第六話 良い人材の発見と姫様ェ
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では始まり始まり……。
全てを救うなんてバカみたいなコトを考えて良いのは英雄だけだ。
1を切り捨て9を救うなんてバカみたいなことを言って良いのは覚悟を背負った者だけだ。
身内だけは死んでも護るなんて言って良いのはそれ相応の実力を持っている者だけだ。
「勇者よ、貴様は私を救えるか?」
○
……え?何で俺の夢なのに勇者なんて単語が出てくるんだァ?
しかも全く顔の知らない女性だったしよォ……。
「はぁ……、何なんだ一体」
「どうしたの?」
「……危ねェ、一瞬リアが隣に居ることが普通に感じた」
毎日潜り込んでくるから俺はいつの間にか日常の雰囲気の様な感じになっているんだよなァ。
つか、そのうちレイナールとかも潜り込んでくるんじゃねェか……?
「いやな、俺のことを勇者と呼ぶ全く知らない女性からSOSが来た」
「……また女?」
「人聞き悪ィ!?」
俺の何処がハーレム野郎だってんだァ!?失礼な奴だなァ……。
「侍女も堕ちてるみたいだし、純エルフの国のお姫サマでしょ、ドワーフの村娘でしょ、サキュバス達でしょ、後他にもエトセトラエトセトラ」
「俺は何時でも心に決めた奴がいるから悪ィな。つって断ってんぞ?」
……つか何でそんなこと知ってるんだァ?
向こうで流行だったヤンデレって奴かねェ……。
ま、別にリアはリア故リア以外の何者でも無いんだから俺はずっと愛せる自身があるがなァ。
レイナールに関しては今は俺の気持ちが微妙なんだよなァ……。
○
「ッハ!?今の女性は……?」
「どうされたのですか、勇者様」
「いえ、何でもないぞ姫様……」
……見知らぬ女性。
まるで人形のような美しさを持った女性だったなぁ……。
「勇者様、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。大丈夫だアリア」
……綺麗だったなぁ。
○
「なんだ、勇者も一緒の夢見てたのか……」
「みたいだね」
「だね、旦那ッ」
「……何時の間に!?」
不意に聞いた声が聞こえたと思ったら真後ろに立っていたもんで、マジで驚いた……。
「旦那が何か考え込みながらモニターを見て数十秒後くらいだねっ」
でも勇者はどうやら容姿も解ったみてェだな。
コレが本当の勇者と魔王な元勇者の違いかねェ……。
「旦那、旦那っ」
「何だァ?」
「見て!見て!コレ!」
……そういってレイナールが目の前に出してきたのは、金色の林檎だった。
物凄く綺麗なんだが、食べる気にはなれないレベルで光っている金色の林檎である。
「……なにこれ?」
「コレは下剤に睡眠薬を混ぜた物を林檎にしみこませたらこうなっちゃった♪」
「……こうなっちゃったじゃねェだろ」
「でねでね、この林檎を勇者に渡してきたいんだけどサキュバス1体使っても良いかなっ?」
「別に良いが……」
レイナールが行くわけでもねェし、心配はねェんだが。
物凄く勇者が心配だ……。
あのアリアって巫女に物凄く引かれて傷ついてそのまま首に剣を突き立てる、なんてコトもしでかしそうで本当に心配だなァ……。
「そォだ、勇者じゃなくお姫サマに渡して来れるかァ?」
クククッ、楽しみだねェ……。
あの高飛車で自己中で常に上から目線のお姫サマに汚点が増えるってのは良いザマだろォな。
○
「……アレはいったい何だったんだろう?」
「先ほど言っていた女性のコトですか?」
「あぁ、『勇者よ、貴様は私を救えるか?』と一言だけ言われたんだよ」
アレは一体どういうコトなんだろうか……。
それに『全てを救うなんてバカみたいなコトを考えて良いのは英雄だけだ。1を切り捨て9を救うなんてバカみたいなことを言って良いのは覚悟を背負った者だけだ。身内だけは死んでも護るなんて言って良いのはそれ相応の実力を持っている者だけだ』この言葉の意味が解らない。
「り、林檎買って下さいぃ……」
「……勇者様、どうします?」
「……姫様どうする?」
「要らないですよ。私には関係ないですしね」
……うわぁ、冷たいなぁ。
ま、俺は姫様に従わなければならないらしいしな。
って、目があった!?
