表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

プロローグ2

~ソリッド クルース~



俺は今、頭を下げている真っ最中。腰から斜め四十五度のお辞儀体勢ってやつだ。

ちなみに右でルー姉、左にスノウも俺に倣って頭を下げている。


「勝手にスノウを旅に連れ出して申し訳ありませんっ」


「年長者である私が許可したのがいけなかったんですっ、申し訳ありませんっ」


「ルーシュナとソリッドは悪くありませんっ、勝手に家を飛び出した私が悪いんですっ」


俺達が誰に謝っているのか? と言うとスノウのご両親にである。

それと、スノウが帰って来たことを知った龍人達も集まって来て野次馬をしている、暇人どもめ。

オルテ、ヴォルフリーデとの再会を果たし目的も達成したので

俺達は【古代の塔】でグレハと別れ際で交わした約束を果たそうとここまで戻って来た訳だ。



で、そろそろ旅をするには厳しい冬の季節が始まるのでルー姉のご両親やスノウのご両親のいる

この集落で冬を越すことに決めた訳だけど、勝手に家出したスノウの謝罪をしている。

ちなみに場所はルー姉のご両親もいる集落の砦みたいな処だ。

最初にここに帰って来てルー姉のご両親に挨拶した後そのアルナスさんとイルミナさんのエルドラースの夫婦にスノウの両親が非常に心配していたことを告げられこの場に呼んで貰い今に至る。



スノウのご両親、ブレイドさんとブリギットさんが腕を組んで頭を下げている俺達を

ド迫力の仁王立ちで見降ろしている……はずだ。頭を下げる前に見た時はそうだったし。

ついでに野次馬の龍人達も無言の仁王立ちで俺達を囲んでいる。

メッチャ怖いんですけど!? 顔から血の気が引いて行くのが判るくらいだ。



集落……イヤ、国全体で可愛がられていたスノウの出奔だしな、相当な心配をかけていたんだろう。

そりゃ、怒るよな……と頭を下げながら反省しているとブレイドさんが


「お前達、頭を上げろ」


と低い声音で声をかけてきた。

怖々と頭を上げるとそこには腕を組みつつ眼を瞑りこちらを見ようとしないブレイドさんの姿が。

ブリギットさんのほうは仁王立ちしたまま素知らぬ顔でソッポを向いている。

俺たちが頭を上げ終わるとブレイドさんが


「お前たちの謝罪は受け入れよう。

だが、家出した娘をお前たちが保護していたのは良いが連絡くらい寄越せ。

それと娘が世話になったことは感謝している」


と不機嫌そうではあるが予想していたような激昂した様子は見せずにブスっとした雰囲気で

連絡を寄越さなかったことに対する不満とスノウと仲間になってた事に対する感謝を述べられた。

正直、もっと激昂して怒鳴られたり殴られたりする展開を予想をしていただけに呆気に取られたぜ。

多分それは横で一緒に謝っていたルー姉やスノウにしても同じだろう。

横目で伺うとやっぱり呆然としているし。



感謝されたことに対してどういたしまして、と返事をする為に口を開きかけると

ブレイドさんを始めブリギットさんやルー姉のご両親、そしてこの場に野次馬として集まった

龍人達の様子が変だった。肩を小刻みに震わせ、次第にその震えが全身に拡がり

仕舞いにはここに集まっている龍人達全員が大爆笑を始めやがったっ!?



この場にいて笑っていないのは呆然としている俺とルー姉にスノウ、少し後ろに離れて様子を見ている

オルテにクゥーラくらいだ……他は全員大笑いしている。どういうこった?

