1
わたしは、あとひと月で16歳になる。
他の4人と一緒に。
わたしが住んでいる世界では16歳は成人を意味する。だれがそう決めたのかは知らないけれど。自分が産まれて、もうそんなに時間がたつのかと思うと、早いような、やっとかと言うような。
成人したからには、今まで大人たちがしていてくれたように、畑を耕していかなきゃいけない。
今までだって手伝いはしてきたけど、ただの手伝いと、大人として畑を耕すという事では責任の大きさがちがうのかもしれない。
わたしとしては、それが誇らしいような、もう少し遊んでいたかったような。
他の誰もしらない、わたしだけの秘密の場所。
敷地の奥にある樹木林。
ほとんどの木はいたずら防止の為に、すべるように加工されているけど、その中で一本だけ、その加工がはげている気がある。登ろうと思えばできないこともないのだ。
それを発見したのは偶然だった。
たぶん、むかしに皆でかくれんぼをしていた時に見つけたんだと思う。
他の人におしえてあげて、秘密を共有してもよかったけど、なんとなくそれはしなかった。
足をかけてよじ上る。
そういえば久しぶりにこんな事する。
最近は、成人式を迎えるので忙しかったから。
登り切る頃には軽く息が切れていた。
棟の方からはわたしの姿は見えない。まさか職員たちも、人が樹の上にいるとはおもわないだろうけど。
太い幹に腰をおろして、足をぶらぶらさせた。
ほてった頬に、すこし冷たい風があたって気持ちいい。
この木に登ってもそう遠くは見えない。
精々、周辺の森と、そこからはどこまでも続く砂漠だけだ。その砂漠も木の位置のせいで途切れて見える。
わたしはそこから、太陽が立ち昇るのを認めた。