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幕間3
まだ若い成体が周囲を気にしながら、部屋に入って来た。
職員が書庫代わりに使っているこの部屋で、この『世界』のヒミツでもしろうというのだろう。
きっと、自分の今の境遇に不満をいだいているにちがいない。
あるいは現状を否定することに必死なのか。
自らの今の状況を鑑みたか。
それとも他のヒントに気がついたのだろうか。
どっちでもいい。
重要なのは知ろうとする事。
それには、ただ覚悟するだけでいい。
必要なだけの情報は、そっと散りばめた。
ついに見つけたか。
自分が本来なら意識することすらしない部屋に来ているという事実も忘れて、書面を舐め尽くすようにして見つめている。
さあ、きみはどう出る?
職員の書類棚をあさる一被験者を、影から見つめながら男は口の端をつり上げた。
こじ開けられたパンドラの箱。
そこに残るのは、ほんとうに希望か?
それは、絶望じゃないのか?
外にも内にも残るのは絶望だけ。
それなら、きみはどうする?
もしかしたら、きみは難解すぎると理解が出来ないふりをするかもしれないね。