「お願いですぅ……。林檎買って下さいぃ……。最後の一個なんですぅ……」
「……幾らですか?」
「銅貨二枚ですぅ……」
「!?」
や、安すぎる……。
この世界で林檎と言えば銅貨十枚はするぞ!?
「……お願いしますぅ」
……畜生!上目遣いには勝てねェよ!!
「あ、あぁ」
○
-勇者 は 毒林檎 を 手に入れた
なんてなァ。
それにしても何というかあまりにも上目遣いに耐性がなさ過ぎるだろ……。
ま、仕込んだのは俺なんだが。
男を引っかけるときは少し涙目にして、胸を強調する感じで自然に前屈みになって相手の目をじっと見つめたら大抵の男はコロッと落ちるって仕込んだんだけどよォ。
……まァ簡単に落ちやがったな、あの勇者。
「後はあのお姫サマに渡せれば成功なんだよねっ?」
「どうやんだァ?」
「こうやるのっ!」
○
「……あっ!?」
「へ?……」
……姫様が急に倒れたぞ!?
ええと、こう言うときはどうすゃ!?
「お、おい!何処に行くんだッ!?」
「……追ってきますね!」
「あ、あぁ……」
○
「……なるほど、だから最初にドジッ娘を用意してたのか」
「That`s right♪コレで完成だよっ!」
「……コレで完成ってどういうことなの?」
「アレにしみこませた薬はね、口内で分泌される唾液の消化酵素に反応するようにしたんだよ!」
……なるほど、囓らなければ解らないと言うことか。
と、言うかだ。サキュバスよ、お前さんコントロール良すぎるだろォ……。
『……』ッグ
何でサムズアップなんだよ。
寧ろ何でコッチ目線なんだよ……。
「後ろから来てんぞォ……」
『……』ペコリ、ダッ
……お前は一体何モンなんだよ。
つか、何で此処で言ったことが向こうにまで聞こえてるんだよ……。
「……何というか凄い娘だね~」
「だなァ……」
凄いの一言ですまして良いのかは甚だ疑問だがな。
「レイナール」
「はいはい、何ですか?旦那っ」
「あのサキュバスの名前は何て言うんだ?」
「……え~と確か、ムゥだった気がする!」
……ムゥ、なァ。
「後で俺が呼んでたと伝えてくれないか?」
「了解ッ!」
「そう言えばあの子のフルネームは何なんだァ?」
「え~とね、ムゥ・トゥルーカだった気がする」
何か聞いたことのあるような名前だなァ……。
ま、そんなことはどうでも良い些細なコトなんだがなァ。
取り敢えずアイツは有能だな、使える。
「それにしても暇だなァ……」
「そうだね~」
「僕もそう思うよ……。暇だぁ……」
暇だぞ、コンチクショー!
魔王な俺の最大の弱点は暇なコトではねェだろォか……。
暇なときは俺自身何を考えてるのか解らないときがあるからなァ……。
「そォだ、抹茶たててやろォか?」
「……?マッチャ?たてる?」
「そうだ、抹茶ってお茶を作ってやろうかって言ってンだよ」
「いやいや!そんなの僕たちに言ってくれれば調べて作るよっ!?」
「アレは自分でたてるのも楽しみの一つなんだよ」
○
「……さて、どうしたものでしょうか」
完全に見失ってしまった。
あの姫サマなど別にどうでも良いんですけど、勇者様にもし何かあったら私生きていけませんからね……。
これ以上追うのは止めておきましょう。
○
「どォだ?」
「美味しいよ~」
「に、苦いぃ……」
「ククク、レイナールはお子様だなァ」
「違うもんっ!」
「どうどう」
あぁ、こんな時間がずっと続けば良いんだがねェ……。
俺とて魔王ではあるもののベースは平和な現代人。
こういう空気がずっと続くのを心の中で願うくらいなら別に文句はねェだろォ?
言葉に出さねェけど、やっぱお前達と居れて幸せだわ。