訳も判らず笑い物にされるのは何と言うか、とても気分が宜しく無い。

ムッとした表情になってたんだろうな、俺。ルー姉やスノウもムッとした表情しているし。



俺達のその憮然とした様子を見てか、ますます大きくなる笑い声。

ますます面白く無い俺達だが、そんな中で笑いながらもルー姉のお母さんである

イルミナさんが


「ごめんなさいね、ルーシュナ、ソリッド君にスノウちゃん。

私達が笑ってしまっているのは決してあなた達を笑っている訳じゃないのよ。

私達が笑ってしまっている訳はこの場にいる龍人は全員、スノウちゃんと同じ年齢くらいの時に

一度は家出を経験して今のあなた達と同じように皆に心配を掛けて怒られた事があるからなのよ。

その時の経験を思い出しちゃうと、どうしてもねぇ」


この場にいる龍人達がどうして笑いだしたのか説明をしてくれた……笑いながら。

なるほど、ね。龍人族は無限ともいえる寿命を誇るので国全体で見ても子供が生まれるのは

百年に一度くらいのものらしい。つまり子供からすると生まれてから周りは全員大人で

同世代の者は存在せずスノウと同じように周りの大人達に対して劣等感に陥りやすいのだろう。



だから十代後半くらいの年頃になると自分を試したくなり集落を飛び出すんだろうな、スノウのように。

あれ、それってつまり成人の儀式みたいなモンじゃね? イルミナさんに聞いてみるか。


「イルミナさんの言うとおりだとすると……スノウが家出した後に集落に帰ってきたことって

龍人族のほとんどの人が経験したってことですよね?

それってこの家出をした後に帰って来て怒られること自体が成人の儀式のようなモノって事ですか?」


「そうね、言われてみればソリッド君の言う通りかもしれないわね。

スノウちゃんもついこの間まではあんなに小さかったのに、もうそういう年齢なのね」


俺の確認に対してあっさりと相槌を打ち、何やらスノウの過去を回想しだすイルミナさん。

訳を聞いてみれば龍人達が笑っているのは大人になったスノウに対するお祝いみたいなものか?

そう考えると勝手に嘲笑われたと勘違いし憤っていた自分が恥ずかしくなってきたっ!?

恥ずかしいなぁ、俺。隣を見て見るとルー姉やスノウも照れ笑いしてる……俺と似た様なものか。

ま、そうとなれば取り敢えず


「聞いた通り、スノウ。お誕生日ならぬ成人の儀式達成、おめでとうっ」


と俺が照れ隠しにこのイベントに乗ってスノウに祝いの言葉を贈ると


「フフっ、スノウ。私からもお祝いするわ。成人おめでとうっ」


とルー姉も祝辞をスノウに送り、後ろで静かに佇んでいたオルテとオルテの頭に乗ったクゥーラも


「これが龍人族の成人を祝う儀式か。お祝いの集まりというものは何時でも心が暖まる。

おめでとうスノウ。私からも祝いの言葉を贈ろう」


「キュキュ~ッ」


とスノウに祝いの言葉を贈っていた。

するとスノウが感極まったのか両手で鼻筋を押さえ


「あ、ありがとうございます。皆さん、勝手に家出してご迷惑をお掛けしたことをお詫びします。

それと……本当にありがとう」


俯きながらも集落の皆に心配を掛けたことを詫び、祝ってくれる皆に涙声で御礼をしていたんだ。



◆◆◆◆◆◆



 元ヴェルファリア王国のアルコット村跡地でオルテと再会を果たした俺達は

一度【ONE WORLD ONLINE】で転生する為の場所、聖域の神殿を目指した。

だけど、聖域に通じる転移門があるにはあったのだが……潜れなかったんだよな。

まぁ、ゲームでカンストレベルになってるのが門を潜る条件の一つだったから予想はしてたけどさ。



予想しつつも何故、聖域の神殿を目指したか? っていうとゲームとの違いを確かめる為だ。

オルテと再会を果たし千年前にプレイヤーキャラ達が居たことは判った。

で、聖域に入れなかったのでグレハとの約束、リッシュガルドの内乱を治める為の手伝いをってことで

古代の塔に通じる転移門まで帰るために旅をしていた訳だけど冬が始まりそうなので

途中にあるスノウの故郷ドラグノールの集落に寄ったわけだ。



その旅の途上でオルテに聞いた一言。


「なぁ、オルテ。前世の俺ってさ、ログアウトとかログインとか言ってた事あったか?」


【ONE WORLD ONLINE】のことをこの世界の住人に直接聞く事は

レリアママから一応禁忌扱いにされている。

なので、どう質問すればこの世界にいたプレイヤーキャラと中身のプレイヤーとの

関係が判明するだろう? ってことで思いついた一言がこれだ。



かなり禁忌のグレーゾーン上の質問だが質問自体は単語だけだし何とか大丈夫なはずだ。

それに俺としては聞かなくては意味が無いので聞いた。

この質問に対してイエスでもノーでもこの世界に転生して以来ずっと知りたかったことだし。

オルテの返事は


「うん? ログアウトにログイン、か?

