ。気にすんな」


「う…じゃあ、言うけど。わたし、実は異世界から来たの」


 シュンがぴたりと動きを止めた。


「あ、なんだって?」


「い、異世界から来たの」


 わたしも釣られて硬直してしまう。


「だれが?」


「わたしが」


「どこから」


「い、異世界…?」


 シュンはまじまじとわたしを見つめると、ひとこと言った。


「中二病か?」


 『中二病』のイミが分からなかったけど、否定する。やっぱり信じられないか、と肩を落とした。


「もしかして、ホンキなのか?」


 シュンがわたしに問いかける。


 その言葉に勢いよく頷く。


「ほんとう、なのか…」


 信じてくれたか、とわたしは瞳を輝かせて、シュンに顔を寄せた。


「信じてくれるの?」


「お、おう。アンタがそう言うならな。…カオが近いって」


 なぜか頬を赤くしながら、わたしを避ける。


「あるんだろーな。『異世界』とやらも」


 シュンが真剣な顔をしてわたしのことを見つめた。


「いつか、連れてってくれよ」


信じてくれた事がうれしくて、わたしは何度も何度も頷いた。





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