その単語の意味は判らないしソリッドの意図も掴めないが……私は聞いたことが無いな。

役に立てずに申し訳ない。ヴォルフリーデ、あなたは聞いたことがあるだろうか?」


俺の質問に対して小首を傾げた後に聞き覚えが無いと申し訳なさそうに断言し

横をあるくヴォルフリーデに対して聞いて無いか? と尋ねていた。


『ログアウトにログインかい? ん~、申し訳ないけどアタシャ聞き覚えがないさね』


「……そうか、すまないソリッド。聞いての通りだ」


オルテに尋ねられた白銀の巨狼もオルテ同様に聞き覚えがないと断言していた。

それにたいして項垂れるオルテ。


「いやいや、聞いた事が無いならそれで構わないさ。いきなり変なことを聞いてゴメンな」


聞き覚えが無くて申し訳ないとでも思ったのか本気で黄昏ているオルテに慌ててフォローする。


「いや、私に聞きたいことがあれば幾らでも聞いて欲しい。

ただ、今回の様に期待に応えられないこともあるかもしれないが……すまない」


「ありがとうな。ま、今回の質問は大した意味が無い事だからさ。忘れてくれ」


何やら謝罪合戦の気配がしてきたのに気付くと自然と笑ってしまった。

すると同時にオルテも笑いだしていたので結果良しかな?

それにしてもログイン、ログアウトの単語に聞き覚えが無いってことは

この世界はゲームそのものじゃ無いってことだよなぁ……やっぱり。



ただ、重なる事が多すぎるから無関係では無いはず。

この大陸の住人の文化のセンスとかも割とプレイヤーのそれに近いし。

そもそもこのログイン、ログアウトに関する質問に対してノーの答えも一応予想してたしな。

するとこの世界の場合は俺達プレイヤーがゲームにログインしていた時は

この世界のプレイヤーキャラに憑依していた感じになるのかなぁ?

守護霊とか背後霊みたいな感じで? どうも良く判らん。



この世界とゲームとの関係は一先ずこれで納得するしかない。って結論づけた。

後はもう異世界である日本に戻ってOWO運営に直接確かめるくらいしか俺には思いつかないし。

といっても女神であるレリアママですら異世界渡りの方法なんて知らんって言ってたし

打つ手無しだもんなぁ……ハァ。



 ところでオルテと言えばこのドラグノールの集落に帰ってくるまでの旅で色々なことがあった。

例えば


「なぁ、オルテ。ヴェルファリア王国がこの廃墟っていうか亡国っていうか

見る影もない魔境になってる理由ってわかる?」


「ああ、それなら大本の理由は千年程前のことになる。

私はソリッドも知っての通り解放されたあと世界をヴォルフリーデと共に巡る旅に出ていたので

国元にはいなかったが。あの時代はマサトを始め非常に優秀な冒険者達が多数存在していたろう?」


「まぁ、そうだな。人としては恐らく極限まで鍛えられた冒険者が多かった……よな」


俺がヴェルファリア王国が魔境と化した理由をオルテなら知ってるんじゃないか? と尋ねると

返って来た台詞が恐らくプレイヤーキャラ達のことだろう。カンストキャラばっかだしなぁ。

そりゃ非常に優秀な冒険者達でしょうよ……そう思って答えると


「そう、私も当時はこのフランドール大陸の他所の国を旅していたので正確な処は判らないが

伝え聞いた話では、その優秀な冒険者達が魔人化したらしい」


「フ~ン……って魔人化ッ!? なんだそれ、どういうこったっ!?」


とんでもなく吃驚することを耳にしたんで素っ頓狂な声で聞き返しちまった。

するとオルテが困惑したような仕草を見せながらも会話を続ける。


「私も冒険者達が魔人化した理由は判らないのだが魔人化した冒険者達の一部が突然暴れ出したらしい。

そして暴れ出した魔人達に対して優秀な冒険者達や暴れ出さなかった魔人達が立ち向かい

当時のヴェルファリア王国は史上類に見ない激戦の地になったそうだ」


おいおいマジかよ。そんなことがあったのか。魔人化って待てよ? 以前推測したアレか?

カンストレベルを超えてしまうと人も魔物化するんじゃないかって奴か?

ゲームならカンスト以上にはシステム的に育たないけど……現実では?

カンストを振り切って更に強くなることも当然あり得るって訳か。続きをオルテに聞こう。


「……で、どうなったんだ?」


「ああ、神話に語られるような神々の大戦も斯くや……と言うような大戦だったらしい。

天変地異のような魔法が平然と飛び交い超人のような戦士達が切り結びあうといった。

恐れをなした民が国を逃げ出し人口が激減し、農地は荒れ果て食料の供給が滞り食料不足で更に人口が激減する悪循環に陥ったそうだ。そして互いに相争う魔人や冒険者達も討ちあいで数を減らしヴェルファリア王国と隣接する魔物領域からの守り手となる者達も絶え果て次第に国土は魔物領域に侵され今に至る……と聞く。今では伝説となり、かの大戦を魔人大戦と呼ぶらしい」


なんともなぁ……聞けば随分とまぁ、壮大なお話で。

戦いに参加した冒険者や魔人に俺の知っている人達はいたんだろうか?

その後どうなったのか気になったので聞いてみる。


「……魔人達のその後ってのは? それとも全滅したのかな?」


「いや、全滅したとは聞いていないな。

私が聞いた話では生き残りはいるらしいが……その後どうしたのかは伝わっていない」


「そうか……話してくれてありがとう。

でも生き残りがいて、その中にかつての俺達が知っている人がいてまた会えると良いよな?」


首を横に振りながら答えるオルトリンデに礼を言い

希望を込めてそう告げるとオルテは良い笑顔で頷いてくれた。

彼女としても魔人大戦とやらには感慨深いものがあるんだろう……知人友人もいた筈だしな。

以上がドラグノールへ向かう途上でかわした会話の一部だ。



◆◆◆◆◆◆



 ドラグノールに向かう旅の中オルテに関しての逸話は他にもあるが思い出深いのは……。

オルテと再会を果たしこの世界での転生に関して調べる為に聖域に通じる転移門に向かう

【深緑の樹海】の途上で魔獣の群れと出くわしたんですよ。ええ。

俺とルー姉、スノウとクゥーラに加えオルテとヴォルフリーデまでいるので

不安は全く無かったんですよ、むしろ戦力過剰では無いでしょうか?



ちなみに出くわした魔獣達は【合成獣】(キマイラ)で前半身が獅子で中から後ろ半分が山羊で

尻尾が蛇。出会った時にグレハがこいつらの群れを相手して単独で討ち果たした相手だ。

もっともグレハ自身も瀕死の重傷を負っていたけど凄いよな、グレハ。

最後に相打ちになったとはいえ、援護も何もない状況でキマイラの群れを単独撃破って、どんだけよ?



言っちゃなんだがキマイラってのは決して雑魚ってほど弱くないぞ。

しかも群れだから数の暴力も酷いしな。

ま、それはともかくキマイラの群れと出くわしたので戦闘に入ろうとしたんですよ。

俺やルー姉、クゥーラやスノウが身構えてさ。



だけど身構える俺達とこちらを襲ってこようとしているキマイラ達の間に

オルテが静かに進み出て


「……何者であろうと、ソリッドに害をもたらす存在は許してはおけん」


と仰った後、キマイラ達に剣を差し向け


「滅せよ、“終焉の光”」


俺の知らない真言字を瞬時に描き、同じく聞き覚えの無い真言を素早く唱えると

剣先から眩く白い光が一直線に走りそれがキマイラ達をなぞると

オルテが剣で指し示した範囲一帯が全て吹っ飛びました……。

なんていうか……キマイラ達は言うに及ばず剣で指した方向すべてが。



で、視界に入るキマイラ達がいた方向すべてが地形変化を起こし【深緑の樹海】が荒野になっていた。

オルテさんが俺の方に輝かんばかりの笑顔で振り返りました。

何て言うの? 誉めて誉めて! ってな感じで。

その様子はとても愛らしく俺の心臓を射抜いた訳ですが

とりあえず俺はオルテに


「……オルテさん、その魔法は仲間の命が関わる場合以外は基本的に禁止して下さい」


と言わざるを得なかった。

当然だ、こんなもんぶっ放してたら俺達が人類の敵扱いされちまうって。

俺に注意されて項垂れるオルテがまた俺の心臓を撃ち抜いたのは秘密にしておこう。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